ケイの読書日記

個人が書く書評

有栖川有栖「月光ゲーム Yの悲劇’88」

2010-04-19 11:22:06 | Weblog
 有栖川有栖の長編デビュー作として有名。

 夏合宿のため矢吹山キャンプ場へやって来た英都大学推理小説研究会の江神部長とアリスたちを、予想だにしない事態が待ち受けていた。
 矢吹山が噴火し、偶然一緒になった3グループの学生達は、陸の孤島となったキャンプ場に閉じ込められてしまったのだ。
 その極限状態の中、一人また一人キャンプ仲間が消えていく。失踪し、あるいは殺されて…。いったい誰が何の目的で…?!

 おなじみ読者への挑戦状が挿入されている。「あなたの推理がまとまりましたら、どうぞページをめくってお進みください。」という作者の温かいアドバイスを受け入れ、自分なりに推理をまとめてみたが…さっぱり分からなかった。犯人も動機もかすりもしなかった。

 でも、江神二郎の謎解きを読んでみると、なるほど整合性があるなぁ。わからなかった謎が一つ一つ丁寧に解き明かされている。
 さすが有栖川有栖。デビュー作にも大物の片鱗がうかがえる。

 キャンプ仲間が一人ずつ消えていくところから、クリスティ「そして誰もいなくなった」を連想する人が多いと思うが、それよりもクイーンの「シャム双生児の謎」の方が近いと思う。あの作品も山火事で下山できなくなったクイーン父子たちが、山頂付近の山荘に閉じ込められた中で起こった殺人事件だった。

 推理部分も魅力的だが、それ以上に絶体絶命の極限状況からどうやって脱出するかという冒険小説として読んでもとても面白い。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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お邪魔虫です・・。 (サナダ)
2010-04-24 11:52:47
この江神シリーズも面白くて好きです!
次作の「孤島パズル」はとっても簡単ですけど、
やっぱりオススメは「双頭の悪魔」ですかね。ちょっと長いけど。
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サナダさんへ (kei)
2010-04-24 22:32:29
 コメントありがとうございます。

 江神二郎って二枚目なんですね。まだ1作品しか読んでいませんが、彼の今後が気になります。
 哲学科で何年も留年してるのか…。これはもう、大学の研究室に助手として残って、その片手間に探偵業をやっていくしかないですね。
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