日々是マーケティング

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「イノベーティブ」が起こりやすい社会になるのだろうか?

2014-10-09 19:42:01 | ビジネス

先日来から、政府案として「社員の発明・特許は企業のもの」という話が出ている。
これは、企業側から自民党(?)に強く申し入れがあり、それに応える形で政府案として早ければ今国会に提出される、と言う話があった。
その話が、どうやら現実味を帯び出来そうだ。
時事通信:社員発明「企業のもの」=報酬規定義務付け-政府

今週発表されたノーベル物理学賞を受賞された、カリフォルニア大サンタバーバラ校の中村修二先生は「青色LED」の製品化の過程で出願した特許をめぐり、かつて在籍していた日亜化学と「特許」について裁判を起こしている。
このことは、相当ニュースにもなったしこのコトで中村先生は「青色LEDの開発者」というイメージが、世間的にできあがった。
世間的イメージは別にして、この時の争点は「特許は誰のものか?」というコトだった。
当然、「特許によって得た収益は誰のものか?」と言うことになる。

中村先生がこの裁判を起こしたことで、次々と業種を超えて様々な製造メーカーの研究者達が、自分が所属していた(あるいは「所属してる」)企業を相手に、「特許」についての裁判を起こした。
それを切っ掛けに、現在の様な「企業と個人の報酬のあり方」が取り決められる様になった、と言う背景がある。
今でも、その当時裁判を起こした人達に対して、良い印象を持っていない同僚達もいるだろう。
何故なら、日本の研究は「チーム」で行うコトが多く、個人がひとり研究・開発をしている訳ではないからだ。

だからと言って、今回の政府案の様に「社員の発明は企業のもの」としてしまうのも、変な気がする。
と言うのも、研究・開発の過程で生まれるアイディアや発想は、個人によるトコロが大きいからだ。
そのアイディアや発想をカタチにし、実現化していく過程で企業の支援が必要となると考えるのが、普通だろう。
とすれば、今の司法の判断では不足かも知れないが、現実的な部分も大きいのではないだろうか?
今のように、様々な分野で「イノベーション」が求められるコトを考えれば、「所詮、良いアイディアを出しても、企業のメリットにならなければ『×』と判断されてしまうのだろう」と考えてしまう可能性もある。
それほど、日本の企業には余裕がない様な気がしている。

もし、その様な状況を変えることができるとすれば、企業が積極的に研究者を大学などの研究室へ、送り込むコトかも知れない。
事実、同じ「青色LED」の赤崎先生は、松下電器に勤めていた時に「青色LED」の研究がしたい、と言うことで名古屋大学へ移籍し研究をしている。
それだけではなく、研究には豊田合成などが参加している。
その結果、「青色LED」に関する基本的な部分の特許(=赤崎先生、天野先生が携わった研究部分の特許)は、名古屋大学と豊田合成他が所有し(この話は、赤崎先生の講演の時に伺った話なので、本当のことだと思います)名古屋大学だけではなく豊田合成他にも多大な特許による利益を与えている。

それにしても、この問題の切っ掛けになった中村先生がノーベル賞を受賞した週に、この様な政府案を出してくるとは・・・チョット時期を考えた方が良かったのでは?政府関係者の皆さん。