日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「ハラスメント」と関係性

2018-05-22 21:18:02 | 徒然

昨日、エントリをした日大のアメリカンフットボールに所属していた学生の、記者会見が今日行われた。
VTRなどを含め、中継をご覧になられた方も、多かったのではないだろうか?
率直な感想としては、「自分の言葉で、キチンと話した記者会見だったのでは?」という印象を持っている。
と同時に、おそらく今回の記者会見で名前が挙がった監督やコーチ陣達は、自分たちが学生に対してどれほどの「ハラスメント(=嫌がらせ)」をしていたのか、理解できていないのでは?という気もした。

まず一番最初に驚いたことは、当該の選手が「日本代表」に選ばれていながら、それを「辞退するように」と受け止められる発言をしていた、という点だ。
おそらく、アメリカンフットボールの選手としては、将来を期待されるような有望選手だったのだと思う。
そのような選手たちにとって「日本代表」に選出される、ということほど名誉なことは無いはずだ。
それは選手だけではなく、出身大学にとっても名誉なことのはずなのだ。
にもかかわらず、「練習がなっていない(というような趣旨の発言があり)」ことを理由に、「辞退」を迫るということは、当該選手にとっては、どれほどのショックなことだったのだろう。
日大の監督やコーチにとっては、「日大>日本代表」という考えを持っていたのかもしれない。
このことを切っ掛けに、監督やコーチ陣の指示に従わなくては「日本代表選手」になれないと感じ、服従することが最善の判断、と考えるようになったのでは?という気がする。

その後コーチ陣からの「優しいからダメなんだ」という趣旨の発言などは、日本の運動部の悪しき伝統のような「スポーツ本来とは全く関係のない点をネガティブな材料として追求し、追い込み精神面を鍛える」的な方法であったような気がする。
このような方法は、選手を精神的に鍛えるどころか、服従関係をつくりやすくするだけで、競技そのものの技術向上などには結びつかないことは、これまで様々なところで指摘されてきたはずだ。
にもかかわらず、いまだに日本の運動部(中高の部活動も含む)では、このような「的外れの精神的鍛錬法」がまかり通っているようだ。

確かに「歯を食いしばる」と言う言葉には、意味がある(と聞いたコトがある)。
それは、試合の最後の最後「勝ちたい!」という思いが、持てる力を全て出させる時に起きることだと、言われている。
決して、周囲から与えられたプレッシャーから「勝ちたい!」と思うのではなく、選手自身が思うことで発揮される力なのだ。

今回の当該選手の記者会見で見えてきたことは、様々なところで指摘されている「ハラスメント(=嫌がらせ)が起きる関係性」を、一番分かり易く示しているように思えたのだ。
それが、監督、コーチ陣が当該選手に与えた「服従」ということだ。
「自分たちのいうことを聞かないから、日本代表を辞退させる」とか、「全く関係のないことを、あえてネガティブにとらえ精神的に追い込む」など、監督やコーチ陣が行ってきたことは「自分たちに服従しないと、罰を与える」という方法だ。
このような方法が通用するのは、監督やコーチ陣と選手という「力関係」があってのことだ。
多くの場合、この力関係が強い立場にある人は、自分が行っている「ハラスメント(=嫌がらせ)」に気づいていない。
今回の場合は、「選手の為に思ってやっていたこと」くらいにしか、考え・思っていないのではないだろうか?

「ハラスメント(=嫌がらせ)」そのものは、おそらく無くならないと思っている。
その理由は「人は上下関係をつくることで、相手を動かしたい」という潜在意識があるからだ(と思っている)。
しかし、そのような意識と認識を持つことはできる。
その「意識と認識」が、「ハラスメント対策」には一番必要なことのような気がするのだ。