今日からGW後半戦。
この4連休を観光地で過ごされる方も、少なくないだろう。
観光地に限らず、何等かのサービスを受けるとき決まって使われる言葉がある。
それは「お客さま」だ。
この「お客さま」という言葉に対して、なるほどな~という文が日経のCOMEMOにあった。
日経COMEMO:「お客さま」「患者さま」の呼称をやめては?ーセクシャルハラスメント退治は言葉からー
このコラムを読んだ率直な感想は「『お客さま』の呼称は、止められないだろうな~」だった。
それに対して、「患者さま」と言う言葉遣いをしている病院は、それほどないのでは?という印象を持っている。
今から10年以上前だと思うのだが、ある大病院で「患者も病院にとっては大切なお客様なのだから、弊院では『患者さま』と呼んでいます」というインタビューをテレビで見たことがあった。
この時の違和感は、その後クリニックなどで「受診受付番号+患者さま」と呼ばれることを経験するのだが、やはり違和感が付きまとっていた。
確かに、クリニックを含む病院にとって、患者はお客さまなのかもしれない。
しかし、その目的は商品やサービスを買うという目的ではない。
病院の場合深刻な話を聞くことも多々あることを考えると、「さま」付けでは病気やケガを治す当事者意識がなくなってしまうような気がしていた。
日本の医療での患者と医師の関係は「パターナリズム(=父権主義的)」と言われている。
「医師>患者」という関係性があり、患者側は治療などに関しては「お任せ思考」になりがちである、という指摘がされている。
そこに「さま」付けの呼び方が加わると、患者側はより一層「サービスを受ける側」という意識が働き、治療の丸投げという状況に陥っているようになっているのではないだろうか?
私自身、大病をした経験から「治療の主役は患者自身」であると、実感をしている。
患者自身が、自分の治療に積極的に関わることで、納得できる治療が受けられるだけではなく医師をはじめとする医療者との関係も良くなるからだ。
だからこそ「さま」ではなく「さん」付けのほうが自然だろうし、「患者=お客さま」という思考の中には「治療」よりも先に「お金」を感じてしまうのだ。
コラムを書いている方が問題視しているのは、「患者と看護師、あるいは介護士」という、「患者>看護師・介護士」という関係のことを指しているのだと思うのだが、このような思考は「医師>患者」というパターナリズムの裏返しなのでは?という、気がしている。
それに対して「お客さま」は、商品やサービスを購入する相手となるので、「さま」付けには抵抗感があまりない。
あまりないというよりも、自然な気がしているし、そこでは明快な金銭の授受があるからかもしれない。
ただ、その延長として「セクシャルハラスメント」がある、という気もしていない。
確かに「お客さま>商品やサービスの提供者」という構図は成り立つが、それは病気治療などと比べると接触時間はとても短いからだ。
コラムを書かれた方の感じる「セクシャルハラスメント」というのは、商品やサービスを購入する側の無理難題な要求や不快で気持ちの悪い接触をしても許される、という思考が「さま」付けによって起きているのでは?という指摘なのだと思うのだが、「さま」付けの有無で「セクシャルハラスメント」は無くならないだろう。
何故なら、そのような行為をする人というのは「さま」付けであろうとなかろうと、自分の行っている行為が「セクシャルハラスメントである」という認識が無いからだ。
「セクシャルハラスメント」をはじめとする、様々な「ハラスメント=嫌がらせ」をやめさせるには、教育と制度(あるいは罰則)しかないのではないのでは?
何故なら「人権」に関わる問題だからだ。