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「危機管理」とは何か?日大が示した教訓

2018-05-23 19:23:15 | ビジネス

日大のアメリカンフットボール部が起こした、「悪質プレー(「傷害事件」だと個人的には考えている)」の波紋はとどまることを知らないようだ。
昨日の当該選手の記者会見の内容に対して、日大広報部からのコメントは以前と変わらない内容で、当該選手の記者会見の内容とは、随分相違のあるモノだった。
その結果、日大関係者以外のアメフト関係者、その他スポーツ関係者だけではなく、多くの市民が「日大に対して不信感」を持つようになってしまっている。

この問題で、俄かにクローズアップされた日大の新設学部がある。
危機管理学部」という学部だ。
HP内の「教育の目標」には、「リーガルマインドを養いつつ・・・」という言葉が最初に出てくることから、法学部から枝分かれをし、「危機管理」という部分に特化した学部のように見受けられる。
HPに書かれているように、以前では考えられないような様々なリスクがある。
震災のような自然災害のリスクもあれば、「テロ」のような人的リスクもある。
「テロ」と言っても、その内容は様々で、爆発物を使うようなテロもあれば、インターネットやAIを利用した「サイバー型テロ」もある。
これまでの「危機管理意識」では、対応できない社会になりつつある、という点ではこれからは必要とされる学部のようにも思える。
ただ、最近の新設学部の名前を見てみると、どこか取って付けたような名前が多い。
今回の「危機管理学部」も、同様の印象を受けるのだ。
何故なら、「危機管理」の大原則は、どのような時代になろうとも、変わらないと考えているからだ。

例えば「サイバー型のテロ」と言った場合、それを防ぐには強固なセキュリティー対策が、一番の防御だろう。
その強固なセキュリティー対策をかいくぐって、行うのが「サイバーテロリスト」ということになる。
爆発物を使ったテロにしても、テロ行為をやめさせることが、一番の防御策だろうし「危機管理」の大きな柱となるはずだ。
自然災害などは、人が対策を取ろうとしても、それを破壊するだけの力があることは、「東日本大震災」などで経験
済みだ。
とすると、この「危機管理学部」の研究対象は、そのような「コトが起きた時、法的な視点を含めどのように対処のか?」ということになる。

自然災害だけではなくテロによる被害が発生した時、一番に考えなくてはならないのは、一体何か?
それは「被害を受けた人(の命)と財産の保全」ではないだろうか?
「財産」というと、莫大な経済的資産を持っている人や企業だけが対象のように思えるかもしれないが、むしろ一番に考えなくてはならないのは、「人の尊厳や名誉、企業であればブランド価値」などではないだろうか。

今回の件は、日大側が加害者であり、関西学院大学側が被害者になる。
「危機管理」という視点が、被害を受けた側の「人と財産の保全」ということであれば、何故日大は被害者である関西学院側に立った発想ができなかったのだろうか?
「大学スポーツで起きたアクシデントだったから」ということだろうか?
少なくとも、関西学院大学から強い抗議を受けた時点で、「なぜ関西学院はこれほど強い抗議をするのか?」という「被害者側に立った危機管理発想」をすれば、おのずと次のアクションが明快にできたはずなのだ。

過去、企業が起こした様々な事件で経営幹部が頭を下げる、という場面を見ている人は多い。
その中で、経営幹部が社会的非難を受けた事件の多くは、経営幹部が当事者意識がないばかりか、自分が被害者であるかのような振る舞いをしたことが、原因となっている場合がほとんどだ。
そして今回の日大の対応は、まさに当事者意識が無いように感じられる。

「社会的危機管理」という点では、今回の事件は違うようにも見える。
しかし「危機管理」の原則は、社会全体を巻き込むような事件や事故と、今回のような事件も同じだと思うのだ。
「危機管理」には「最初から危機を回避する」ということも重要だが、「起きてしまった事柄から発生する、二次的危機を回避する」ということのほうが、より重要なのではないだろうか?

今日の日経スタイルに、「謝罪マスター」という方のインタビューが掲載されている。
日大の関係者の皆様も参考にされてみてはいかがだろう?
日経スタイル:内輪話NG 元吉本の謝罪マスター、TOKIO会見を斬る