日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

おめでとう、なでしこ

2011-07-18 08:05:18 | スポーツ
ドイツで開催されていた女子サッカーW杯の決勝が、日本時間の早朝行われた。
既に結果はご存知の通り、PK戦の末日本が初優勝を果たした。

「なでしこ」たちが、ここまで来るのに大変なコトがイロイロあっただろう。
何よりも男子に比べると、その練習環境は格段に恵まれていない。
小学生の頃は、男子と一緒にプレーをするのだが、中学・高校と進むにつれ「プレーする場所」がなくなっていく。
現在の「なでしこリーグ(旧「Lリーグ」)」に所属しているチームの殆どは、プロ契約をしていない。
今回の代表選手の中には、ドイツやアメリカでプロ契約をしプレーしている選手もいる。
MVPを受賞した澤さんは、かつてアメリカの女子プロリーグでプレーした経験がある。
そんな恵まれていない環境の中でも、「サッカーが大好き」という気持ちで、プレーを続けている選手たちの代表が「なでしこジャパン」でもあるのだ。

そんな「なでしこジャパン」を率いる監督が、佐々木則夫さん。
選手時代は、日本代表経験もない(と記憶している)方だが、指導者としてもJリーグの大宮アルティージャでの経験がある程度で、いわゆる「有名監督」では無い。
ただ、「なでしこジャパン」の監督に就任してからの実績は、なかなかのもの。
監督就任初めての大きな大会となった、東アジア大会では完全アウエーの中初優勝をしている。
そんな佐々木さんが今年、「なでしこ力」という本を出されている。
「なでしこジャパン」を率いてからのことを書き綴った内容だが、どちらかというと「選手の能力を引き出すコト」という視点で読んでみると、なかなか興味深いモノがある。
特に、「なでしこ」という女子チームを男性監督が指導する、という視点は、ビジネスの場面でも参考になる点が多いと思う。

先週、ドイツを「なでしこジャパン」が破った時、「なでしこ」たちがお手本?という組織の作り方についてエントリをしたが、実際本を読んでみると「なでしこ」たちの強さがわかる部分が多い。
何よりも、彼女たちのモチベーションの強さの一つは、監督からのトップダウン組織でもなければ、「なでしこ」たちからのボトムアップ組織でもない。
非常に「オープンでフラットな組織」だというコトがわかる。

以前から、野球の監督さんたちが書く「指南本」がビジネス本として人気があったが、これからは、佐々木さんのような監督像が参考になるような気がする。
でもそれを実現できたのは、「なでしこ」一人ひとりの高いモチベーションや周囲に対する感謝の姿勢、何よりも厳しい環境の中で鍛えられた中で身に付けた「楽しむ気持ち」だったと思う。

何はともあれ、「なでしこ」おめでとう。
ゆっくり休んで、帰ってきてください。
メディアの大騒ぎに左右されることなく、自分たちの夢をそのまま追いかけてね。

気になる「東北応援キャンペーン」

2011-07-17 08:39:13 | マーケティング
ここ数日、ある新聞広告が連日のように掲載されている。
それが米国食肉輸出連合会の「東北応援キャンペーン」だ。
一見すると、「東北の農産物をプレゼントするキャンペーン」のように見えるのだが、そこには「アメリカンビーフ」というオマケもついてくる。

既に多くの方々にとっては、遠い記憶になってしまったのかも知れない「米国牛BSE問題」。
私にとっては、実は今でも米国牛は信頼が出来ない食品の一つだ。
もしかしたら、ここ数日新聞やテレビのニュースなどの中心となっている「セシュウムが検出された牛肉」よりも、信頼をしていないかも知れない。
だが、ここに来て米国産牛肉がこれまで取り扱いを控えていた大手スーパーなどでも、極普通に見かけるようになってきた。
それだけ、日本の市場が米国産牛肉に対して市場を開いてきた、というコトになる。

この背景にあるのは、一体なんだろう?と、思ってみると、やはり米国側からそれなりの圧力というか、やり取りがあったのではないだろうか?
キャンペーンそのものは、今月から始まっているので「セシュウムが検出された牛肉問題」よりも前に、キャンペーンは組まれていたと思う。
思うのだが、このタイミングで広告を打つということは、「セシュウムが検出された牛肉」の問題もある程度加味している様にも感じてしまう。

ただ、私が気になるというか嫌な感じを受けるのは、「東北応援」としながら実は、米国産牛肉の販売促進のキャンペーンであるということ。
もう一つは、キャンペーンに「すべては、日本の食卓のために」とあることだ。
あたかも「東日本大震災」の被災地を応援し、日本の食卓のために米国食肉輸出連合会は、キャンペーンを展開しています、という表現に、不快感を覚えるのだ。
言い換えれば、「本当は米国産牛肉を買ってもらいたいけど、まだ(私のように)抵抗感がある人がいるから、『東北応援』とし、『日本の食卓のため』という理由をつけている」様に、疑り深い私などは感じてしまうのだ。

米国の畜産業界からの圧力というか、積極攻勢は「BSE問題」が収束する前からそうとう激しいものがあった。
年齢制限や出荷頭数などを次々と撤廃、変更させてきたはずなのだが、それでも以前ほど米国産牛肉の輸出量などが増えていないのだと思う。
実際、牛丼チェーン店で米国産牛肉を使っているのは「吉野屋」だけ。
その「吉野家」にしても、「吉野家基準」のようなモノをクリアした契約精肉業者からのみとなっているはずだ。
その様に考えると、米国側としては何とか市場拡大のチャンスを狙っていたのは、当然だろう。
その機会が、もしかしたら「東北応援キャンペーン」だったのではないだろうか?
だとしたら、この「キャンペーン」そのものは、決して成功しているとは思えない。
少なくとも、私のように「キャンペーンの主旨と本音」を疑う生活者がいるのだから。

そうだ 東北へ行こう

2011-07-16 20:39:51 | 徒然
今日から三連休という方も多いだろう。
自動車関連企業の方にとっては、お預け三連休かも知れない。
そして、この三連休が終れば、いよいよ子供たちは夏休みに入る。
と言っても、被災地東北の子供たちは、そのような訳には行かないようだが・・・。

連日の暑さもあり、旅行雑誌などでは「節電を兼ねて避暑地に行こう」という特集が目立つ。
名古屋で言うなら飛騨高山や長野といった信州が、身近な避暑地というコトになる。
意外だが、三重県の御在所なども日帰りで楽しめるチョッとした避暑地だ。
そんな雑誌の特集を見ていると、今年に限っては「東北のお祭り特集」を組むところも多い。
今日PCを立ち上げ、Yahooのトップを見たらこちらもやはり「東北のお祭り」の絵柄だった。

東北のお祭りが本格化するのは、八月のお盆の頃。
青森の「ねぶた」、山形の「花笠」、仙台の「七夕」など、東北の夏祭りはとても賑やかで華やかだ。
厳しい冬を乗り越えたエネルギーを、夏のひと時に爆発させるかのようだ。
そんなエネルギッシュな東北を見に出かけることも、被災地の応援になると思う。
だからこそ、様々な旅行雑誌などがこぞって「東北の祭り」を取り上げるのだろう。

と同時に、「Buy東北」という気持ちも忘れずにお願いしたい。
特に、東京電力幹部のみなさまには是非、福島県産の和牛をシッカリ食べていただいて、この暑い夏を乗り切っていただければ、と思っている。
出来れば、国策として原発を推進し今だに「原発政策についての見直し案」が出てこない、自民党の原発推進派のみなさまも、是非21日の「土用の丑の日」は鰻ではなく、福島県産牛肉で暑気払いを・・・。
世間では「パフォーマンス」と言われ様と、そのくらいのコトをしなくては畜産農家さんたちは、納得しないような気がしますが・・・いかがでしょう?

孫さんに注目して欲しい、国際プロジェクト

2011-07-14 11:30:26 | ビジネス
ソフトバンクの孫さんが、中心となり38道府県が参加を表明している「自然エネ会議」。
昨日、その初会合があったようだ。
ご存知のように、この「自然エネ会議」は、ソフトバンクの孫さんが提案している「電田プロジェクト」が中心となっている。
全国の耕作放棄地などに太陽光発電パネルを設置し、太陽光発電を中心に、他の自然エネルギーを組み合わせて安定的な電力供給をし、「脱原発」を目指していくという内容だ。

実はこの「電田プロジェクト」を聞いたとき、思い出したことがあった。
それは、今年のGWの頃NHK教育の「サイエンスZERO」で放送された「サハラソーラーブリーダー計画(SSB計画)」だ。

アフリカのサハラ砂漠といえば、世界最大級の砂漠。
その砂漠の砂からシリコンを作り、太陽光発電パネルを設置、そこで作られた電力を全世界へ送る、という壮大な計画だ。

もちろん、ここで問題となるのは原材料の一つであるシリコンだ。
砂漠の砂からシリコンを作る、と考えるととても純度の低い製品になるのでは?と、不安になるのだが、逆に純度を求めずに太陽光発電パネルとして問題のないレベルのシリコンにする。そして、全世界へ電力を送るために「直流超電導送電」という方法を検討しているようだ。
科学的なコトは、私の理解を超えるところなのだが、もしこの「直流超電導送電」という技術が確立すれば、「ヘルツの違い」などは関係がなくなるのでは?という気がしている。

何よりもこの技術開発の中心にいるのが、日本という点でもっと注目されても良いプロジェクトだと思うのだ。

考えてみれば、日本は30数年前に起きた「オイルショック」で、「省エネ技術」を発展させた。
その技術の高さは、おそらく他の国を圧倒するモノがあるだろう。
ただ、それからは「改良に改良を重ね過ぎて、顕著な違いがわからないほどの技術や利便性」へと向かっていってしまったのでないだろうか?
いわゆる「日本のガラパゴス化」である。

でも、その「省エネ技術」の根幹となる考えや発想は、これから先ますます重要なモノになっていくはずだ。
とすれば、「サハラソーラーブリーダー計画」のような国際的なプロジェクトを、もっと注目しても良いのではないだろうか。


ありそうでなかった商品

2011-07-13 17:40:01 | ビジネス
我が家の近所には、大手コンビニが数軒ある。
他にもスーパーが3軒、ドラッグストアーが1軒。
最近、夕涼みを兼ねコンビニ、スーパー、ドラッグストアーめぐりのようなことをしている。
「新商品好き」な私は、お店に入って「新商品」を見つけるコトがとても楽しい。
そこで気がついたのだが、近所のドラッグストアーは、何故か?新商品が並ぶことが多い。
それもコンビニやスーパーよりも先に、店頭に並ぶのが早い。
かつて、スーパーのライバル業態はコンビニのように言われていたが、最近はコンビニのライバル業態はドラッグストアーかも知れない・・・と、感じることがあるほどだ。

さて、その近所のドラッグストアーで見つけた新商品を見て「何故、今までなかったのだろう?」と思う商品があった。
それが、ハウス食品の「とんがりコーン カレー味」だ。
プレスリリースでも、「とんがりコーン」発売以来、初めての味らしい。

何故私が「今まで何故なかったのだろう?」と、思ったのかといえば、ハウス食品の代名詞ともいえそうな商品の一つに「バーモントカレー」があるからだ。
「バーモントカレー」と言えば、随分息の長いキャッチコピー(「りんごとはちみつ・・・」)とともに、日本の家庭カレールーとして定着したいわば「ロングセラー商品」だ。
おそらく、発売してから40年以上経っているのではないだろうか?
そのハウス食品の人気+ロングセラー商品である「カレー」という味付けの商品が、同じように人気商品であるスナック菓子になかった、というのが意外でもアリ、ある種の驚きでもあった。

このような「ありそうでなかった商品」と言えば、「カルピスウォーター」がある。
「カルピス」そのものは、「ロングセラー商品」の優等生とも言える商品だし、客層も「大人から子どもまで」と世代を問わない。
むしろ「子どもの頃、夏休みの楽しみはカルピスだった」という人も、多いのではないだろうか?
そんな子ども時代の経験が、大人になってから自分の子供たちにも同じ様に「夏休みの楽しみ」として、カルピスを作っていき、それが何世代にも渡るコトで「超」がつくほどのロングセラー商品となっている。
しかし、カルピスの問題は「希釈する」という手間だった。
その手間を省いた商品が「カルピスウォーター」だったのだが、やはり初めて登場したときには「何故、今までなかったのだろう?」と、疑問に感じた商品でもあった。

今回の「とんがりコーン カレー味」と「カルピスウォーター」を同じ発想で、開発・商品化したとは思わない。
だが、社内にある特徴的な商品同士を組み合わせることや、生活志向の変化を探ることで「何故、今までこのような商品がなかったのだろう?」という商品を生み出すコトが出来る、というお手本のような気がする。

「なでしこ」たちがお手本?組織のあり方

2011-07-12 11:53:59 | ビジネス
サッカー日本女子代表の活躍が、週明けの話題になったのではないだろうか?
サッカーファンであっても、女子サッカーの試合というのは余り見たことがない、という方の方が多いと思う。
以前、「全国高校女子サッカー大会」のボランティアをしたことがあるのだが、男子サッカーと大きく変わるところは何もない。
もちろん、体力的な配慮はされているのだが、サッカーという「スポーツに対する思い」は、決して男子に負けてはいなかった。
むしろ、練習環境など男子よりも恵まれていない分、その思いは強いように感じた。

そのサッカー日本女子代表「なでしこジャパン」が、優勝候補のドイツを延長戦の末破った。
中心になっているのは沢穂希(さわ ほまれ)選手。
日本代表歴10数年の大ベテランだ。
彼女を中心に、チーム一丸となって自分たちよりも随分大きな体の外国勢選手たちと戦うというのは、体力的にも精神的にもタフさが必要となる。
何よりも、ピッチ上では監督の指示を仰ぐことが出来ない。
その場その場の状況を個々の選手が判断をし、それをパスという方法で伝えていくしかない。
「自分の思いや考えをパスに乗せ、受け手選手に伝える」のだ。
その意味で、サッカーというスポーツはフラットな組織でなくては、機能しない。
40年以上前のように、点取り屋といわれるフォワードの選手がゴール前にいて、点を取るというのでは、今のサッカーは勝つことが出来ない。

実際、「なでしこ」たちの闘い方はチームが一丸となり、攻撃的な選手であっても守備をするコトをいとわない。
逆に守備的ポジションの選手であっても、「攻撃のチャンス」という時には積極的に前に出る。
「誰がこの仕事をする」という役割があっても、互いに状況に応じて補完しあいながら試合を動かしていく、これが「なでしこジャパン」の強みでもある。
その意味で、とてもフラットで意思疎通の出来ている組織なのだ。
このような組織のあり方が、今ビジネスの場面でも注目されている。
それも、顧客を巻き込んでの組織づくりだ。

もちろん、そのチームの中心に沢穂希さんがいるのだが、沢さん自身がチームメイトに積極的に指示を出すということは殆どない。
試合後、話し合いの中で意見を述べ合うことはあると思うが、沢さんが自分の意見を押し付け、チームを動かしているという話しは聞いたことがない。
選手一人ひとりが、互いに尊重しあいながら自由に意見が出せる、というのが「なでしこ」たちのチームのようだ。

おそらく、そのような組織が自然発生的に生まれ、そこからイノベーションとなるアイディアが生まれることが企業にとって理想なのかも知れない。

もう一つ付け加えるなら、ドイツ戦後、「なでしこジャパン」のメンバーは感謝の横断幕を掲げ、ピッチを一周している。
そして試合前に見た「モチベーションビデオ(試合前に、気持ちを高めるために見るビデオ。多くは過去の惜敗した試合や、勝ち試合)」は、なんと「東日本大震災」の被災地ビデオだったと聞いている。
被災地に思いを馳せ、感謝をする・・・謙虚な姿もまた、見習うポイントなのかも知れない。

お客様と向きあう

2011-07-11 06:14:15 | ビジネス
当たり前といえば当たり前の商売の基本が、タイトル。
でも、本当に「お客様と向き合っているのか?」という、コトなのだ。

日曜日の新聞には、新刊や話題の書籍を紹介する頁があることが多い。
その中に、関西にある書店の営業部長さんのお話しが掲載されていた。
お話しというのは、東京国際ブックフェアで「お客様を知る力は日本一!の書店員 1500人の趣向を把握し、販売につなげる接客とは?」という講演をされた、隆祥堂書店営業部長のニ村知子さんの講演の内容だった。

今街中の書店は、イロイロな意味で岐路に立たされている。
先日も出かけた繁華街の大きな書店が閉店していて(内装改装の閉店ではない)、ガッカリしたばかりだ。
別に、その書店でなくては買いたい本がないわけでは無いし、近くには丸善などもあるので困ることは無いのだが、ファッションビル内にある書店というのは「買い物ついでに・・・」という気軽さがあり、便利だったのだ。
そして地方に行けば、昔ながらの商店街の本屋さんは商店街の衰退と共にシャッターを閉めていることが多い。
その理由の一つは、コンビニで雑誌が買えたりするコトだろうし、アマゾンのようなネットで本が買えるというのも、大きな理由だろう。

ただ、この二村さんの公演内容の記事を読むと、どれだけ特別な接客をしている訳では無いようなのだ。
違うのは「お客様と向き合う姿勢」というコトだろう。

「お客様の趣向を知り、提案をする」と言えば、「アマゾンでもやっている」と言われそうだ。
確かにアマゾンで本を検索したり購入したりすると、「この本を購入した人は、このような本にも興味を持っています」というリストが表示されたり、メールで送られてきたりする。
それはそれで、便利で親切な機能のように思えるのだが、私自身としては「余計なお節介」と感じている。
というのも、仕事で読みたい本と趣味として読みたい本はまったく違うジャンルだし、その趣向もバラバラ。
おそらく人というのは、そんな「一人十色以上の思考・趣向がある」と思っている。
そこが、アマゾンの提案の限界なのではないだろうか?

むしろその「一人十色以上」という点が、この二村さんの書店の接客の基本のように感じたのだ。
ビジネス書の常連のお客様に「リフレッシュのために、いつもと違うこんな本はいかがですか?」と、声を掛けられること。
それも「お客様の好みをある程度理解した提案」という難しさがあると思うが、「お客様が求める本は、草の根分けてでも探す」という本に対する姿勢が、常連さんたちから「的を得た、本を薦めてくれる」という言葉へと、つながるのではないだろうか?

停滞する小売りの基本的コトのように思われるかも知れないが、この「本気でお客様と向き合い、一緒に追求する」という姿勢は、どの業種であっても同じような気がする。
このような姿勢が、3.11以降のビジネスの一つのあり方なのではないだろうか?




「協力」という名の企業間パワーハラスメント?

2011-07-09 19:37:25 | 徒然
今週話題になったのは、復興大臣に任命された方の放言と九州電力の「やらせメール」だった。
復興大臣を任命された直後の放言にしては、被災地を思いやるコトバではなかっただけではなく、出身地である九州の方や同じ血液型の人たちにとっても、いい迷惑だった。

そして九州電力の「やらせメール」問題。
こちらは、「過去やらせ番組でテレビ局が糾弾されたことが何度もありながら、わからなかったのか?」という疑問もあったが、私自身は、関連会社、協力会社社員などを動員していたコトに対して、インタビューに応えていた社長さんが「九州電力に対する愛情だったのでは?」という内容のコトを話していることに違和感を感じたのだった。

九州電力の社長さんが辞任するコトになった頃くらいから、組織的な「やらせ」であったことが判明してきた。
九州電力社員が「やらせメール」をしていたというのは、わからないでもない。
「倫理観」とか「社会的道義」の問題は別にして、「会社を守らなくては!」という思いが、そのような組織的行動になったということだろう。
だが、問題だと感じるのは関連会社、協力会社社員の人たちに対してだ。
というのも関連会社の人たちからすれば、九州電力から「やらせメール」の依頼があれば、「倫理観」や「社会的道義」に反するわかっていても、仕事上の力関係から考え「やらざる得ない」という状況になるのでは?

これは最近、時々問題視される「企業間におけるパワーハラスメント」の一つなのではないだろうか?
もちろん九州電力側としては、「ご協力をお願いしている」というコトだろうが、関連会社や協力会社の人たちからすれば、「断るに断れない」立場なのではないだろうか?
第一、面と向かって「倫理的、道義的に協力できない」と、言えるのだろうか?
そして「やらせメール」が発覚し、信頼を失いやすいのも協力会社などではないだろうか?
実際、テレビ番組の「やらせ問題」でテレビ局が受けるダメージよりも、その番組を制作していた製作会社の方が、社会的風当たりも強い。
社会的制裁は、放送したテレビ局よりも製作会社の方が受けやすいのだ。

今回の九州電力の「やらせメール」が、テレビ局の「やらせ問題」と同じだとは言わないし、関連会社や協力会社に対して社会的制裁があるとは思わないし、そのようなことがあってはならないと思うのだが、このような問題が起きても九州電力側としては、社会的信頼の失墜というコトが言われても、公共性の高い事業会社であるが為に、経営的な面で不利益を被るということはまず考えられない。
だからこそ、「企業間におけるパワーハラスメント」のようなコトをしてはいけないのでは?

日本の総ての電力会社が同じような体質だと思いたくは無いが、今「エネルギーイノベーション」が起きる可能性がある、という危機感を持たない電力会社は、口先だけの「コンポライアンスの遵守」では生き残れない、という自覚を持つ必要があるのでは。




「初音ミク」とファン・マーケティング

2011-07-07 16:50:57 | マーケティング
先日、新聞に「初音ミク ロサンゼスル公演」という記事が掲載されていた(紹介記事は朝日新聞)。
「初音ミク」というWEB上のアイドルは知ってはいたが、その詳しい内容についてはまったく知らなかった。
ファンの方々には申し訳ないのだが、興味がなかった。
そのWEB上のアイドルの海外公演。しかもエンターティメントの本場アメリカでの公演が、大成功に終ったというニュースは、とても不思議な気がしながらも、その理由が知りたいと思ったのだ。

そもそも「初音ミク」というWEB上のアイドルは、音声・音楽ソフトから誕生したという。
そこからアイドルとしての動画が生まれ、その動画から新たな楽曲・歌が生まれ、新たな楽曲や歌に合わせて動画が投稿されるという、「初音ミク」のファンがドンドン自分の好きなカタチへと育てていったWEB上のアイドルだ。
今では大手ゲーム会社が、「初音ミク公式サイト」を開設するまでになっている。

私が興味を持ったというのは、この「ファンが架空のアイドルを育てる」という点だ。
それも連鎖的に楽曲や歌が出来れば、それにあわせた振り付けの動画が投稿され、それに誘発されまた新たな楽曲や歌が作られる・・・という「アイドル育成スパイラル」ともいえそうな広がり方だ。
この拡がっていく過程で初音ミクがメジャーになり、海外まで進出するまで、いわゆる企業側の「宣伝」が積極的に行われていないようだ。
むしろこの「初音ミク」を誕生させたソフト会社は、サポートをするコトはあっても「初音ミク」をイメージ制限するようなコトをしていない。
公式サイトはあっても、それは「公式ファンサイト」という感じだ。
生身の人間では無いからこそ、このようなことが出来るのだと思うのだが、その過程においては、今注目されている「ファン・マーケティング」のお手本のような気がしている。

いわゆる「3.0マーケティング」と呼ばれる、これまでとは違う企業と生活者が互いに影響しあい、共に市場を創造していく、という考え方の一つとして「ファン・マーケティング」がある。
そのため多くの企業が、生活者とコミュニケーションツールとしてツイッターやフェイスブックなどを利用し、生活者からダイレクトな意見や考え、生活思考などを読み取ろうとしている。
ただそれが成功している企業は、余り多くは無いだろう。
なぜなら「企業が意図していることぐらい、生活者の多くが見抜いてしまっている」からだ。
むしろ、企業と生活者の垣根を取っ払い、生活者を企業の中に取り込むというくらいのことが必要だといわれている。
そのような視点で「初音ミク」というアイドルを見てみると、数少ない「ファン・マーケティング」の成功例なのでは?という気がしてくる。

この点は、まだまだ分析の余地アリだとは思うのだが、ビジネスという視点から「初音ミク」というアイドルを見てみるのも面白いかも知れない。


「節電」で注目される、住まいのエネルギー

2011-07-06 15:32:39 | ビジネス
今月に入り、書店に行くとやたらと目に付くタイトルがある。
それが「節電生活」と言った、たぐいの言葉だ。
このような本や雑誌の多くが、主婦向け雑誌などが置いてある所にあることが多いため、拙ブログに来てくださる男性諸氏には、「そんなに?」という気がされるかも知れない。
おそらく、今月だけで5、6冊は出ているはずだ。
内容といえば、「いかに電力を使わない生活をするのか?」という、アイディア集のようなモノが多く「おばあちゃんの知恵袋」のような記事をまとめたものもある。

その中で「オヤ!」と思った内容がある。
それが「地中熱空調システム」というモノだ。
地中にヒートポンプを埋め、地中熱や地下水などの熱を利用するという空調システムのようだ。
日本では、来年開業する「東京スカイツリー」が、「スカイツリー地区」として大規模な空調システムを導入をしている。
東武鉄道株式会社及び株式会社東武エネルギーマネジメントプレスリリース2009年2月17日発表
「東京スカイツリー地区」熱供給(地域冷暖房:DHC)事業許可注意:pdfファイル
もちろん「東京スカイツリー」そのものは、既に注目の的となっているのだが、地域全体の冷暖房システムを提供するだけではなく、災害時のための貯水槽のような役割をしたりするなど、様々な機能を備えているという点でもっと注目されても良い「電波塔」という気がする。

そしてこの「地中熱空調システム」そのものは、オーストラリアなどでは比較的一般的になりつつあるようだ。
残念ながら、日本では今まで殆ど注目されずにきたことを残念に思うし、他にも「パッシブハウス」と呼ばれる、「無暖房住宅」などもある。
「パッシブハウス」などは、個人住宅を中心に広がってきたモノだが、今ではマンションなどの集合住宅なども可能になりつつあるという。

その様に考えると、「節電」はこれまでの「電力頼み生活」の見直しとなっただけではなく、これまで余り注目されてこなかった「住まいのエネルギー」にも、目を向ける機会になっているような気がする。
残念ながら「地中熱ヒートポンプ」そのものは、設置費用が高額なため既存の住宅には向かない空調システムのようだ。
ただ被災地復興に当たっては、このような「東京スカイツリー」のような考えをもった、役所や公共施設があっても良いのではないだろうか?
それが、商業施設へと拡がっていけば、これまでとは違う「まちづくり」となるように思うのだ。