日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「安全神話」の作られ方

2011-07-29 21:18:37 | 徒然
今日の新聞各紙のWEBサイトに、「保安院、中部電力にやらせ」という内容の記事が掲載されている(紹介記事は、中日新聞)。
夕方になると、この「やらせ」は中部電力だけではなかったことが発覚している。

先日、九州電力での「やらせ問題」が発覚し、社会から大きな反発が起きた。
今回の保安院が中部電力に対して「やらせ協力」を依頼したのは、「フクシマ」以前のこと。
とすれば、九州電力の「やらせ問題」よりも、問題が大きいように感じる。
というのも、九州電力の「やらせ問題」は、現在停止状態にある原発再開に向けての「やらせ」だった。
ところが今回の保安院の中部電力に対する「やらせ」は、「プルサーマルは、安全で将来的には必要な電力事業である」というコトへの「やらせ」だからだ。
違う言い方をすれば、保安院が、安全神話のストーリーを作っていた、というコトになる。
元々「安全である」と言い切れ、住民にもわかりやすく説明が出来れば、なにも中部電力に「やらせ依頼」をする必要は無いと思う。
ところが、あえて「やらせ依頼をする」というのは、言うほどの安全性について、最初から無かったのでは?という疑問が起きてしまう。

「安全である」という、確証の無い大前提を崩さず、事業を推し進めたいという考えの現れだと思うのだ。
そして、「安全であるのか?」というコトを調べ・監督する立場である保安院が、そのようなことを依頼・指導していたコトに、「原発の安全神話」そのものが絵空事だった、と受け止められるのだ。

まさに、保安院だけではなく原発関係者にとってこのような事態が、一番恐れていたことなのではないだろうか?
それだけでは無い。
保安院が発表してきた、これまでの「フクシマ」のデータそのものを、生活者の多くが信頼・信用しなくなってしまう、という可能性がますます高くなってしまったのだ。
それは、これまで「大丈夫ですよ」と言ってきた、人たちの発言さえも信用できないモノとするのに充分な出来事だと思う。

その結果として、小さなお子さんをお持ちのお母さんや周辺の農家・酪農家を巻き込んで、もっと風評被害が拡大し、ヒステリックなまでの「放射線拒否反応」が起きる可能性がある。
ここで「放射線拒否反応」としたのは、いわゆる「医療放射線」という意味だ。
健康診断で使われる「レントゲン」や最近話題となっている「PET検査」など、医療の現場では「放射線」を使った検査が極一般的に使われている。
それだけではなく、治療という面でも一般的になってきている。
最近生命保険のテレビCMで知られるようになってきた「重粒子線治療」などの高額医療だけではなく、消化器系以外のがん治療ではとても有効な治療法になっている。

いくら「放射線治療専門医」のみなさんが、イロイロなところで「正しく使われる放射線は、体に害はありません」と言っても、そのこと自体信頼されなくなってしまう。
その事実も保安院は、受け止める必要があるのではないだろうか。