「先崎君のあの本、あれねえ。先崎君もいまいろいろ大変でしょ?
センザキに賞をあげない!!」
神谷広志八段は最後に吠えた。
これが神谷流のスピーチで、みんなニコニコして聴いている。一見先崎学九段にケンカを売っているようだが、裏を返せばこの本がおもしろいことを認めたようなものだ。
神谷八段のお墨付き?を得て、ますますこの本が入賞に近づいたのである。
これで棋士のスピーチは終わりのようだが、まだ石川陽生七段がいる。私がそれとなく長田衛氏に言うと、石川七段に打診はしたが、遠慮されたとのこと。そのくらいの調べは抜かりねぇヨ大沢さん、と長田氏の顔が語っていた。
金子タカシ氏が近くにいたので、LPSAファンクラブMinervaの、「会員番号1」について聞いてみた。
すると、あれはMinerva発足時に行われた、オーディションで獲得したとのこと。
ああそういえば女流棋士会の「MINERVA」だったか、あれはキリ番のセリをやったのを、ネットの記事で読んだことがある。
ともあれ、1番が金子氏に相応しい事実は変わらない。
壇上には色紙や書籍が置かれている。最後にお楽しみの抽選会だ。今回の目玉は、藤井猛九段の色紙だろうか。
Kan氏が大判のトランプを何枚か持っている。これが当たり札になるようだ。ちなみに私は、「クラブの14」である。
何回か数字が呼ばれたが、意外と当たりがいない。…あれ? トランプが当たり札なら、私の14はおかしいぞと思ったら、数字は「11」とナンバリングされていた。いやはやあぶないところだった。
「クラブのジャック!」
Kan氏が叫ぶ。おお当たった!!
私は将棋イベントの抽選だけは、意外に運がいい。私はもちろん、藤井九段の色紙をいただく。これは相当レアものではなかろうか。
と、そこに妙齢の女性が
「私、さっきの6当たってたんですけど! 似顔絵を描いてもらってて、行けなかったんですけど!!」
と飛び込んできた。私はまさに藤井九段の色紙を抱えたところで、何となく彼女と目が合った。
彼女の視線が、私の色紙に落ちた気がする。
「…………。この色紙、いります…?」
女性が頷いたので、私はそれを差し上げた。
何だかとんでもない判断ミスをした気もするが、これも将棋普及である。
私は代替の色紙を選ぶ。あっ、渡部愛女流王位の色紙があった。これを無視するとは、私としたことが不覚だった。もちろんこれをいただく。揮毫は「不撓」。今の私に相応しい言葉だ。
しばらくするとOsa氏が当たり、中原誠十六世名人の色紙をゲットした。みなで見せてもらうと名人時代のもので、「一誠」としたためられている。筆跡、色紙の焼け具合から、昭和50年代のものであろう。これはけっこうなレアものである。
それにしても、とみなが言う。Osa氏は関東交流会の最多勝常連で、いつもいい色紙を持って帰る。今回は運だけなのでみなにチャンスは平等なのに、なぜここでもOsa氏が目玉商品を獲るのかと、大笑いしたのだった。もっともそれは、私もそうかもしれない。
時間もなくなり、ハズレ組は任意の棋書を1冊持って帰ることになった。Tag氏は二上達也九段の詰将棋集を選ぶ。扉に揮毫がされているが、それは印刷されたもの。ただし落款は本物という、珍しい形だった。
まだ棋書がいっぱい余っていたので、私もどれかくすねちゃおうかと思ったが、さすがに自制した。
時刻は20時30分を過ぎ、これでお開き…の前に、最後に入賞者で記念撮影ということになった。なお柚月裕子さんは、すでに退席していた。
ここに所司和晴七段が加わっており、臨時の寸評披露となった。長くなりそうである。
「大川さんの観戦記は、ワクワクして、引き込まれるように読ませていただきました。
『弟子・藤井聡太の学び方』は、杉本さんが力を入れて書かれたと思います。中京将棋界の話も盛り込まれており、共感できるものばかりでした。
柚月さんの作品は、実は候補に挙がるまで読んでなかったんですが、読み始めたらおもしろくて、一気に読んでしまいました。
藤井さんの本は、いつもと趣が違う、初心者向きの本でした。
永瀬さんの本は、かなりむずかしい本になりましたが、前回の著作がすばらしかったので、それと合わせて、優秀賞ということにしました。
山本さんの本は、むずかしい話を非常に簡単に説明しているところが素晴らしいと思いました」
実際はこの2倍、3倍とスピーチがあった。
記念撮影も終わり、これにてお開きである。最後は恒例の三本締めで、音頭は大川慎太郎氏。
「今回は第30回だったんですね。では皆様、よーう!」
シャシャシャン、シャシャシャン、シャシャン、シャン! ×3。
やはり将棋ペンクラブは、こうでなくてはいけない。
振り返って、今年も楽しい会だった。来年の今頃、私が定職に就いているかどうかは、もはや断定できないが、この会に一時でも顔を出させてくれるような、懐の広い会社に就職できたらうれしく思う。
センザキに賞をあげない!!」
神谷広志八段は最後に吠えた。
これが神谷流のスピーチで、みんなニコニコして聴いている。一見先崎学九段にケンカを売っているようだが、裏を返せばこの本がおもしろいことを認めたようなものだ。
神谷八段のお墨付き?を得て、ますますこの本が入賞に近づいたのである。
これで棋士のスピーチは終わりのようだが、まだ石川陽生七段がいる。私がそれとなく長田衛氏に言うと、石川七段に打診はしたが、遠慮されたとのこと。そのくらいの調べは抜かりねぇヨ大沢さん、と長田氏の顔が語っていた。
金子タカシ氏が近くにいたので、LPSAファンクラブMinervaの、「会員番号1」について聞いてみた。
すると、あれはMinerva発足時に行われた、オーディションで獲得したとのこと。
ああそういえば女流棋士会の「MINERVA」だったか、あれはキリ番のセリをやったのを、ネットの記事で読んだことがある。
ともあれ、1番が金子氏に相応しい事実は変わらない。
壇上には色紙や書籍が置かれている。最後にお楽しみの抽選会だ。今回の目玉は、藤井猛九段の色紙だろうか。
Kan氏が大判のトランプを何枚か持っている。これが当たり札になるようだ。ちなみに私は、「クラブの14」である。
何回か数字が呼ばれたが、意外と当たりがいない。…あれ? トランプが当たり札なら、私の14はおかしいぞと思ったら、数字は「11」とナンバリングされていた。いやはやあぶないところだった。
「クラブのジャック!」
Kan氏が叫ぶ。おお当たった!!
私は将棋イベントの抽選だけは、意外に運がいい。私はもちろん、藤井九段の色紙をいただく。これは相当レアものではなかろうか。
と、そこに妙齢の女性が
「私、さっきの6当たってたんですけど! 似顔絵を描いてもらってて、行けなかったんですけど!!」
と飛び込んできた。私はまさに藤井九段の色紙を抱えたところで、何となく彼女と目が合った。
彼女の視線が、私の色紙に落ちた気がする。
「…………。この色紙、いります…?」
女性が頷いたので、私はそれを差し上げた。
何だかとんでもない判断ミスをした気もするが、これも将棋普及である。
私は代替の色紙を選ぶ。あっ、渡部愛女流王位の色紙があった。これを無視するとは、私としたことが不覚だった。もちろんこれをいただく。揮毫は「不撓」。今の私に相応しい言葉だ。
しばらくするとOsa氏が当たり、中原誠十六世名人の色紙をゲットした。みなで見せてもらうと名人時代のもので、「一誠」としたためられている。筆跡、色紙の焼け具合から、昭和50年代のものであろう。これはけっこうなレアものである。
それにしても、とみなが言う。Osa氏は関東交流会の最多勝常連で、いつもいい色紙を持って帰る。今回は運だけなのでみなにチャンスは平等なのに、なぜここでもOsa氏が目玉商品を獲るのかと、大笑いしたのだった。もっともそれは、私もそうかもしれない。
時間もなくなり、ハズレ組は任意の棋書を1冊持って帰ることになった。Tag氏は二上達也九段の詰将棋集を選ぶ。扉に揮毫がされているが、それは印刷されたもの。ただし落款は本物という、珍しい形だった。
まだ棋書がいっぱい余っていたので、私もどれかくすねちゃおうかと思ったが、さすがに自制した。
時刻は20時30分を過ぎ、これでお開き…の前に、最後に入賞者で記念撮影ということになった。なお柚月裕子さんは、すでに退席していた。
ここに所司和晴七段が加わっており、臨時の寸評披露となった。長くなりそうである。
「大川さんの観戦記は、ワクワクして、引き込まれるように読ませていただきました。
『弟子・藤井聡太の学び方』は、杉本さんが力を入れて書かれたと思います。中京将棋界の話も盛り込まれており、共感できるものばかりでした。
柚月さんの作品は、実は候補に挙がるまで読んでなかったんですが、読み始めたらおもしろくて、一気に読んでしまいました。
藤井さんの本は、いつもと趣が違う、初心者向きの本でした。
永瀬さんの本は、かなりむずかしい本になりましたが、前回の著作がすばらしかったので、それと合わせて、優秀賞ということにしました。
山本さんの本は、むずかしい話を非常に簡単に説明しているところが素晴らしいと思いました」
実際はこの2倍、3倍とスピーチがあった。
記念撮影も終わり、これにてお開きである。最後は恒例の三本締めで、音頭は大川慎太郎氏。
「今回は第30回だったんですね。では皆様、よーう!」
シャシャシャン、シャシャシャン、シャシャン、シャン! ×3。
やはり将棋ペンクラブは、こうでなくてはいけない。
振り返って、今年も楽しい会だった。来年の今頃、私が定職に就いているかどうかは、もはや断定できないが、この会に一時でも顔を出させてくれるような、懐の広い会社に就職できたらうれしく思う。