(2日のつづき)
10日(月)の朝になった。2020年冬の北海道旅行の後半戦は、まず帯広に行こうと思う。今回はフリーきっぷを使用しているので遠くまで行かねば損、ということもあるが、渡部愛女流三段の故郷を訪ねたくなった。そして帯広では、旧国鉄広尾線の愛国駅と幸福駅に、久しぶりに訪ねたいと思う。
6時30分、アイカフェをチェックアウトする。このカフェには3日間、お世話になった。また来年お邪魔できればうれしい。
タイム3分で札幌駅に着く。私が乗るべき列車は「特急スーパーおおぞら1号」である。私はみどりの窓口に行き、指定席を取った。我がフリーきっぷは指定席を6回利用できるのだ。今回は札幌始発なので使うまでもないが、自由席車両は少ないし、指定席のほうが、シートのグレードが高い。
駅構内の弁当屋で、私にしては珍しく、「いしかり弁当」(850円)を買った。駅弁を買うのは数年ぶりではないだろうか。いつもはコンビニ弁当で安くあげるのだが、ちょっと気が変わった。
ホームに上がると、立ち食いソバ屋があった。駅の立ち食いソバも反射的に食べてしまうが、私は駅弁を買ってしまった。それでも迷っていると、後ろから来た男性がソバを注文した。
私はタイミングを逸し、おおぞら1号も入線したので、もう列車に乗った。
06時57分、おおぞらは定刻に出発した。仮定の話をしても詮無いが、例の会社に勤めていたら、今日の休みはもらえただろうか。いや私の性格からして、たぶん休みは申請しない。前日に帰京していたはずである。よって今日以降の旅は、いくばくかの収入と引き換えの旅、とも云えるのだ。
今日も空は晴れていた。列車は雪道を快走する。車窓はやや味気ないが、暖房の効いた車内は天国だ。
07時26分、南千歳着。もうだいぶ昔、夜の特急列車に乗って南千歳で下車し、夜行列車に乗り換えたことがある。昔は24時間列車が動いていたが、今、道内を走る夜行列車は1本もない。
「いしかり弁当」を食べる。上品な味付けで美味かった。
07時58分、新夕張着。昨年の3月31日までは、ここから夕張まで、石勝線の夕張支線が通じていた。昨年訪ねたのが懐かしい。
列車は山道を走る。このあたりで、列車の遅延が放送された。
新得着は08時56分だったが数分遅れ、「7分遅れ」と放送された。通常の帯広着は09時25分だが、幸福方面行きの路線バスは09時36分だ。地方の路線バスは本数がないから、できればこれに乗りたい。ただ、帯広駅前発着のバスは多く、現在のバスターミナルが出来てから初の来訪でもあるので、幸福方面の乗り場まで最短で着ける自信がない。
ここから根室本線となり、帯広には09時32分に着いた。急いでバスターミナルに向かうが、36分に着いたら、あるバスが出たばかりだった。間に合わなかった⁉
私は時刻表を改めて確認すると、幸福方面行きのバスは09時35分発だった。35分だったか! ああ、あれがそうか、乗り遅れた!
次のバスは11時20分になり、約1時間40分の待ち時間ができてしまった。
私は気を取り直し、駅構内の2階にある、「とかち観光情報センター」に向かった。観光地を廻る場合、ガイドブックを携行するのもいいが、駅周辺にある観光案内所を利用するのがよい。旬の観光情報と最新のパンフレットを提供してくれるからだ。
その2階には、NHK「なつぞら」コーナーが目に入った。私は、朝の連続テレビ小説はほとんど見ないが、昨年の「なつぞら」は珍しく観た。今回、そのロケ地に来ることができ、感激もひとしおなのである。
とりあえず情報センターに行き、「持ち時間」を告げる。係の人は、帯広市役所からの眺めと、その近くのNHK帯広放送局を推してくれた。いずれも料金がほとんどかからず、私にピッタリだ。
まず、隣接している「なつぞら展」に行く。スペース的にはこぢんまりとしているが、ポスター各種とグッズ、出演者の等身大パネルと色紙、絵画などのセットが絶妙な配置で置かれていた。
私はグッズ売り場で、姪あてに、「キャンパストートバッグ」(2,420円)を購入した。甥あてに何も買わなかったのはアレだが、まあいい。
帯広市役所へは徒歩15分とのことだった。駅前に出ると、レストラン「ふじもり」があった。渡部女流三段も御用達?の店で、私も何度か入ったことがある。聖地巡礼の意味も含め、午後はここで食事を摂りたいと思う。
市役所への途中に、怪しい道路が何本かあった。ここ帯広は鉄道の要衝地で、かつては広尾線のほかに士幌線も分岐していたが、いずれも1987年に廃止された。渡部女流三段生誕の6年前である。
市役所側は士幌線にあたり、私の視界にある道路のいずれかが旧線路なのだが、識別の決め手がない。
NHK放送局に入ると、1階の一隅に「なつぞら」コーナーがあった。係の人に断り、見学させてもらう。
まず目を惹くのが、壁一面に張られたイラストだ。脚本は1週間ごとに分けられているが、その表紙には毎回違うイラストが使われていた。これはその原画である。表紙は文字だけでもいいわけで、こういう密かなオシャレが私は好きだ。
小道具類も充実していた。北勝日日新聞やコンサートチケット、大学入学許可書などの小道具が、本物?そっくりに造られていた。このリアリティがドラマの質を高めるのだ。
私は大いに満足し、市役所に向かう。ここの11階がスカイレストランになっており、そこからの眺めが絶景なのだ。
私はコーヒーを頼み、窓際に座る。壁から楕円形のテーブルが付き出ている形で、自然な姿勢で窓外を眺められる。いま、彼方には十勝連峰が見える。右のカップルはいい雰囲気だ。
左手には根室本線の線路が高架で走っている。帯広駅が高架化されたのは1996年だが、その前年だったか、駅構内店舗でバーゲンセールがあり、私は3,000円の財布を買ったものだ。
「ここよろしいでしょうか」
と、ほかにもテーブルがあるのに、オッサンが私の席に来たので、私は追い出されるようにレストランを出た。
帯広バスターミナルに戻り、新設なった案内所の窓口に行ってみる。
「幸福に行きたいんですが、ここであらかじめチケットを買ったほうがいいですか」
「幸福ですか。ええ、ここで買えますよ。帯広からは片道ですか? ここへ戻られます?」
窓口嬢は「こ」にアクセントをつけて私に問う。私が戻ってくる旨を告げると、「1日乗車券」を勧めてくれた。
その「おびひろ1day乗放きっぷ」は、900円だった。ここから愛国駅前まで480円、幸福駅前まで620円だから、愛国―幸福間の料金も含めると、かなり割安になっている。こ…こんな便利なチケット、いつからあったのだ!?
私が朝のバスに乗り遅れなかったらふつうにバス料金を払っていたわけで、これは、運がよかったというべきなのか。
11時20分、私は広尾行きの十勝バスに乗った。
(つづく)
10日(月)の朝になった。2020年冬の北海道旅行の後半戦は、まず帯広に行こうと思う。今回はフリーきっぷを使用しているので遠くまで行かねば損、ということもあるが、渡部愛女流三段の故郷を訪ねたくなった。そして帯広では、旧国鉄広尾線の愛国駅と幸福駅に、久しぶりに訪ねたいと思う。
6時30分、アイカフェをチェックアウトする。このカフェには3日間、お世話になった。また来年お邪魔できればうれしい。
タイム3分で札幌駅に着く。私が乗るべき列車は「特急スーパーおおぞら1号」である。私はみどりの窓口に行き、指定席を取った。我がフリーきっぷは指定席を6回利用できるのだ。今回は札幌始発なので使うまでもないが、自由席車両は少ないし、指定席のほうが、シートのグレードが高い。
駅構内の弁当屋で、私にしては珍しく、「いしかり弁当」(850円)を買った。駅弁を買うのは数年ぶりではないだろうか。いつもはコンビニ弁当で安くあげるのだが、ちょっと気が変わった。
ホームに上がると、立ち食いソバ屋があった。駅の立ち食いソバも反射的に食べてしまうが、私は駅弁を買ってしまった。それでも迷っていると、後ろから来た男性がソバを注文した。
私はタイミングを逸し、おおぞら1号も入線したので、もう列車に乗った。
06時57分、おおぞらは定刻に出発した。仮定の話をしても詮無いが、例の会社に勤めていたら、今日の休みはもらえただろうか。いや私の性格からして、たぶん休みは申請しない。前日に帰京していたはずである。よって今日以降の旅は、いくばくかの収入と引き換えの旅、とも云えるのだ。
今日も空は晴れていた。列車は雪道を快走する。車窓はやや味気ないが、暖房の効いた車内は天国だ。
07時26分、南千歳着。もうだいぶ昔、夜の特急列車に乗って南千歳で下車し、夜行列車に乗り換えたことがある。昔は24時間列車が動いていたが、今、道内を走る夜行列車は1本もない。
「いしかり弁当」を食べる。上品な味付けで美味かった。
07時58分、新夕張着。昨年の3月31日までは、ここから夕張まで、石勝線の夕張支線が通じていた。昨年訪ねたのが懐かしい。
列車は山道を走る。このあたりで、列車の遅延が放送された。
新得着は08時56分だったが数分遅れ、「7分遅れ」と放送された。通常の帯広着は09時25分だが、幸福方面行きの路線バスは09時36分だ。地方の路線バスは本数がないから、できればこれに乗りたい。ただ、帯広駅前発着のバスは多く、現在のバスターミナルが出来てから初の来訪でもあるので、幸福方面の乗り場まで最短で着ける自信がない。
ここから根室本線となり、帯広には09時32分に着いた。急いでバスターミナルに向かうが、36分に着いたら、あるバスが出たばかりだった。間に合わなかった⁉
私は時刻表を改めて確認すると、幸福方面行きのバスは09時35分発だった。35分だったか! ああ、あれがそうか、乗り遅れた!
次のバスは11時20分になり、約1時間40分の待ち時間ができてしまった。
私は気を取り直し、駅構内の2階にある、「とかち観光情報センター」に向かった。観光地を廻る場合、ガイドブックを携行するのもいいが、駅周辺にある観光案内所を利用するのがよい。旬の観光情報と最新のパンフレットを提供してくれるからだ。
その2階には、NHK「なつぞら」コーナーが目に入った。私は、朝の連続テレビ小説はほとんど見ないが、昨年の「なつぞら」は珍しく観た。今回、そのロケ地に来ることができ、感激もひとしおなのである。
とりあえず情報センターに行き、「持ち時間」を告げる。係の人は、帯広市役所からの眺めと、その近くのNHK帯広放送局を推してくれた。いずれも料金がほとんどかからず、私にピッタリだ。
まず、隣接している「なつぞら展」に行く。スペース的にはこぢんまりとしているが、ポスター各種とグッズ、出演者の等身大パネルと色紙、絵画などのセットが絶妙な配置で置かれていた。
私はグッズ売り場で、姪あてに、「キャンパストートバッグ」(2,420円)を購入した。甥あてに何も買わなかったのはアレだが、まあいい。
帯広市役所へは徒歩15分とのことだった。駅前に出ると、レストラン「ふじもり」があった。渡部女流三段も御用達?の店で、私も何度か入ったことがある。聖地巡礼の意味も含め、午後はここで食事を摂りたいと思う。
市役所への途中に、怪しい道路が何本かあった。ここ帯広は鉄道の要衝地で、かつては広尾線のほかに士幌線も分岐していたが、いずれも1987年に廃止された。渡部女流三段生誕の6年前である。
市役所側は士幌線にあたり、私の視界にある道路のいずれかが旧線路なのだが、識別の決め手がない。
NHK放送局に入ると、1階の一隅に「なつぞら」コーナーがあった。係の人に断り、見学させてもらう。
まず目を惹くのが、壁一面に張られたイラストだ。脚本は1週間ごとに分けられているが、その表紙には毎回違うイラストが使われていた。これはその原画である。表紙は文字だけでもいいわけで、こういう密かなオシャレが私は好きだ。
小道具類も充実していた。北勝日日新聞やコンサートチケット、大学入学許可書などの小道具が、本物?そっくりに造られていた。このリアリティがドラマの質を高めるのだ。
私は大いに満足し、市役所に向かう。ここの11階がスカイレストランになっており、そこからの眺めが絶景なのだ。
私はコーヒーを頼み、窓際に座る。壁から楕円形のテーブルが付き出ている形で、自然な姿勢で窓外を眺められる。いま、彼方には十勝連峰が見える。右のカップルはいい雰囲気だ。
左手には根室本線の線路が高架で走っている。帯広駅が高架化されたのは1996年だが、その前年だったか、駅構内店舗でバーゲンセールがあり、私は3,000円の財布を買ったものだ。
「ここよろしいでしょうか」
と、ほかにもテーブルがあるのに、オッサンが私の席に来たので、私は追い出されるようにレストランを出た。
帯広バスターミナルに戻り、新設なった案内所の窓口に行ってみる。
「幸福に行きたいんですが、ここであらかじめチケットを買ったほうがいいですか」
「幸福ですか。ええ、ここで買えますよ。帯広からは片道ですか? ここへ戻られます?」
窓口嬢は「こ」にアクセントをつけて私に問う。私が戻ってくる旨を告げると、「1日乗車券」を勧めてくれた。
その「おびひろ1day乗放きっぷ」は、900円だった。ここから愛国駅前まで480円、幸福駅前まで620円だから、愛国―幸福間の料金も含めると、かなり割安になっている。こ…こんな便利なチケット、いつからあったのだ!?
私が朝のバスに乗り遅れなかったらふつうにバス料金を払っていたわけで、これは、運がよかったというべきなのか。
11時20分、私は広尾行きの十勝バスに乗った。
(つづく)