一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

激突! 奨励会三段VSタイトル8期

2020-05-18 00:33:27 | 女流棋戦
第13期マイナビ女子オープンの挑戦者に加藤桃子女流三段が決まった時、私はオッと思った。
現女王は西山朋佳女流三冠(奨励会三段)だが、最強の挑戦者は里見香奈女流四冠だろう。しかし両者のタイトル戦は西山女流三冠の3勝0敗。若干勝負づけが済んだ雰囲気がある。
それより元奨励会初段ながら、女王4期、女流王座4期の実績がある加藤女流三段のほうが、奪取の期待値が大きい気がしたからだ。
事実、西山女王と加藤女流三段のタイトル戦は過去2回あったが1勝1敗で、ことに第4期女流王座戦では、加藤女王が西山奨励会二段を3タテで降し、新女流王座に就いていた。

今五番勝負は、対局者がともに東京在住なので、辛うじてタイトル戦ができる。その第1局は、加藤女流三段が西山女王の後手三間飛車を撃破し、俄然面白くなった。
第2局は西山女王が返し、天王山の第3局が11日(月)に行われたというわけである。
西山女王は再び三間飛車を採る。対して加藤女流三段の作戦が注目されたが、▲6八玉型のまま▲4六歩とし、▲4五歩と突っかけた。超急戦、早くも13手目の仕掛けである。
これに大山康晴十五世名人だったら警戒して△4三銀だが、突かれた歩を取れないようではオンナではないと、西山女王は△4五同歩と取った。
しかし▲3三角成△同銀に▲6五角が好点だ。△7四歩に▲3二角成△同金▲4一飛と下ろし、アマ同士なら早くも先手必勝である。いやいや、この手順で先手が勝てるならラクだ。なぜいままで、誰も指さなかったの?(13手目▲4五歩の実戦例はある)
以下も加藤女流三段は早指しで飛ばす。西山女王は△9九角成としわずかに駒得となったが、この将棋のキモは、加藤女流三段の研究量にある。形勢がいい勝負でも、加藤女流三段が織り込み済だったら、それはすなわち加藤女流三段の優勢を意味する。
加藤女流三段は▲8八銀△8九馬▲7九金△9八馬と、相手の馬の位置を中途半端にしてから、▲5四金と押し付けた。
これがプロの手で、私なら▲9九金と馬を殺して大喜びしているところ。プロが屈辱を感じるのは、駒損に陥ることではないと思う。遊び駒があるのに、それをどうにもできないときだと思う。いわゆる「駒が泣いている」というやつだ。
立会いの飯野健二八段は「後手は駒得のはずなのに駒損ですよね」と言ったが、それは△9八馬を指す。
西山女王は△8四桂と控え、つぎの△7六桂で脅したが、加藤女流三段は冷静に▲8五竜。
何と、ここで西山女王が投了してしまった。総手数65手、終了時刻13時57分は、どちらも記録級だろう。
西山女王とすれば、序盤早々仕掛けられ、終始つまらない進行だった。私の常套句を使えば、「バカバカしくてやってられっか」というところ。もうこれ以上、加藤さんに楽しい時間を過ごさせない。それで早投げをしたというわけだ。
そして私は同時に、西山女王の「自信」も垣間見たのである。すなわち、「残りの2局を勝てばいいんでしょう」と。
三段リーグが休止されている今、西山女王は本タイトル戦に集中できる。今日第4局の戦いが楽しみである。
コメント (4)
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