一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

2020年冬・哀切の北海道旅行(10)

2020-05-10 00:17:06 | 旅行記・北海道編
十勝イエローのバスには、数人の客が乗った。
バスは、住宅街を通ることもあった。大型スーパーの前も通ったが、それが乗客増に結びつく、というわけでもないようだ。
定刻を3分遅れの11時59分、愛国で下車した。同好の士は私のほかにもうひとりいた。
愛国駅はバス停のすぐ近くである。駅舎はもちろん健在で、国鉄時代のデザインとは思えぬ洗練されたものだ。いまもかわいらしく佇んでいた。
いままで愛国(と幸福)を訪れたのは、2回はある。その時撮った、愛国と幸福の写真が北海道時刻表の写真コーナーに掲載されたこともあり、私にはひときわ思い出深い場所である。
ちょっと引き返し、郵便局で貯金をする。今日は平日である。
「愛国簡易郵便局」210円。
愛国駅舎の周辺には、いろいろなモニュメントが設置されていた。案内板もある。愛国という名前は、ここに入植した愛国青年団から来ているらしい。
ホームにはSLが留め置かれているが、冬なのでブルーシートがかかっていた。
そして反対側を観れば、線路があったと思しき上に、一軒家が建っていた。これもよくある廃線跡の活用で、こうなったら永久に、路線の復活はない。
さっきの観光客とは、何となく距離を置いて観光している。お互い写真を撮り合うのも気持ちが悪い。
駅舎内は簡易資料館になっていた。当時の列車ダイヤが掲げられているが、1日に上下6本しかない。およそ観光用とはいえず、現役当時に愛国駅と幸福駅を行き来するのは難儀だったと思われる。









あたりには食堂の類はないので、もうやることがない。駅前の土産物屋は開店休業だ。
次のバスは12時56分である。これは早いほうで、さっきの時刻表では、下り08時20分着の次は、14時52分発だった。
広尾行きのバスに乗る。さっきの男性ももちろん乗った。
さて十勝バスの愛国―幸福間はちょっとした鬼門で、旅行者の足元を見ているのか、この区間のみバス料金が跳ね上がる。私はその料金を払うのが嫌で、2度目に来たときは、愛国―幸福間を歩いていった。途中の大正駅は整備中で、どこかの工場の敷地になっていたものだ。いまはどうなっているだろう。
今回は1日乗車券を携行しているので、料金は関係ない。13時11分、幸福下車。もちろん男性も降りた。さっき、車内から気動車が2両見えたが、幸福駅までは若干距離がある。
幸福駅のエリアに入る手前に郵便局があったので、また貯金をした。
「幸福簡易郵便局」210円。
旅行貯金は原則、1日1回だが、旅行貯金規則第4項に「セットとみなすものはこの限りではない」とある。今回の場合、愛国と幸福はセットなので、2回貯金してもいいのだ。
幸福駅も、以前と同じ佇まいだった。こちらは愛国駅より観光客が多かった。そしてこちらも、ハートのモニュメントが新設されていた。かなり空しいのだが、幸福の鐘を撞いた。
幸福駅舎も以前と変わらないが、微妙に雰囲気が違った。以前は定期券や名刺など、来駅証明がバラエティに富んでいたが、いまはほぼ同じデザインに見える。近寄ってみると切符仕様で、この近辺で配られているか売られているのだろう。
ちなみにここは、幸震(こうしん)という場所に、福井県の住民が入植したから「幸福」となった。十勝バスの女性が「こ」にアクセントを付けていたのはそのためである。
幸福駅ホームは板張りである。その前身は仮乗降場だったから、その名残りである。
平日なので、気動車には中に入ることができた。そしてその床が木製だったので驚いた。このキハ22は、廃止当時でも塩化ビニル樹脂が使用されていると思っていた。
私は当時に思いを馳せる。私が初めて北海道を私的に旅行したのは1986年だから、広尾線の現役時代に間に合っていたが、当時は鉄道に興味はなかったので、わざわざ乗りに行かなかった。我が半生を顧みて、指し直したい局面は山ほどある。











土産物屋で、「愛国から幸福ゆき」の切符を買う。キーホルダーのないノーマルのものだと220円で、それにした。
その近くに喫茶店があったが、私はその場を辞す。ここから少し戻ったところに、幸福神社があるからだ。
10分ほど戻り着いたが、小さな鳥居と祠があるだけの簡素なもので、拍子抜けした。
また幸福駅に戻るわけにもいかないので、そのまま帯広方面に歩く。広い国道には、時折トラックが走るのみである。どうして私の旅行は、歩きが多くなってしまうのだろう。
どうせなら大正駅の現状も確認したいが、次のバスのほうが早く着きそうで、その時間がない。
以前歩いた時はそんなに距離がなかったと思うが、以前は廃線路の上を歩いていたから、最短距離だったのだ。



15時10分、私は大正22号から乗車し、帯広バスターミナルには16時ちょうどに着いた。
遅くなったが、昼食とする。私は「ふじもり」に戻った。ここは安くてボリュームがあるイメージである。どれを頼むか迷ったが、焼肉定食(935円)にした。
すると、食前にソーダ水が出てきた。店のサービスである。ギンギンの緑色が庶民的でよい。
焼肉定食はワンプレートで、茶碗蒸しが付いていた。焼肉は脂が乗り柔らかく、美味かった。
次に向かうべきは釧路だ。今後の行程としては、釧路から網走に上がり、旭川まで出て、札幌まで一周するというものである。これでフリーきっぷの元は取れるのではないか。
私は、帯広発16時59分の特急スーパーおおぞら7号に乗った。なお3月14日のダイヤ改正から、列車名から「スーパー」の名称が外れる。これは「北斗」「とかち」も同様である。旧型車両との差別化が薄れてきたからだという。
落ち着いたので、私は今宵の宿を検索する。いまさらだが、便利な世の中になったものだ。
天然温泉ホテルパコ釧路に空室があったので、これにする。シングル4,000円だが500円のクーポン券が使えて、3,500円になった。もはやカプセルホテル価格で、あまりの安さに感謝しかない。
18時39分、釧路着。あたりは夜の帳が下りていたが、まだ観光はできる。私は幣舞橋に向かった。
(つづく)
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