一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

2020年冬・哀切の北海道旅行(15)

2020-05-15 00:07:55 | 旅行記・北海道編
私は憮然たる面持ちで立ち尽くした。
バス待合室の前には、時刻表付きの標識が立っていた。以前は庇の外にあったから雪で埋もれ、本来の機能を果たしていなかったから、この位置でよい。
見ると、次の幌加内(深川)行きは14時36分で、まだ3時間もあった。ちなみに名寄行きは13時14分だが、名寄に戻ったら、もう東京に帰れない。
隣の物産館は冬季休業のはずだが、ルオントの代替で営業していた。中では「玄蕎麦処○(まる)」も営業中だった。ちなみにルオント内の蕎麦屋は「そばの里」である。私は「○」に入店し、
「いやー、ルオントが工事中だとは思いませんでした」
と、店主にこぼした。もはや自虐ネタにするしかない。
私はせいろそば(750円)を注文した。店内には「おそばの食べ方」のプレートが掲げられており、
「わさびとねぎはつゆの中に入れず、そばにつけてお召し上がり下さい」
とあった。これは私も知っていて、わさびは実行している。ただ、ねぎまでとなるといかにも通ぶっているようで、控えていた。
だが今回は店の勧めなので、出されたせいろの上に、ねぎを振った。
一口すすると、これがうまい! わざびはもちろん、ねぎの香りが直接ふわっときて、口中で三位一体となる。いままで私は何というつまらない食べ方をしていたのだろう。
店を出て、私は第三雨竜川橋梁に向かう。今年は雪が少なく、道路のコンクリートが見えている部分もある。
橋梁は今年も健在だった。JR深名線最大の遺構で、維持費は年間900万円かかるが、2009年に土木遺産に選定されたので、もう撤去されることはない。
第三雨竜橋梁も、今年は雪をあまりかぶっていなかった。いつも、あのふもとに行ってみたいと思う。今度は夏に来たいものだ。





バス待合室に戻るが、もうやることがない。ルオントのパンフレットを見ると、「水曜定休」とあった。今日は水曜日で、私は「あんぐり」である。つまり、仮に工事をやっていなくても、私は今日、温泉に入れなかったということだ。将棋で負けたが、その前に二歩をしていたようなもので、完敗である。
室内にはBGMが流れ、ゆったりした時間ともいえるが、それにしても持て余す。といってほかに行くところもないし、下手に動かないほうがいい。
私は再び暗い将来を思い、頭を抱えるのであった。
やっと、14時36分のバスに乗った。このバスが私にとっての「最終」である。先客はなく、また私の貸切となった。
幌加内バスターミナル着14時58分。ここで15分の待ち合わせである。今日は平日だから、交流プラザ2階の深名線資料室が開いているが、私は運転手さんに断り、1階の蕎麦屋に入った。ここ何年かは閉まっていたので、意外に久しぶりだ。
屋号は「雪月花」だったが、以前は「せい一」と名乗っていなかったか?
入店して、もりそば(800円)を頼む。テーブルには注意書きがあって、夏期間は大もりを提供していないらしい。少しでも多くの客に楽しんでもらうためだ。だが客もウワテで、もりを2枚頼む手合いがいるという。
「外国産でいいなら、この値段の3分の1で食べ放題をやっても、ウチは儲かります」と続く。それだけ国産の蕎麦粉は貴重(高い)らしい。
屋号が変わったから経営者も変わったのだろうが、なかなか面白い。だが、外国産を使っているであろう小諸そばだって、うまい蕎麦を食わせてくれる。要は値段に見合った蕎麦を提供してくれればいい。
もりそばが出された。私は蕎麦の上にねぎを乗せる。もりそばは香り高く、美味かった。
バス発車の時間である。運転手さんに以前のバス車両を聞くと、3台残っているとのことだった。だが、すべて中型車だろう。
深川近辺になり、じいさんがひとり乗ってきた。16時30分、終点深川着。
しかし、この過疎っぷりはどうすんだ。もう、バスが廃止されても知らんぞ。
次の列車は16時49分の特急ライラック34号である。その次は17時19分のライラック36号で、それだと新千歳空港着が19時12分となり、時間的にアウトだ。
ここまで冬の北海道旅行を堪能したが、ひとつ心残りがある。寿司だ。これを食べられなかった。
だが、たしか深川駅の近くにコープがあった。甚だ味気ないが、そこでパックの寿司を買おうと思う。
私は念のため近くの奥さんに場所を聞き、コープに向かった。もはや時間との戦いだから、雪道を駆け足である。だが、以前とは場所が微妙に違う気がする。
果たしてコープは場所が変わり?真新しくなっていた。寿司売り場にはにぎりが数種あり、最も高額なのは税込1,078円だったが、200円引きのシールが貼られていた。ありがたいことで、これを買うことにする。
レジで醤油を所望すると、お姉さんが寿司売り場に跳んでいき、醤油としょうがの袋を持って来てくれた。メガネをかけたお姉さん、素晴らしい!
私は最後の最後で、ほっこりといい思い出ができた。
駅に戻り、迷ったのだが、280mlの、ホット「伊右衛門」を買った(130円)。寿司にはお茶で、雰囲気を出したい。
ライラック34号には間に合った。車内は意外に混んでいたが、6号車の奥に空席を見つけた。ここが私の食事処となる。
ネタは、カズノコ、生北寄貝、イクラ、カニ、ブリ?、ヒラメ?、サーモン、カンパチ、エビの9貫。北海道最初で最後の寿司は、実に美味かった。
札幌で快速エアポート180号に乗り換え、新千歳空港には18時42分に着いた。
6日間の旅も最終ミッションとなる。私は各店舗を巡る。いつもはANA FESTAで購入し割引が利いたが、今回はANAカードを忘れてきたので、それがない。マイルも付かない。まったく、あれは罪の思い忘れ物だった。
私は「三方六」(680円)を買った。渡部愛女流三段もオススメのスイーツで、自分用のお土産である。
また来年もこの地に来られればうれしいが、その時私はどういう肩書になっているのだろう。想像するのも恐ろしい。
(おわり)

おまけ。羽田空港に着いたが、京急が品川まで300円だったので、こちらに乗った。だが品川から自宅最寄り駅までは、浜松町以遠なので料金が上がり、行きに金券ショップで買った回数券は使えなかった。
その回数券のことをすっかり忘れ、この4月5日に、その有効期限が切れてしまった。
私はこのパターンがよくあり、得するつもりで損をする。私の人生みたいである。
コメント
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