一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

沖縄旅行5

2012-08-21 20:12:20 | 旅行記・沖縄編
貼られていたポスターに「お待たせしました!!」の文字があり、「アイランドホッピングキップ」なるものが売られていた。今年の4月に新発売したものだ。八重山観光フェリーの「かりゆし周遊券」に対抗したものらしいだが、よく見ると微妙に違うところがあった。
八重山観光フェリーのそれは4日間で5,000円だが、安栄観光のそれは3日間用4,500円、4日間用5,000円、5日間用6,000円と、3段階に分かれていた。
私は13日から15日までの3日間しか使わないので、それなら安栄観光の3日券のほうが安くてよい。しかも安栄観光なら、先ほど石垣空港でもらったカードを使えば、バス代の200円がキャッシュバックされるのだ。
…いや、でも肝心の船の時刻が、運航会社によってまちまちのはず。例えば鳩間行きの高速船は、安栄観光でも都合のいい時間に出ているのだろうか。
…と思って調べると、何と、両社の船は、相互利用可能になっていた。つまり八重山観光フェリーのチケットでも、安栄観光の高速船に乗れるということだ。
うああっ…!! こ、これは、安栄観光の企画切符を買った方が、700円もトクだったのだ!
久しぶりに…本当に久しぶりに、めまいがした。これは沖縄の暑さのせいではない。自分のアホさ加減に、自己嫌悪に陥ったのだ。
気を取り直して、黒島行きの高速船に乗る。13時・石垣発、13時25分・黒島着。八重山に来ると黒島は必ず訪れているが、今年は待合室が増築されていたのでビックリした。今年の5月に完成したらしい。鳩間島、竹富島と、ここのところ離島の待合室は増築ラッシュだ。よほど潤っているのだろう。
港からはレンタサイクルを利用する。以前は港の反対側にある仲本海岸まで、連絡バスが出ていたのだが、廃止になった。バスのワゴン車は維持費がかかるうえ、徴収できる金額が限られている。運転手も付けなければならないし、意外と経費がかかるのだ。
その代わりに幅を利かせているのがレンタサイクルなのだ。1時間200円からで、1日借りると1,000円。私に言わせると、やや高めの設定である。
これは、人件費が安く抑えられる、維持費がほとんどかからない、客単価が高くなる、初期投資が安いなど、いいことづくめなのだ。
私も海岸の往復は歩きたかったのだが、島内の時間がもったいないので、レンタサイクルを利用せざるを得なかった。前払いで、4時間分の料金800円を払う。早くもこれで、連絡バスの料金を上回ってしまった。
黒島ビジターセンター近くにあるプズマリ(火番盛)に行く。この小山を登ると、海岸が見渡せる。書き遅れたが、今回私はビデオカメラを携行している。この風景をビデオに収めようと構えたら、プズマリは崩落の危険があるとかで、登はん禁止になっていた。旅行に誤算はつきものだが、今回も計算違いの出来事が多い。
仲本海岸に行く。ここは簡易シャワーがあったが、のちに立派なシャワー施設に建て替えられた。それでいて使用は無料である。近くに東屋があるのもよい。こういう海岸は実にありがたい。
仲本海岸は、潮が引くとリーフ(サンゴの防波堤)が顔を出し、その上を歩くのが愉快だ。しかし海岸はこれから満ちてくるようだ。いささか興趣が殺がれるが、贅沢はいえない。
私はさっそく海に入る。ここの魚はやや獰猛で、以前足の指の爪を食いちぎられたことがある。それ以来ビーチサンダルはクロックスを使用している。
海に浮いては浜に戻る、を繰り返すが、気がついたらほとんどの海水浴客が消えていた。やはり潮が満ちていて、あまり面白味がないのだろう。
私も4時少し前に上がり、シャワーを浴びて着替える。黒島ビジターセンターに寄って、黒島の歴史のお勉強。センターを出ると、近くにある軽食喫茶「パームツリー」に向かった。
ここは本土の人の経営で、もう開店して10年以上になる。当時、黒島にはこれといった店がなく、そこにシャレた喫茶店ができたときは、砂漠でオアシスを見つけたかの如くだった。
ここ数年は店の存在が認知されて、満員で入れない年もあったが、今年は無事入れた。
ここではケーキセット(アイスコーヒーとマンゴーケーキ)を注文する。きょうは昼食を摂っていないので、これが昼食代わりである。
アイスコーヒーを飲んで一息ついていると、モデル級の美女がふたり入ってきた。うちひとりはモデルの仁科仁美そっくり。まさか同一人物ということはあるまいが、どうしてこんな美人が、沖縄本島から430キロ離れた石垣島の、そこからさらに高速船で25分ほどいった離島に訪れたのか分からぬ。まあ、それだけ黒島が魅力的なのだろう。
このまま港へ戻ってもいいが、時刻はまだ4時半。自転車は5時半まで借りているから、ここで戻るわけにはいかない。
黒島小中学校の近くにある展望台に向かう。途中、道を間違えて砂利道に入ってしまった。ガタガタ走っていたら、後ろのタイヤが緩くなってきた。パンクしたのだろうか。マズイ…。
牧草地にクジャクが見える。たしか黒島は、クジャクが異常繁殖しているのだ。島民は、何か手を打っているのだろうか。
黒島展望台に登る。今度はビデオを回した。展望台からは、360度、牧草地が見える。ここ黒島は、人より牛のほうが多いといわれているが、さもありなん、だ。
5時すぎに自転車を返した。今回はタイヤをパンクさせたことをカミングアウトしたが、バイトのおねーちゃんは許してくれた。ありがたいことである。
港の待合室で小1時間ばかりボーッとしたあと、18時の高速船で石垣に戻った。
さて、夕食である。旧あやぱにモールの先、ゆいロードを越えた住宅街の一隅にある「パピヨン」に入った。
ここもなんてことのない軽食喫茶だが、毎年訪れている。無事にこの店に来られること。それはすなわち、1年間を大過なく過ごせたことの証なのだ。
かつ丼セット(アイスティー付き)を美味しく食べて、次は近くにある「プラゼール」へ向かう。ここもふつうの喫茶店だが、アイスコーヒーの氷にコーヒーが使われていて、氷が解けても味が損なわれない工夫がされている。私はそれに感激して、毎年訪れているのである。
女優の中原早苗に似た、「プラゼール」のママさんは健在だった。いつもどおりアイスコーヒーを頼む。
配送屋が来て、そのオニイサンに、ママさんがマンゴーを食べさせていた。
「もらいものだけど」
と言って、ママさんが私にもくれる。こぶりなマンゴーが4分の1ほど切られている。これをフルーツ店で買ったら数百円になるだろう。ママさんも私の顔を覚えていての、サービスである。
そういえば、宮古島ユースホステルのきょうの朝食でも、マンゴーが出ていた。あれも特別サービスだったのかもしれない。
ママさんと世間話を楽しみ、店を出る。引き続きA&Wに寄ろうと思ったが、きょうは宿泊地の「アイランド@Ishigaki」に向かう。なんと、八重山諸島では初のビジネスホテル宿泊である。
石垣島に来たならドミトリーの安宿に泊まればいいのだが、ここ「アイランド-」は室内にPCが備えられているので、ここに決めた。もちろん、ブログを書くためである。旅行のときぐらいブログはやめればいいのに、何の因果かと思う。
新川にある同ホテルは、ネットカフェの2階にあった。実は何度かその前を通ったことがあり、道に迷うことはなかった。
女優の小田茜にそっくりで、矢内理絵子女流四段の雰囲気も持つ女店員さんからキーを受け取り、2階に上がって、部屋を開けた。こ、これは…!!
(つづく)
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沖縄旅行4

2012-08-20 19:33:05 | 旅行記・沖縄編
そのテレンス・リー似の彼が言うには、来間島の手前にある前浜ビーチで泳いでいたところ、カバンごと盗難にあったらしい。そのカバンが、元に置いてあった砂浜から数百メートル離れたところに放り出されていて、中身もバラまかれていた。その中にあったケータイやデジカメは無事だったという。しかし財布はダメ。現金2万円余を盗まれたらしい。
怪しいのは、ここにカバンがある、と彼に教えてくれた男性で、砂浜に落ちていながら、ケータイやデジカメに砂粒が付いていないのは不自然だからだと彼は言った。
それでなぜその男性が怪しいのか分からぬが、話を聞いていると、たしかにその男性が怪しそうではある。しかし男性に嫌疑を掛けるわけにはいかない。彼もいまいましく思いつつも、その場は追及せず収めたという。
吉野海岸のように、ちゃんとした休憩所があるところはいい。何もないところにカバンを置いて、ひとり泳いだのがいけなかった、と彼は悔やんだ。
そんな感じで、彼は身振り手振りを交えて話す。彼は日本語のイントネーションが少しおかしく、日本語が堪能な東洋人というふうだ。それはとにかく、彼は財布を盗まれたことが悔しくて悔しくて、誰かに話したくて仕方がないというふうだった。私だって、何もないような浜辺でひとり泳ぐことがあるから、他人事(ひとごと)ではない。
彼は相変わらず熱弁をふるっているが、双方の座席位置の関係から、私の方が首を大きく曲げて聞いているので、少々つらい体勢である。しかし彼を無碍にするわけにもいかない。
彼の沖縄旅行の話になる。彼も離島が好きで沖縄に何度も訪れているが、どうも私のほうが沖縄に詳しそうだ。
例えば先ほどでも、彼は吉野で、上りのバス停で待っていたが、これは誤り。平良行きのバスは、ひとつ先の保良まで行って引き返すから、下りのバス停で待つのが正しいのだ。彼も沖縄では路線バスを愛用しているらしいが、私に言わせればまだまだ甘い。
しかしそんなことを言っては彼のプライドが傷付くから、私は聞き役に徹する。
17時16分、私は一足先に下地鮮魚店前で降りた。バスからの景色を楽しめなかったのはアレだが、まあこれはこれで、貴重な時間だった。
私はきのうと同様、「ブルーメ」に向かう。しかしやはり、店のシャッターは下りている。この店はもうダメだ。
スーパー「かねひで」に寄る。さんぴん茶の補充である。那覇サンエーでは「湧川さんぴん茶」、宮古島サンエーでは「茶流彩彩」を買ったので、ここでは「ハイサイさんぴん茶」を買う。100円は涙が出そうな安さだった。このほかにスポーツドリンク(2リットル)も買おうと思ったが、さすがに重たくなるのでやめた。
宮古島ユースホステルに戻ってシャワーを浴び、夕食に出る。きょうはラーメンチェーン店の「とん太」に入った。ここは15年近く前にも入り、何かの抽選券をもらったので応募したら、シンガポール3泊4日の旅が当たってしまった。といっても有料(4万円)で、いまから考えれば旅行会社とのタイアップ企画に騙された気がするのだが、まあそれは別の話。
店の表に「オリオンビアフェスト」のポスターが貼ってあったので見ると、今回のイベントは台風の影響で延期になり、きのう11日に行われたものらしい。道理でいままで私が知らなかったわけだ。
宮古島アイドル・ヒガリノは出演していなかったが、Minamiというアイドルが出ていた。どこかで聞いた名だ。
「もりもりセット」は、とん太めん、餃子3個、ミニ麻婆豆腐丼で700円とおトク。味もよかった。ただ、麺はゆですぎ。あれでは麺のコシがなくなってしまっている。
店を出て、またネットカフェに寄り一休み。一応ブログも書くが、いまひとつ気分が乗らない。書いては消し、書いては消しの繰り返しで、ほとんど進まなかった。
宮古島ユースに戻る。今夜も談話室には人影なし。
あすは11時25分発のRAC(琉球エアーコミューター)で石垣島へ行く。ちょっと遅いが、これより早い石垣行きはない。私は自室に戻り、スマホで離島行きの高速船を調べた。八重山観光フェリーはネット予約だと5%引きと書いてある。では去年はいくらだったかと旅行日誌の「家計簿」を見てみると、その記載がない。…そうだ、去年は「かりゆし周遊券」なるものが発売されていて、私はそれを買ったのだ。
この周遊券はほとんどの離島へ行くことができ、たった5,000円で4日間有効というスグレモノ。まったく、私のために作られたような企画切符である。つまりこの周遊券があるから、各島への料金は記していなかったのだ。
今年は、鳩間島、黒島、竹富島に行く予定である。石垣島を起点にして3往復するわけで、かりゆし周遊券の存在は貴重だ。今年もこの切符は売られているだろうか。

13日(月)は午前7時45分に起きた。さっそく朝食。最近私は神経をやられているのか、一日中吐き気を催している。朝食もふだんは牛乳1杯のみなのだが、旅に出ると、ふつうに朝食が摂れるのだ。
家族は1組に減っていた。個人のホステラーはきのうに続いて青年ひとりのみ。若い女性の宿泊を期待していたのだが、宮古島では叶わなかった。
ペアレントさんに別れを告げて、宮古島ユースを出発する。まず宮古郵便局に寄り、旅行貯金。813円。壱万円札と13円を出したら、お釣りの中に二千円札が2枚あった。ここは沖縄。二千円札の流通に積極的なのだ。
さてタクシーの利用を厭わない人なら、繁華街に繰り出して時間を潰すのだろうが、どうもタクシー利用は抵抗感がある。私はそのまま宮古空港まで歩いて行く。
きょうも空は快晴。古本屋や空港近くのパン屋台寄っていたら、けっこう時間が潰れてしまった。ビッショリ汗をかいて、宮古空港着。
石垣行きのRAC831便はプロペラ機で、私の席は「2K」。これで3回連続、非常口の隣だ。そしてシートは、2人掛け×2の極セマだった。
スッチーが真近にいるが、近すぎて緊張してしまった。
石垣空港に着くと、「新石垣空港、平成25年3月7日開港!!」の横断幕が張られていた。ついに新石垣空港開港か!! 新空港を造るにあたっては賛否両論だったが、こうした計画は推進されるようになっている。
私が石垣空港に初めて降りたのは1995年だが、当時は空港近くの道路は、まだ土がむきだしだった。連絡バスもなかった。
いまは道路も立派に舗装され、連絡バスもバンバン出ている。空港ひとつ取っても、思い出は尽きない。
連絡バスの乗り場付近で、女性がカードを配っている。高速船を運航している安栄観光で、高速船窓口でこのカードを提出すれば、このバス代200円を負担してくれるという。
ありがたいが、私は八重山観光フェリーを利用する予定である。
12時29分、石垣バスターミナル着。昨年はここからのんびりと昼食を摂ったため、あとの高速船がなく、離島観光の予定が狂ってしまった。今年はまっすぐ、石垣港に向かう。八重山観光フェリーの窓口では、今年も「かりゆし周遊券」が売られていた。しかし、安栄観光のほうはどうなのだろう。八重山観光フェリーが格安の切符を出しているいま、安栄観光だって、対抗策を打ち出さねばならないだろう。
私はあす、9時30分の高速船で鳩間島に行くことになっている。この運航は八重山観光フェリーである。私はそのまま、「かりゆし周遊券」を購入した。
しかし、安栄観光のほうが気になる。私はそちらの窓口にも行ってみた。すると、驚くべき企画切符が売られていた。
(つづく)
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沖縄旅行3

2012-08-19 02:04:01 | 旅行記・沖縄編
街並みの間から花火を眺める。何かイベントでもあったのだろうか。
花火は数分で終わり、私はユースホステルに戻った。フロント近くの談話室には誰もいない。ユースホステルは原則相部屋だが、宮古島ユースのそれは個室である。他者に気を遣わなくていいから、みんな部屋から出てこない。しかもきょうは家族の宿泊が多いらしい。
私も部屋にこもってのんびり過ごした。といってもひとりになると、考えることは後ろ向きのことばかりだ。午前1時すぎに就寝した。
翌12日(土)は7時半に起床した。食堂には一番乗り。以前はペアレントさんとおしゃべりをしながら朝食をいただくのが最高の贅沢だったが、数年前に宮古島ユースはここの食堂を改装し、本当に食堂の経営を始めた。結果、オシャレな雰囲気が損なわれ、朝食の醍醐味が少し薄れた。
多いと聞いていた家族の宿泊は4組。これは盛況で、めでたい。
ペアレントさんが言うには、昨夜は「オリオンビアフェスト」なるものがあったらしい。宮古島出身のミュージシャンやアイドルが登場しての恒例の祭りだそうだが、そんなものがあるとは知らなかった。昨夜の花火は、その企画だったのだ。私はタイミングよくネットカフェを出たようだ。
宮古島のアイドルといえばヒガリノが有名だが、彼女は出演したのだろうか。しかしいずれにしても、時すでに遅しだ。イベントはもう、終わってしまった。
きょうは新城海岸に行く。吉野海岸に近く、バス停でいえば吉野のひとつ手前である。方角がまるで同じというのは工夫がないが、宮古島をいろいろ回った結果、このふたつの海水浴場が私のメガネにかなったのだからしょうがない。
新城へは9時20分平良発のバスがあるが、そんなに急ぐこともない。私は宿を出ると、またも港近くの繁華街に出向き、沖縄御用達のファーストフード「A&W」に入った。ここのルートビアを飲むのも、私の定跡である。
クスリ味のルートビアを楽しみ、近くの市立図書館に向かう。ここで時間をつぶすのも定跡。しかしその図書館が更地になり、駐車場になっていたので唖然とした。
スマホで現状を調べると、近くの市役所の一隅で開館はしているらしい。図書館に入ると、これは老朽化に伴う建て替えということが分かった。
私は新聞を読む。読むのは将棋の観戦記である。きのうのカプセルホテルでも、数あるスポーツ紙の中から、私はスポーツ報知を選んだ。それは「女流名人位戦」の観戦記が載っているからである。私もけっこう将棋が好きなのだ。
スーパー「サンエー」宮古島店で水分の補充をする。買うのはもちろん、さんぴん茶である。きょうはかやくおにぎりも買っておく。
11時ちょうど、平良発のバスに乗った。乗客は、おじいと私のふたりのみだった。宮古島のバス事業は、マジでヤバイと思う。
定刻の11時30分より4分早く、バスは新城バス停に着いた。料金は470円。鏡原-吉野より明らかに乗車距離は長いから、きのうのバス運賃500円は明らかにおかしい。
新城海岸へは徒歩で30分。吉野海岸より遠いが、道順は新城海岸のほうが簡明である。
海岸には12時すぎに着いた。ここは簡素ながら無料シャワーが2基あり、隣接して簡易脱衣所もある。その裏にはトイレもある。海水浴客にはこれで十分なのだ。
と、海の家の従業員が声を掛けてくる。その女性が澤穂希そっくりだ。
「あれ? 去年もいらっしゃいました?」
彼女が言う。覚えていてくれるのはうれしいが、みんなにそう言っているのではなかろうか。しかし私も彼女には見覚えがある。だが彼女、本当に澤穂希にそっくりだ。というか、本人ではなかろうか。オリンピックの女子サッカーは終わっているし、もうなでしこジャパンも帰国しているだろう。
とすれば、澤穂希がここにいてもおかしくはない。
「休憩所へどうぞ」
と言うと、彼女は仕事に戻った。
ここ新城海岸は、砂浜の左右に無料休憩所があり、向かって左が「わ~ら」、右が「かりゆし屋」の設営となっている。「澤穂希」がいたのはわ~らのワゴンだったから、私は左側で休まなければならないが、そちらは客でいっぱいだ。
私はかりゆし屋の休憩所の一隅に陣取る。テーブルにはかりゆし屋の食事メニューが貼られてあり、利用したからには何かを注文しなければならない雰囲気である。むろん覚悟の上である。
とりあえず海に入る。新城のサンゴは吉野のそれと比べて派手さでは劣るが、男性的で見応えがある。
ひと泳ぎして戻ってくると、また「澤穂希」と会った。わ~らに空席がなかったのでかりゆし屋を利用したと私は謝る。しかし食事はわ~らで摂ってもいいのかと問うと、別にどちらで食べても構わないという。
それで私は彼女に宮古そばを注文した。
しかし運ばれてきた宮古そばに使われていたトレイはわ~ら仕様のもので、周りの客のそれとは違っていた。やっぱりマズイんじゃないだろうか。かりゆし屋の無料休憩所でわ~らのそばを食べるのは、倫理的によくないんじゃないだろうか。
私はかりゆし屋の従業員の動きを気にしながら、宮古そばをすすった。
それを食べ終わるや、私はかりゆし屋のかき氷を、せかされるように頼んだのは言うまでもない。
午後3時20分、浜に上がる。これで宮古島での泳ぎは終わりである。バス停近くの新城公民館の軒下でひと休み。沖縄は暑いが、日陰に入ればだいぶやわらぐ。
16時30分発の平良行きバスに乗る。ほかに乗客はいない。とうとう私ひとりになってしまった。私は前方左側の席にすわる。バスマニアには、ここが特等席だ。
次の吉野で、ひとり旅の男性が乗ってきた。彼は行きの平良営業所で見かけたような気がする。
16時45分、保良着。ここで青年がひとり乗った。乗客3人は今回の旅の新記録だ。
と、先ほどの男性が前方右側の席に座り、私に
「ご旅行ですか」
と聞いてきた。彼は妖しく胸がはだけ、そこから金のネックレスが覗いている。軍事評論家のテレンス・リーのような雰囲気だ。「吉野海岸で泳ぎましたか」
「いえ、きょうは新城海岸で泳ぎましたが」
だって、あなたの乗った吉野の前から私は乗っていたでしょう? と言いたいのを堪えて、私は散文的に答える。すると彼は
「私はきょう、海岸で財布を盗まれました」
と、とんでもないことを口にした。
(つづく)
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沖縄旅行2

2012-08-18 11:08:36 | 旅行記・沖縄編
路上駐車をしたんでしょう、と暗に注意している。彼女は私がバスで来た可能性をまったく考えていない。
バス停から歩いてきたと言うと、怪訝な顔をした彼女は、例によってシャワー施設の使用を求めてきた。
やれやれ、と思う。数年前までは、海岸の近くに簡素なシャワーがあった。しかし宮古島市が中心になって海岸を整備し、海岸の入口に立派なシャワー施設(駐車場、食堂、トイレも含む)を造り、500円を徴収するようになった。
バカヤロ! いままで無料だったのに、何でおカネを払わなくちゃいけないんだ。釈然としない私は、いまだに施設を使わず抵抗しているのである。
シャワーは使わないからと断って、私は海岸へ歩を進める。しかし今度は、オニイサンが運転する送迎ワゴン車に、半強制的に乗せられた。ここから海岸までは、急な坂道を数百メートル下らねばならない。だからシャワー施設を使わなくても、彼らは親切心で乗せてくれるのである。しかし東京者には、その親切が疎ましい。そんなうまい話はないだろうと、ついその先を考えてしまうのだ。
ワゴンを降りて、まずは「吉野のおじさん」に挨拶に行く。吉野のおじさんは、雑木林の掘立小屋にいた。
「やあ、久しぶり」
おじさんは白い歯を見せ、にこやかに笑う。私が吉野海岸に来る理由、それは吉野のおじさんに会うためである。
「おじさんのホームページ見ました。おもしろかった」
「アハハ、どうも。まあ、あんなことをやっとります」
荷物をそこに置きなさい、と言うのを辞退して、私は浜辺に旅行カバンを置き、海に入った。シュノーケルマスクを口にくわえ、波の流れに身を任せてプカプカとたゆたう。カラフルな魚とサンゴ礁。私は沖縄の各地の海水浴場に入ったが、浜辺からサンゴがすぐ観られるという点では、吉野海岸がいちばんだと思う。
小1時間ほど遊泳を楽しんで、またおじさんの元に向かう。
「やっぱり吉野はいい。最高だ」
「今年のサンゴは綺麗でしょう」
「そうですか? 毎年綺麗だと思いますが」
「今年は若いサンゴが育っとります」
「ああ…」
沖縄では数年前から、サンゴの白化現象が問題になっているが、こうして新しいサンゴが育っているのは喜ばしいことである。
都合3時間ほどプカプカして、浜に上がる。帰りの平良行きバスは16時43分が最終である。頑張ればもう少し泳げるが、あまりギリギリまで泳ぐのも味がわるい。
吉野のおじさんに再び挨拶をして海岸を離れ、私は近くの湧水で体を洗った。これが私のシャワーである。衛生的ではないが、構わない。
そこからはまた急な坂道を登らねばならないが、またもシャワー施設のオニイサンから、半ば強引にワゴン車に乗せられた。私はシャワー施設を使ってないし、海パンも濡れているから乗車を断るが、オニイサンは構わないと言う。そこでまたもお言葉に甘えた。これは来年は、シャワー施設を使わないとマズイかな、と思う。それが実戦心理というものである。しかしその前に、来年沖縄に来られるかどうかが問題だ。
吉野公民館に寄る。ここの庭を借り、海パンからズボンに着替え、海パンとTシャツを乾かすのだ。あまりにも貧乏臭くて、もし彼女といっしょだったら、絶対にしない行動ばかりである。
16時33分の平良行きバスに乗る。珍しく、おばちゃんもひとり同乗した。しかし乗客はこの2人だけ。バスを運行している宮古協栄バスはタクシーも運営しているが、バス部門は完全な赤字であろう。
ひとつ先の保良まで行き、そこから折り返す。運転手さんに、下地鮮魚店前で下ろしてください、と告げるが反応がない。行きのバスでもそうだったが、ここの従業員はおしなべて愛想が悪い。もっともこの乗車率ではやむを得ないか。
定刻の17時19分より2分早く、バスは下地鮮魚店前に着いた。行きに乗ったときより乗車距離は長いが、それでもバス料金は500円。行きの500円はやっぱりおかしいと思う。
このバス停で降りたのは、ナナメ向かいにある喫茶店「ブルーメ」に寄ってケーキセットを食したかったからだ。アイスコーヒーのグラスは大ぶりでオシャレで、ブルーベル―ケーキも美味い。しかし店のシャッターは下りている。昨年もそうだったし、もう店を閉めた(廃業)のかもしれない。
その足で宮古島ユースホステルに向かう。ここに連泊することになっている。ペアレントさんが元「ミス宮古」というたいへんな美人で、私は奥さんに会うために宮古島を訪れているのだ。
ユースホステルに入ると、娘さんが応対してくれた。やがて奥さんも出てきて、感激の再会。相変わらず綺麗だ。美人は齢を重ねても美人、を地で行く例である。
部屋に荷物を置き、まだ陽が明るいうちから、シャワーを浴びる。これもけっこうな贅沢である。
シャワーから上がって鏡を見ると、頭頂部がいちだんと薄くなっている。今回の旅行では毛生え薬を携行しているが、とんだことになったものだと思う。
港近くの繁華街まで食事に出る。といっても徒歩で30分ほどかかる。公共交通機関のバスは本数が少なく、期待できない。宮古島では自分の脚が頼りである。
繁華街では「果樹園」という定食屋をひいきにしていたが、数年前から居食屋に変わってしまった。しかもそれから、営業しているのを見たことがない。きょうもその居食屋は休みである。
振り返ると、メガネ屋がある。前日のカプセルホテルで、テレビの角に「つる」をぶつけて、ハナ当てのところが少し曲がった気がする。そこで、この店で直してもらうことにした。
店主は人のよさそうな人で、「ああ…左右のレンズが少しズレてますね」と、チャッチャッと直してくれた。かけてみると、頗るよい。むしろ旅行前よりよくなった感じだ。
手数料を払うと言ったが、店主はガンとして受け取らなかった。宮古島の人は親切なのだ。
ちなみに居食屋の夫婦のことを聞いてみると、「果樹園」とは経営者がまったく別だそう。果樹園のご主人は現在、自動車学校の校長をやっているらしい。これは随分、華麗な転職をしたものだ。もう果樹園の焼肉定食が味わえとは残念だが、諦めるよりない。
食事処「しきしま」に入る。ここは以前も入ったことがある。しきしま定食を頼んだ。早くも1,800円の晩ご飯とは、私も辛抱が足らなくなったものだ。
しきしま定食は、ミニ鰻、みそかつ、お刺身、冷奴、サラダ…と盛りだくさん。大いに満足して、近くのネットカフェに入った。
ドリンクで喉をうるおして、店を出る。と、遠くで打ち上げ花火が上がっていた。
(つづく)
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やられた…!!

2012-08-18 10:08:19 | マッカラン勝負
きのう17日に行われた倉敷藤花戦、中井広恵女流六段と室谷由紀女流初段の一戦は、中井女流六段の勝ち。中井女流六段はこれで同棋戦3連勝。私が提示した条件をクリアし、マッカラン獲得となった。
室谷女流初段、中井女流六段には厳しかったかなあ…。もうこうなったら中井女流六段には、挑戦者まで駆け上がっていただこう。…あ、そうなったらマッカランのグレードアップを要求されちゃいそうだから、中井女流六段には早いところ、マッカランを贈っちゃおう。
中井先生、おめでとうございます。
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