かねやんの亜細亜探訪

さすらうサラリーマンが、亜細亜のこと、ロックのこと、その他いろいろ書いてみたいと思ってますが、どうなることやら。

ロック・クロニクル

2012年03月08日 | Books



昨日ちょっと触れた、歴史と音楽を、並行的に述べた本を読了した。

ロックが、反体制的というイメージはあったが、こんなに命懸けだったという実感はなかった。日本でも、反体制的な歌はあったが、残念ながら、政治に影響を及ぼすまではいかなかった。

ロックは、元々黒人に対する差別撲滅のメッセージをこめた音楽だった。創成期のひとりがリトルリチャードだったが、しばらくの隠遁の後、イギリスでのビートルズのコンサートにジョインしたのが、再起のコンサートだったという。その動きは、引き継がれた。
アメリカでのロックミュージッシャンは、迫害に耐えながらの活動を強いられていた。

ビートルズの最初のUSツアーでは、まだ客席が、黒人と白人と別れていたのだという。信じられない話だが、これをきっかけにビートルズは、公民権運動への支持を表明する。
ジョンレノンの「キリスト発言」も、その流れの中での、事件だった。

その動きが、ベトナム戦争が激化するにつれ、反戦運動につながり、キング牧師がその中心になっていった。当時、反戦的な楽曲は、ことごとく放送禁止になった。今、自由を呼びかけるUSAの50年前の姿がこれである。

昔、シカゴのLPを聴いた時その中にあった1968年のシカゴでの事件も、この流れのど真ん中にある。ニクソン再選に対する民主党大会に集まった運動家を、武力で弾圧したのだ。反戦運動は弾圧された。また弾圧が強まるにつれ、反戦運動は、激化した。今の、発展途上国の姿と、そう遠くない。

公民権運動は徐々に成果をあげるが、その後、反原発、反アパルトヘイトにその矛先を変える。その時にも、その先頭に立ったのは、ロックだった。

その運動のヒーローになったキング牧師も暗殺されたが、その誕生日は、休日になっている。休日になったのは、1986年だったのだという。私が、アメリカに行った時のマルテインルーサーデイは、まだ、休日になって二回目だったのだ。

一方で、プレスリーが、ニクソンと面談し、ビートルズとドラッグの危険性を訴えたり、ECがイギリスでの移民の増加に懸念を表明したりした、意外な事実も明らかにされる。

本書は、ロックを中心にした音楽の、社会に対する影響の大きさを教えてくれる。
ロックが商業化されその傾向は薄れているものの、さまざまなチャリティコンサートなどは、その流れを汲むものだ。
ロックがなければ、まだ人種差別が当たり前の世界が存在したかもしれない。南アのアパルトヘイトも続いていたかもしれない。

著者の広田さんの本は数冊読んだが、読み甲斐がある。いろんな新知識も得られる。
本書は、ちょっと厚くて尻込みするかもしれないが、イベント毎にわかりやすく説明してくれるので、近代のポピュラーミュージックについて、興味のある幅広い層に推薦できる。

当時は、ロックは、ちょっと引いてしまう音楽だったようだ。だってそれだけで、監獄に入れられるかもしれなかったのだから。そんな感覚なしに聴けるのは、ラッキーと言える。

コメント
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