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栃木SCの話14

2015-12-05 00:01:48 | サッカー(Jリーグ(J1・J2)・国内)

 事例紹介コラムです。
 遅くなりましたが、先日今シーズン最下位だった栃木さんのJ3への自動降格が決定しております。地元岡山の同期、昨年の富山さんに続いて2年連続で同期クラブのJ3降格が続いています。2009年のJ2昇格3クラブのうち、2クラブがJ3へ去っていかれました。寂しいですね。今回の栃木さんのJ3降格に至る情報を探してみたところ、2つ出てきました。以下、順番に抜粋して紹介。まずは東京新聞の「栃木SCの7年 J3降格」という特集記事。
   
【フロントの失政】
 J2栃木は11月23日、アウェー札幌戦で完敗し、J3降格が決定。「5年でJ1へ」という目標を大々的に掲げながら成果は上がらず、多くのファンやサポーターの期待を裏切った形。下降線をたどったクラブの方向性は、何が間違っていたのか。県内のプロスポーツを長く取材するフリーライターの小森氏の検証。

 今季のホーム最終戦でのセレモニーで、水沼社長と倉田監督の挨拶の際、スタンドからはJ3降格に行った責任を突くようにブーイングと罵声。今回の降格を引き起こしたのは、間違いなくフロントの失政。監督や選手達に一切の責任がないとは思わないが、フロントが道筋を間違わなければ、降格という最悪のシナリオは避けられたはず。
 今季のJ2栃木は、昨シーズンから指揮していた阪倉監督がシーズン途中で辞任。後任に倉田監督を招いたが、そこからチームは迷走。これには、この7年間でずっと向き合ってこなかった、ある問題が関係していると個人的に推測。それは、J2栃木が目指すべきサッカーのスタイル、哲学を、クラブが明確にしてこなかったこと。
 J2昇格後の松田監督のゾーンディフェンスに代表されるように、その時々で監督が志向するサッカーは存在していたが、クラブが目指しているサッカーとなると、今の今まで明確にはなっていないと実感。どんなスタイルのサッカーで勝利を目指し、観客を魅了し、県民に感動を与えるのかという哲学は、クラブを支える根底。その根底をしっかりと議論しないままJ2を7年間戦ってきたつけが、立ち返る場所を見失い、迷走を止められないことに直結。
 本来であれば、クラブの根底を支える哲学がきちんとあって、それを実現できるであろう監督、選手が集まってチームがつくられるべき。それは、強化部を筆頭とするフロントでなければできない作業なので、その作業を怠った強化部、そしてフロントの責任は大きい。監督や選手が交代しても変わらない根底の哲学。クラブのサッカーとは何なのかを考え、議論し、つくり上げること。J3降格した今、まず始めるべきは、ここから。

【危機感の欠如】
 11月26日、J2栃木の水沼社長と中津会長の辞任、上野GM、湯田強化部長の解任が発表されたが、水沼社長は今後も常勤の取締役として残ることになり、内情は肩書を替えただけの配置転換。退任する倉田監督だけが責任を取り、クラブを去る形に。この決定はファン・サポーター、そして多くの県民感情に背くものと思われ、後任について個人的には県経済界と一定の距離感を保ちながらクラブを運営できる、経営のプロが就任してくれることを希望。Jリーグ入りを目指して動き始めた時から、J2栃木は県経済同友会を筆頭とする財界の手厚い支援を受けており、県経済界のサポートは決して悪いことではなく、むしろ歓迎すべきこと。経済界のサポートなしに、地方都市でプロスポーツクラブを運営することは不可能。
 しかし、J2昇格後のクラブは、その手厚いサポートの上であぐらをかき、県内の大手企業から多額のスポンサードを受けて「金はある」状態になり、最も重視すべきファン・サポーターと真剣に向き合わなくなったとか。クラブがファン・サポーターを軽視してきた結果が、降格が決定するかもしれない今季ホーム最終戦の4,143人という観客数の少なさに象徴。J3降格が決定し、J2時代のスポンサーが離れる可能性も高く、「金がない」状態になった時、変わらずに残るものはファン・サポーターのクラブへの「愛」のみ。愛を持って接してくれるファン・サポーターとともに戦い、成長していこうとする姿勢を見せること。この当たり前のことを、クラブはまず示さなければ共感は得られない。クラブに変革の姿勢が見えない中、今こそ、ファン・サポーターが変革の先導役になるべき。
東京新聞該当ページ:http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/list/201512/CK2015120202000197.html

 当ブログでは何年か前に「栃木スタイル」として、栃木さんの経営構造を「地方クラブの理想の一つ」としてずっと紹介していた時期がありました。それ以降、立派な経営構造なのに、どうして結果に出ないのか不思議でした。今回J3に降格され、その疑問が頂点に達していまし、た。このコラムを読むと、三位一体の支援(市民、財界、行政)のうち、財界が突出してしまい、他の2つが頭打ちになっていたのかなと思いました。よくファン・サポーターよりもスポンサーばかりに目を向けすぎる傾向があると思われるところを見かけますが、似ている状況だなと。栃木さんは、スタジアムが最寄り駅から遠く、人口も多い方ではなく、他のプロスポーツチームと競合し、しかも都市圏に近いために都市圏クラブに一部食われているという不利な環境がありました。今回のJ3降格は、スポンサー偏重に加えて、クラブ経営環境の低さが加わった悲劇だと個人的に思っています。
 ぜひ、元々ある「栃木スタイル」をいい形で活用し、三位一体の支援をバランス良くした形で戦っていただき、1シーズンも早いJ2復帰を当ブログとして希望しております。次は「絶望的状況の栃木SC。『底なし沼』J3降格が意味するものは?」というタイトルのweb Sportivaのコラム。

【web Sportivaのコラム】
 2014年から「育成型クラブ」に切り替えたというが、育成型とはクラブ自前の選手を育てることを指し、若く安い選手を求めることではない。また、今シーズンは成績不振による監督交代後に混乱を大きくし、シーズン中にもかかわらずヘッドコーチが辞任。場当たり的マネジメントはピッチの選手のパフォーマンスに反映。単純な技術的ミスや稚拙な判断が多く、ミスに自信を失ってミスを重ねる状態。監督記者会見でも「次に勝てば、何かが変わる」と、論理的な説明は無し。根拠もなく、楽観的観測にすがっているだけではないのか。

 「J3に落ちる」とは何を意味するのか? J3はJ1、J2と比較すると、クラブの規模や予算だけでなく、外国人枠や交代選手の数までも違い、うっすらと一線を画している形。平均年間予算が約25億円のJ1、約10億円のJ2に対してJ3は約2億5千万円で、必然的にJ3の人件費は制限。「3人以上のプロ選手在籍」が一つの条件だが、年俸の上限が460万円未満のC契約でもプロ契約として成立(ちなみにJ2は年俸460万円以上のA契約選手が5人以上)。月給20万円弱の選手が多く、学生アルバイトのような収入の選手は、少年サッカーチームのコーチなどの副業で生計を立てているとか。

 世界的に見て、3部リーグのクラブや選手が特に辛酸をなめているかというと、そうでもなく、スペインではリーガエスパニョーラでは、メガクラブは年間予算約780億円と破格で、主力選手1人だけで10億円を超える年棒。他の1部リーグのクラブも約65億円以上と潤沢。比べて2部リーグのクラブは約9億円と、放映権の格差により一気に下がり、3部リーグでは5千万円程度のクラブもざらにある状況。リーガエスパニョーラが強く逞しいのは、この格差による「夢の回路」があるから。3部の選手が1部の上位クラブに移籍してプレーするというケースは少なくなく、プレーを向上させることができたら一攫千金。そこに下部リーグで戦いを積み上げる面白さがあり、人材の層が厚い中、それを突き破った選手には人気と名誉を得られる夢が眠っているとか。

 Jリーグでは3部と1部の選手の力量差は大きいにもかかわらず、J3の選手もJリーガーと等しく見られ、経済的にそこまで悲観すべき立場になく、現実に身を埋めてしまう。その結果「下克上」はほとんど見られず、夢の回路の機能が乏しい。これは日本サッカーが歴史を積み重ねるしかないのか。
 J3に落ちることは、待遇以上のデメリットがあり、「下部リーグへの降格はクラブにとって底なし沼に入るも同然」とも言われているとか。一度落ちたら、もがけばもがくほど深みにはまる。気力を含めた体力が落ちていく。事実、東京V、千葉らオリ10がJ2で悪戦苦闘し、町田、鳥取もJ3から這い上がれずにいる状況。
web Sportiva該当記事:http://sportiva.shueisha.co.jp/clm/jfootball/2015/11/11/post_1001/

 周りに「富山、栃木と来たら次は岡山とならないようにして欲しいな」と辛口の方もおられますが、J2岡山も今シーズンの半ば17位まで下降し、山陽新聞から「入れ替え戦が現実味を帯びてきた」というような論調が出ました。ここから上昇していきましたが、サッカーの試合は運もあります。ひょっとしたら、監督交代で混乱していたかもしれない、選手にけが人が続出して更に下降しているかもしれない、何かのトラブルで一気にイメージダウンして、経営収入が一気に減少していたかもしれないと、たらればはきりがないですが、17位まで下降したのは事実です。
 岡山は先日サポカンを実施した事は大きいですね。ファン・サポーターとの対話の場を設定できた訳ですから。これで何かあれば、臨時サポカンをやればいいですから。これが一度もやらなくて、経営危機になって慌てて実施しても、「なぜ今まで対話しようとしなかったのか」と責められるでしょうから。栃木さん、ぜひ1年で上がってきてください。
J2栃木関連⑭:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20140424
  〃    ⑬:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20140424
  〃     ⑫:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20131219

  〃    ⑪:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20130111
  〃    ⑩:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20121213
  〃    ⑨:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20120215
  〃    ⑧:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20120120
  〃    ⑦:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20111109

  〃    ⑥:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20111106
  〃    ⑤:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20080524
  〃    ④:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20060621

  〃    ③:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20060616
  〃    ②:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20060316
  〃    ①:http://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/e/aa9b4e42f0ae1ef0409aa7a5af213fde

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