CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】ヒポクラテスの試練

2020-07-27 21:20:29 | 読書感想文とか読み物レビウー
ヒポクラテスの試練  作:中山七里

相変わらずの死体好き教授による事件解決劇でありますが、
今回舞台が海外にまで及び、人種差別問題を含むものとなっていて
なかなか、物語の構造が興味深い内容でありました
序盤の事件2件が、後々かかわってくるけども、
最初の杜撰とさえいえるような取り調べが、ある意味面白かったのであります
実際にこの小説の通りのことこが起きたら
県警ひとたまりもないだろうな

肝臓がんという診断結果の遺体が、
実際は寄生虫によるものだったと判明する
これがパンデミック化するかもしれないから、
その発生源をなんとしても突き止めよう

そんな感じで物語が進んでいくのだけども、刑事がからんでいるのに、
目的が事件の解決ではなく、パンデミック阻止という
もっと大きな観点の平和というか、そりゃ管轄外だわなと
刑事に同情してしまう展開なのが斬新で面白かった
相変わらずひねくれたというか、屁理屈と不条理で教授が話を進めるのが
読みどころとして面白いのだけども、
さすがに乱暴すぎるだろうと感じたりもしたのでありました

とはいえ、いくつかの事件が、一見関係ないのに
最終的には見事につながるという、ある種ご都合的な展開ではあったものの
そうでなくてはねぇと、刑事側を忖度じゃないが、
安心させる内容にもなっているのが面白いのでありました
刑事ものエンタメというのは、もはや、刑事事件だけを扱っていては
成り立たないところまできたんだろうかと
いらんことを考えさせられたのであります、面白いからいいんだけども

追っかけていることは一つなんだけども、
その先々で起こる事件と、包含されるテーマが変遷していくので、
飽きが無い感じで読めて楽しいけど、いささかあっちこっちしすぎて
そんな話だっけ?とか思ってしまうところもあった作品でありました
説教臭く差別はダメみたいな安易な話ではないのだけども、
アメリカにおける差別というもの、それが人に及ぼす影響、
人心のありかたと、平和とはなにか、
結局、死体の方が雄弁であるというそれが
事件は生きている人が起こすという話にもつながっていて
このシリーズのテーマを現したようにも思えて面白いのでありました

とはいえ、困った医者ばっかりでてくる小説だなぁと
にやにやしながら見てしまうのである
口さがないキャラクタは見ているだけで面白いのでありました