森の中の一本の木

想いを過去に飛ばしながら、今を見つめて明日を探しています。とりあえず今日はスマイル
  

開け放された夏の夜は

2018-07-09 17:49:55 | 梢は歌う(日記)

変化しすでに遠い昔になりつつある日本の風景はたくさんあると思います。

その一つには、夏の夜、窓を開けっぱなしにして眠ることだと思います。

そんな時代があったなんて信じられないと、若い人は思うかしら。

 

― ああ、とうとう私も「若い人は」などと言うようになっちゃった。-

 

それともどんな田舎に住んでいたのだろうって思うかもしれません。

 

横浜とか、東京に近い千葉の東葛地区を田舎と思うならそうかもしれません。

そしてそれは、そんなに大昔の事ではなかったのですよ。

 

つい先日、私は家にやって来る中学生の子に、このマンションに来る前は、夏は窓を開けて寝ていた話をしました。

だけどこのマンションに来て、同じようにしていたら、他の部屋のエアコンの室外機が出す熱風が部屋に入って来て、とても窓を開けて寝られる状態ではなかったと笑い合いました。

安全神話にとっぷり嵌った非常に抜けたような住人の話に聞こえるかもしれませんが、20世紀はその安全神話がちゃんと生きていたのです。言うなれば、日本と言う国は神話が生きる神秘の国なのですよね。いや、「だった」と言うべきなのでしょう。

 

「で、私の家も夜は窓を閉めて、エアコンを入れて寝るようになってしまったのよね。こうして地球温暖化は進む・・・・・。」

そうすると、やっぱり一斉にみんなエアコンを止めて、窓をバーンと開け放したらどうだって思うけれど・・・・・

「でもさ、そうなったのはそれだけじゃないのよね。」

と、私はその少年に続けて言いました。

「松本サリン事件、知ってる?」

すると少年は首を傾げたのです。

「オウムの。」と私が言うと、

「ああ、地下鉄のは知ってますよ。でもそっちは知らない。」

 

平成生まれの14歳。そんなものなのですよ。

この話は、本当にたまたま彼らの死刑執行の数日前に出たのです。偶然なのですが、そう言う事ってよくありますよね。

松本サリン事件を知らない若い方、または風化してしまった方はこちらをどうぞ→松本サリン事件

 

上のリンクしたところには書いていないけれど、この時、マンションで亡くなった方は3階から上の階の人が多かったのだと、私は何かの記事で読んだのです。

3階以上上だと、ベランダ側だと防犯的には大丈夫な事が多いので、窓を開けて眠ることが出来るかと思うのです。

それでその時、窓を開けて寝ていた方が、亡くなったのだと書いてあったのです。

(すでに遠い昔なので(1994年)、100%の確かさではありません。)

 

松本サリン事件が起きた6月27日は、7月に近い夏の初め。エアコンを入れるほどではなくてもそれなりに暑かったのではないでしょうか。

窓を開けて眠るー入ってくるのは熱風ばかりではないんだと、私は震えました。

 

マンションとかがあると、必ず公園を作らなくてはならないのですよね。マンションでなくてもまとまった住宅地を作るときもそうですが、何戸に公園が一つみたいなルールがあるのでしょう。

うちのマンションも例外ではありません。

その時、まるでうちのマンションが狙われたように、そしてその時の様子をまるで見たかのように、その情景が浮かんできたのです。公園の向こうの薄暗い道路に、実行犯の車が止まり、じぃいいっと息をひそめてタイミングを計るように、辺りを見回している。そして彼らは頷き合って、マスクをかぶるとそしてー。

その時から、私は一度も、窓を開けて寝た事はないのです。

 

だけどこれは相当イメージ先行で書いているなと思われる方もいらっしゃると思います。

その通りです。

私はその時、彼らは真夜中にやって来たのだと思っていたのです。当然、そう思いませんか。闇に紛れてやって来たのだと。

ところが彼らは、頭が無駄に良かった悪魔たちでした。

 

私は昔は安全神話を信じる無防備な人が普通に居たみたいな書き方をしていますが、それは単に私のみの勘違いかも知れません。

と言う事は、夜寝る時は皆防犯上、ちゃんと窓を閉めて寝るとするでしょう。

だから悪魔たちは、それを午後10時ごろに実行したのですよね。

 

ある年齢になると、午後10時は真夜中に等しいけれど、ある年齢では宵の口で、窓は開けられているでしょう。

私のうちもまだエアコンはイイナと言う陽気の頃は、午後10時頃は窓は開いていますよ。(本当はそろそろ真夜中世代なんだけれどね。)

だから亡くなった被害者は、若い人が多かったのかと思いました。

この午後10時と言うのは、上にリンクしたウィキペディアの記事によるものだったのですが、その時間帯を読んで、恐ろしい悪魔たちだと感じたのです。だけど、更に読んでみると、なんだろうかと思うほど、行き当たりばったりなんですよね、この人たち。

 

「まあ、とにかくね。」と私は少年に言いました。

「私の中の日本のある風景は、その時に終わってしまったのですよ。」と。

 

 

真夜中に急に雨が降り、温度が急激に下がって、窓の外からひんやりとした空気が流れ込んでくる。

「あっ、寒い。」と言って、慌てて窓を閉めに起きてくる、そんな夏の日の夜は遠い昔だね。

 

 

しかし、「松本サリン事件」が私たちに教えてくれたことは、そればかりではなかったですよね。

それはまた次回にー。

 

 

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする