かなり前に、WOWOWで放送されたものを録画していて、それをようやく9月14日に見る事が出来ました。だから今はどなたさまにもお役には立たない感想かもしれませんが、またの機会に見られることがあったり、または再演の時などのご参考になればと思います。
「プルートゥ」は、原作から素晴らしいんですよね。
原作者の浦沢直樹、大好きです。
だけど彼の難点は、物語が長いんです。で、エピソードが増えてくると、前の繋がりが時々分からなくなってくることも多いと思うのは、私だけでしょうか。
その長い物語をどう描くのかと思ったら、寧ろ、様々な細かい部分をざっくりと切って、テーマに沿った部分だけスッキリとまとめ上げ、非常に分かりやすくなっていました。
演出も、ロボットたちの背後にダンサーを据えて、舞台にはたくさんの人が居ると言うのに、かえって無機質にさえ感じさせたのは素晴らしいと思いました。
加えて、キャストさんたちの演技が、本当に素晴らしいと思いました。
アトム役の森山未來のシャープな演技が素晴らしいのはもちろんですが、ゲジヒトの妻のヘレナとウランの二役を演じた土屋太鳳には、改めて脱帽しました。
特にゲジヒトを失った後の辛い時に、天馬博士から泣いてみると良いと言われ、初めて泣いてみると言うシーンは、鳥肌ものでした。最初はマネでいいんだと言われ、「あーーーー」「うーーーー」と声を出していき、そしてその大きく見開かれた瞳が、真っ赤に染まって行き涙がこぼれていくのです。
映像なら、まだ分かります。
だけどこれを、毎回舞台の上でやるんですよ。
思わず、太鳳ちゃん、「まれ」の後、しばらく嫌いだったことを許してと、心の中で言ってしまいました^^
またそれから、世界最高峰の頭脳を持つ科学者アブラーが天馬博士の口から、自分の本当の正体を知らされた時の吹越満(アブラ―)も凄く良かったです。
まるで本当にロボットが混乱して壊れていくように見えました。
それから、今までほとんど知らなかったゲジヒト役の大東俊介という人を知る事が出来て、嬉しかったです。
原作もラスト8巻は最大のクライマックスで、涙無くしては読み切れませんでした。
この物語も、一体一体のロボットのエピソードを省いていますが、この舞台のクライマックスはその8巻の内容がメインになっていて、同じように終息していきます。
アトムがお茶の水博士に言います。
「憎しみが消える時はありますか。」
憎しみは連鎖するー。
大量破壊兵器があると、世界中のトップのロボットが投入されて、その戦いは終わったけれど、大量破壊兵器など無く、その国の人々に大きな被害があっただけ。
誤解された元になったものは、砂漠を緑化しようとする最強のロボットを生み出すために、その失敗作の山が出来、それが誤解の元だったという皮肉。
どこかでその憎しみは断ち切らなくては、その連鎖は止まらないと思います。
過去の憎しみを、わざわざ教育に組み込んでいる近隣の国の事を思うと、暗い気持ちにもなります。またこの舞台を、9.11過ぎに見る事が出来て良かったと思いました。
この物語には3組の親と子の物語があって、国を選ばず人間である事さえも選ばずの普遍の愛に、涙しない人は居ないと思いました。
素晴らしい舞台です。
いつかの機会があれば、是非是非ご覧になって頂きたい舞台だと思いました。
因みに、私の漫画の感想は→「プルートウ8」
なんでも書いておくことは良い事だなと思いました。この舞台が、原作の良さをまったく損なっていなくて、しかも分かりやすくなっていることがよく分かりましたから。