(画像は記事とは関係ありません。我が家のあんずさんです。)
2月の終わりに予約した「百鬼夜行抄31」は4月5日に配達されて、その日のうちに読みましたが、ずっと感想を書き損ねていました。
今回のお話は
・夜明け前に見た夢
・夏が傾く
・容れ物とその中身
・嵐吹く
・左隻の魔物
の5作で、「nemuki+」に2023年7月号まで連載されたものが収録されているもよう。
この物語は、なんだかんだと29年にわたって単行本を出版し続けているわけで、やはりその長寿の秘訣は、もしかしたら読者が望もうが望むまいが、実は微妙にしてきた変化にあるのかもしれないと、今回思いました。
彼を文句を言いながら守り続けてきた青嵐は、その契約は既に切れて、もう律の護法の式神ではありません。
この作品のヒロインのポジションにいた司も登場回数がめっきり減り、またもう一人のヒロインの晶は、確かちょっと霊能力を持った占い師と恋の予感をさせたものの、まったく出てこなくなりました。
途中から出てきた相当怪しい開おじさんは、今は何をしているの。
(飯嶋家はひとりの子供は川で死んで、ひとりは行方知れずと前から語られていたけれど、その伏線は良かったですね。さりげない言葉もちゃんと拾うんだなと思っていました。)
あまり出てこなくなってしまった人たちへの未練のようなものが、私はこのお話の変化を嫌うのかも知れません。
嫁ぎ先を嫌って死のうとまでした水脈おばさんは、その後ちゃんと結婚し多くの子供を成し、ハッピーエンドに思えたのに、やはり飯嶋家の呪縛から逃れられなかったみたいで、今はその孫である海くんの物語がけっこう続きます。
まったくつまらないと言うわけではないのですが、上に書いたような未練があって、何もそこまで広げなくてもいいのにと思ってしまうのでした。
ただ今回、こんな風に一族のその後を語るかのような新しいメンバーの物語を書くことで、それは続いてこれたのかもと感じたのです。
海くんはまだ幼い感じの小学生。
だからフレッシュに感じます。しかも彼には青嵐のように守ってくれる者もいなければ、また家族がみな微妙に力を持ち、なんとはなしに怪しの経験に苦しむ彼に理解に満ちている家で育っているわけでもないのです。それゆえに騙されやすく新たな物語も産みやすくなっているのですね。
だけど新たに彼も式神を持ってしまいました。またそれがどんなふうに展開していくのか、少々楽しみではありますね。
出てこなくなって寂しく思うキャラは、律の一族ばかりではありませんね。
妖怪たちもです。特に鬼灯は、ある意味無邪気な悪の化身。ただ遊んでいると言う感覚で、人々を不幸にいざないます。惡の方のスターです。
で、彼、久しぶりの登場ですね。
そしてこれもまた次回にどのように繋がっていくのか楽しみなところです。
「容れ物とその中身」はホラー色濃くて、ラストがちょっと怖かったです。
また「嵐吹く」と「左隻の魔物」は律がメインのお話で、やはりホラーでありながら、ちょっとイイ感じで終わるのもホッとできる展開でした。
今回はどれも面白かったし、いつもはやってしまう途中まで読んで思わず読み直すと言うことはなかったです。つまり分かりやすかったのかも知れませんね。
(あーあ、4月も終わってしまったな・・・・。)
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