これからの被災地医療支援(小児医療も含め)の考え方について、東日本外来小児科学研究会http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/2ef3e3ec88c0ff8e2b1763db89be6c03に参加し発表演題を参考にして書きます。
一、医療相談(医療へつなげる)
仮設住宅に移動するなどして、現段階でも、医者にかかるべきか、どこにかかるべき医院や病院があるかという基本的なところから情報を求めている方がいらっしゃると思います。
医者につながる一歩手前の支援、適切な医療機関につなげていく支援、医者にかかるほどでもないけど聞いておきたい不安を解消する支援が必要であると考えます。
一、ニーズをつかむ
上記のように、在宅避難の方、診療所からはなれた仮設住宅の方など、どの医療機関にかかればよいのかわからないでいる方に対し、適切な医療機関につながっていくような支援が必要です。
個々の声を総合して、その地域全体の医療保健福祉のニーズをつかむことが大切です。
(ある意味、行政の仕事とオーバーラップするところですが)
一、仮設診療所支援
学校等を利用して、仮設診療所が立ち上げられています。例えば、陸前高田には、市立第一中学校を利用しての設置といいます。
夜間対応の小児科救急診療を行うところもあります。
それら診療所には、マンパワーが必要です。
一、乳児健診、学校健診、予防接種など
地域の小児科診療所が被災し、担当医を無くした地区の乳児健診や学校健診が回らずに、岩手県医師会へ支援依頼がありました。
同医師会は、内陸部の地区医師会会員に依頼し、6/30までに春の学校健診をすべて終了することができたということでした。
今後も、小児科医師が担うべき健診でのマンパワーが必要になることが考えられます。
インフルエンザシーズンに向けてのインフルエンザワクチン予防接種、定期の予防接種がきちんとなされる体制を整える必要もあります。
一、子ども達のこころのケア
寝れない子、お風呂が怖い子、やたら怖がる子など、心のケアが必要な子がおられます。
宮古医師会は、宮古子どもの心のケアセンターを設置。気仙沼、釜石も同様な動きがあるそうです。
児童精神科医や心の相談に対応できる医師が求められています。
一、成人のこころのケア、アルコール依存や自殺対策
被災地で一回飲酒量増加や、飲酒するひとが増加しています。アルコール依存へとならなにような取り組みが求められます。
また、仮設住宅入居が進んでいくと、自殺対策も、これからは大切になってきます。
一、衛生管理、健康管理
体育館、運動場が避難施設で塞がってしまっており、運動する場がないことから運動不足が生じる可能性があります。
粉塵やアスベスト飛散量の測定、放射線量測定をきちんと実施公開し、粉塵、アスベスト暴露、放射線被ばくからも子ども達を守っていくようにせねばなりません。
一、震災孤児への支援、未成年後見制度
岩手では、両親をなくされた孤児88名(男子40女子48)、片親をなくされた被災児382名(男子207、女子172、不明3)であったと報告。
宮城では、108名の児が両親をなくされ、親戚へ70名程度、施設入所が30弱と報告されています。
この子ども達の未成年後見制度も含めた支援が必要です。
一、放射線に関する情報発信
避難した場合、故郷を捨てる罪悪感やいずれ戻ってきたときに迎え入れられるかという不安を抱かれています。
とどまった場合、子の健康を第一に考えないことは親のエゴではないかと悩んでおられます。
夫婦、親子、兄弟などの間で家族の軋轢が生じることにもなっています。
避難する場合も、とどまる場合も、どちらも支援することが求められています。
私もいままでに放射線に関する親御さん向けの勉強会をトータル5回開催してまいりましたが、現地福島の先生方のお話も参考にし、今後も勉強会を進めて行きたいと思います。
一、放射線被ばくの健康影響評価と健康管理
被ばく量をきちんと推定し、健康影響がでないかをきちんと生涯にわたって見ていく体制の整備が求められています。
ひとりひとつの線量計をもつことは、必須だと思います。
一、放射線からの避難、疎開についての対応、
実際避難される場合、学校の問題、住居の問題、さまざまな手続きの問題、法律家も交えて、支援していく必要があります。
一、放射線を下げる努力(除染など)、暫定基準を低い基準に下げる努力
児玉氏が取り組まれていることが報道されていましたが、専門家も入って除染の取り組みが必要です。
食事からの内部被ばくを減らすことができるように、高く設定されている食品に含まれる放射能の暫定基準も、低い基準に改めるように、食品安全委員会に働きかけていかねばなりません。
一、復興に向けた基本方針への医療側の意見の反映
復興の基本方針が作られていますが、医療側の意見をまちづくりに反映し、ひとが健康に暮らせる新しいまちの再生につなげていくことが大切です。
まちが健康でなければ、そこで生活するひとは健康にならないと考えています。
などなど、研究会で学びましたことを参考に考えました。
自分にとって、五度目の被災地入りとなりました。
東日本外来小児科学研究会は、とても勉強になりました。
企画運営された先生方、どうもありがとうございました。