「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

世界と日本のワクチンギャップ-世界標準にはるかに及ばないわが国の予防接種体制

2011-08-13 22:58:58 | 小児医療
 日本小児科学会 国際シンポジウム
 『世界と日本のワクチンギャップ パート2 -世界標準にはるかに及ばないわが国の予防接種体制ー』


 このシンポジウムを聴講し、以下の学びを得ましたので、整理します。

 一年前の学会で、定期予防接種に関してパート1がなされ、このたびは、任意のワクチン、おたふく、水痘、B型肝炎の三つのワクチンに焦点があてられました。

 もちろん、これら三つのワクチンが早く定期接種に含まれることを期待いたしております。
 その実現に向け、声を届けていかねばならないと考えています。



 *予防接種の導入は、
 1)その疾病にかかることによる負担(疾病負担)
 2)ワクチンの有効性
 3)ワクチンの安全性
 4)医療経済性
 を考慮して、決められていきます。

 *妊婦さんが、水痘、麻疹、百日咳などにかかると、胎児に悪影響を及ぼすので大問題

 *最近、混合病棟が増え、子どもから大人への感染などもありうる

 *子どもに接種することで周りの大人も守ることが出来る

 *学校教育においてワクチンがこういった病気を防ぐと教え、それによって子どものほうから必要性を理解する場をつくり普及を

 *小児科学会予防接種部会で、ワクチンの要望を受け入れ、政府に提言していく
  基本はワクチンで防ぐことが出来る病気VPDは、ワクチンで防ぐ



 
�おたふくワクチン
1)疾病負担
 脳炎、髄膜炎、難聴1/400-1/2万、睾丸炎(中学生ごろの罹患で)、乳腺炎、卵巣炎などを来たす
 
 妊娠の第1三半期に妊婦がかかると流産

 年齢が大きくかかると髄膜炎のなる率が上昇
 (ウイルスの直接侵襲だけでなく、年齢が大きいと生体の免疫学的反応により重症化する)

 罹患すると1週間から10日欠席

2)有効性
 一回で90%、二回接種で99%効果

3)安全性
 Jeryl Lynn株 ワクチン副作用の髄膜炎 1/100万
 Urabe株                1/5-10万
 星野株、鳥居株             1/2000-2万
⇒乳児期に接種することで、副反応を減らすことができる

4)医療経済性
 導入で、400億円プラス、厚生労働省試算290億円プラス

5)その他
 2004年段階で先進国でおたふくワクチンを定期接種に入れていないのは、日本のみ

 MR+Mの同時の接種がよいかもしれない

 かつてのMMRにおける髄膜炎発症が何歳で出ているかの検証が必要

�水痘ワクチン
1)疾病負担
 年間約100万罹患、重症4000人、死亡20人

 学校保健安全法で出席停止、学校生活への影響、社会生活への影響

 発症ピークは4-5歳、90%以上が10歳までに

 妊娠初期の水痘による胎児への悪影響、
 新生児が水痘を罹患することによる重症化
 
 神経症状

 50年後帯状疱疹

2)有効性
 感染防止80-85%、
 重症化防止100%

 breakthrough水痘ある(接種していても罹患)

*米国二回接種12-15ヶ月と4-6歳

3)安全性
 安全性高い
 副反応低い

4)医療経済性
 罹患した場合の抗ウイルス薬が高額で、医療費を増大させている


5)その他
 年間250万ドーズあり、ワクチン供給は可能


�B型肝炎
1)疾病負担
 世界で罹患約3億人、毎年約60万人死亡(1600人/日)
 日本約100万人推定、10-15%が慢性肝炎、肝硬変、肝がん 1万人死亡

 小さいときに感染しやすい、特に3歳未満

 父子感染や保育園での感染もありうる

2)有効性
 小さいときの接種で、高い抗体化を維持
 感染しても発症を防ぐ


3)安全性

4)医療経済性

5)その他
 1992年WHOは、すべての出生児にB型肝炎ワクチン接種を推奨

 世界の70%は定期接種に入れている

 集団感染を防ぐエチケットしての接種を

 小学校高学年での接種でキャッチアップを

 ビームゲン年3万ドーズ、1万人接種⇒最近年間5万ドーズ、接種者増えている


以上
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いわき市や飯舘村等1149人小児対象甲状腺被ばく量検査 約半数放射線ヨウ素検出 等価線量最高35mSv

2011-08-13 21:57:29 | 築地を守る、築地市場現在地再整備
 8/12-14で東京で開催中の第114回日本小児科学会学術集会におけるセッションの内容が早速報道されていましたので、こちらでも掲載をいたします。

 緊急セミナー『小児の放射線障害と甲状腺』 座長 細矢 光亮先生(福島県立医科大学小児科)
 原発事故と小児放射線健康影響 田代 聡先生(広島大学原爆放射線医学研究所)
放射線による小児の甲状腺障害 皆川 真規先生(千葉県こども病院内分泌科)

 実は、自分は、午前の診療が長引き、このセッションを途中からしか聞けておりません。
 会場は、学会参加の小児科医師で溢れておりました。
 こんな感じです。


 記事で書かれているように、検出されているものの「微量なので将来、甲状腺がんが増えるとは考えにくいが、万が一の場合にも対応できるよう継続的な健康管理が必要だ」という見解が述べられておりました。
 根拠は、演者の先生方が“中立的”と認識されているICRP報告においておられました。

 遠くのスライド資料であり、吟味できたわけではございません。
 今後もこれら報告をフォローしていきたいと考えます。



*****NHK(2011/08/13)*****
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110813/k10014892751000.html

子どもの甲状腺から放射線検出
8月13日 16時48分

東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、福島県内の1000人以上の子どもの甲状腺を調べたところ、およそ半数から放射性ヨウ素による放射線が検出されたことが分かりました。専門家は「微量なので、健康に影響が出るとは考えにくいが、念のため継続的な健康管理が必要だ」としています

この調査結果は、13日、東京で開かれた日本小児科学会で、広島大学の田代聡教授が報告しました。田代教授らのグループは、国の対策本部の依頼を受けて、今年3月下旬、福島県いわき市や飯舘村などで、1149人の子どもを対象に甲状腺への被ばく量を調べる検査を行いました。その結果、およそ半数の子どもの甲状腺から放射性ヨウ素による放射線が検出されたということです。田代教授によりますと、甲状腺への被ばく量は100ミリシーベルト以上に達した場合に健康に影響が出るとされています。しかし、今回検出された放射線から換算される甲状腺への被ばく量は、子どもへの影響を最大限に考慮しても、最も多い人で35ミリシーベルトで、「健康に影響が出る値ではない」ということです。田代教授は「微量なので将来、甲状腺がんが増えるとは考えにくいが、万が一の場合にも対応できるよう継続的な健康管理が必要だ」と話しています。検査の結果は、来週以降、国の対策本部から子どもや保護者に通知されることになっています。

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2011-08-13 16:13:14

2011-08-13 16:13:14 | 築地を守る、築地市場現在地再整備
発達障害、シンポジウム
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2011-08-13 15:51:00

2011-08-13 15:51:00 | 築地を守る、築地市場現在地再整備
ワクチン シンポジウム
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2011-08-13 13:27:49

2011-08-13 13:27:49 | 築地を守る、築地市場現在地再整備
放射線の会場、入れず。
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被災地石巻で「ボランティアの専属医」、医師の資格を証明するものとは。

2011-08-13 01:37:37 | 国政レベルでなすべきこと
 今日一日、こころに引っかかっていたこと。

 以前、朝日新聞のひとのコラム(下記)で感銘を受けた人物がおられました。

 米田きよしさん。

 ルワンダを助け、この度は、石巻を3月半ばからずっと助けて下さってこられました。私も同じ石巻で災害医療支援に入りましたが、「こういう方がおられたんだ、自分もがんばらねば」と記事に勇気付けられました。
 また、医師会のJMAT、日赤のDMAT、そしてカナダのCMAT、いろいろあるんだなあーとも思った記事でした。

 ところが、この方の医師免許や名前自体に疑義があると言うことが、8/12の新聞等でとりあげられていました。
 朝日新聞朝刊でも、今度は「訂正おわび」の記事や取材の記事が掲載されていました。

 問題点は、「米田きよし」と名乗るかたは、偽名をつかっている点では、少なくとも過ちを犯しています。
 ただ、本人の談を信じれば「米国の医師免許」はお持ちの様であり、米国では通用する医師であったのではないかと考えられます。
 私自身制度を調査すべきですが、日本の災害で、海外からの医師は、どのような処理をすれば、日本で医療行為をできるようになるのでしょうか。
 もし、そのような手続きが存在し、その手続きを怠らなければ、「米田きよし」と名乗る人物は、過ちを犯さなかったかもしれません。

 もうひとつ、日本では、医師を証明する道具が、記事にもありますように、「医師免許を所管する厚生労働省医事課は11日の朝日新聞の取材に対し、医師の資格を証明するのは「医師免許証」であると説明」ということで、「医師免許証」です。
 しかし、B4サイズの賞状のような紙切れである「医師免許証」をいつも携帯する事は、実用的ではありません。医師資格を証明できるように、運転免許証に医師資格と認定番号を記入できるようにするとか、医師資格証明カードを発行するとか(実は、カードはこれ以上増やしたくないのですが、こんなことで大きな予算をつかわずにもしたい、しかし不正使用も防がねば…、日本医師会は確か発行していたような、でも国のお墨付きがいいかな)するべきだと考えます。
 かつて、自分も、NWの飛行機に搭乗中、米国領空内で、中国人に対して医療行為を行った経験があります。自分が医師であると言うことの証明するものは、大学病院のたまたま持っていた名札でした。証明できるようなものがほしいとそのときは痛感した次第ですし、同じように医師の皆さん思っていませんでしょうか。
 

 

*****朝日新聞(2011/08/10)****
ひと 被災地で「ボランティアの専属医」を務める
     米田(よねだ) きよし さん(42)


 宮城県最大のボランティア拠点・石巻市。震災後、のべ約8万7千人が訪れた。ここで「ボランティアの専属医」を務めている。
 泥出し作業中に釘やガラスを踏む人、ぎっくり腰になる人、持病の薬を飲み忘れて重体になる人もいる。「ボランティアの基本は自己責任」が善意で集う人を放っておけず、彼らが生活する石巻専修大学のテント村に3月半ばから住み着いた。
 「ボランティアのボランティアや」。救護所では、破傷風や熱中症の患者をはじめ、250人余りを診察してきた。
 本来はカナダにある大学病院に所属する小児救命救急医。1999年に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の派遣医になり、ルワンダの診療所で働く。休暇で日本へ帰国中に東日本大震災と遭遇、NGO「カナダ医療支援チーム(CMAT)」のメンバーとして被災地に入った。
 震災直後、生存者の捜索を手伝ったが、大半は遺体だった。「日本だから薬が手に入って助かった命がある。便利さに慣れ、ガソリンや電気がないからと柔軟に対応できなかった悔しさもある」
 自らの故郷で多量のボランティアを見ることになるとは考えもしなかった。いまだに受け止められない気もする。少なくとも年内は石巻に腰を据えるつもりだ。

*****以上****

*****朝日新聞(2011/08/12)******
「ひと」欄で紹介、おわびします



 朝日新聞は10日付朝刊2面の「ひと」欄に「被災地で「ボランティアの専属医」を務める
米田(よねだ) きよし さん(42)」との記事を掲載しました。5月以降、複数回にわたって面談と電話で本人を取材した記者は「日本の医師免許を持っている」と聞いていました。
 掲載後、記事を見た社外の方から「米田氏は医師ではない」との情報が寄せられました。確認作業を進めたところ、記事で紹介した経歴について複数の虚偽の疑いがあることが判明しました。海外の医師免許を書き換える仕組みがないことも確認しました。その他の取材結果も踏まえ、日本の医師資格はもっていないと判断しました。
 さらに事実関係の確認作業を続けていますが、無資格者による医療行為はただちに止める必要があると考え、これまでに把握できた事実と、ここに至った経緯をお知らせする次第です。
 事実と異なる内容を掲載したことを読者と関係者の皆様におわびし、この記事の全文を削除します。

 福地献一・朝日新聞東京本社報道局長の話 記事は、被災地でボランティア活動に携わる人たちをサポートする医師を名乗る人物を取り上げたものです。掲載後、社外からの指摘で再取材した結果、日本の医師資格を持たず、経歴についても虚偽の疑いが強いことがわかりました。誤った内容を掲載したことを読者の皆様に深くおわびいたします。今後、より一層、事実確認の徹底に努めてまります。

*****以上*****

*****朝日新聞(2011/08/12)*****
 被災地で資格なく医療行為 石巻で活動、本人は「医師だ」
 
 東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県石巻市で医師として活動してきたボランティア団体代表が、実際には日本の医師資格を持たずに医療行為をしていたことが朝日新聞の取材で11日、わかった。
 この代表は「米田きよし」と名乗る人物。震災後、遅くとも4月から同市内のボランティア活動拠点に常駐し、活動中にけがをしたり体調を崩したりした人を対象に手当てや投薬をしていた。
 代表は、活動拠点を運営している石巻市社会福祉協議会から医師であることの証明を求められた際、「医師国家資格認定証」「厚生労働省認定」などと日本語で書かれた顔写真入りのカードのコピーを渡していた。また、カナダ国内の病院に所属する救命救急医であると英語で記した名刺を使っていた。
 しかし、医師免許を所管する厚生労働省医事課は11日の朝日新聞の取材に対し、医師の資格を証明するのは「医師免許証」であると説明。協議会がコピーを保管している「認定証」は発行していないとした。さらに、朝日新聞が名刺に記された病院に確認したところ、「この名前の医師は一度も働いたことはない」との回答を得た。
 代表は朝日新聞の11日夜の電話取材に対し、「認定証はカナダ政府に作ってもらった」「名前の部分は偽名だ」などと述べたうえで、「米国で取得した免許を書き換えており、自分は医師だ」と主張した。
 この代表の団体は、日本財団が被災地支援のためにNPO法人やボランティア団体に支給している助成金を申請していた。団体側には7月に100万円が助成された。

****以上****
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