「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

中日新聞社説H24.7.17 四日市の判決から40年 公害の反省はいずこ

2012-07-20 09:43:48 | 医療
 中日新聞(東京新聞)の社説。重要な問題提起をされています。

 医療と法との接点の分野、きちんと学んでいきたいと思うところでもあります。

 同じことを、何度も何度も繰り返してはなりません。
 健康をないがしろにする政策は、皆の力で正していかねばならないと思います。

************************************
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012071702000095.html

社説 四日市の判決から40年 公害の反省はいずこ
【中日新聞 2012/07/17 朝刊オピニオン 1688字】


 四大公害の一つ、四日市公害訴訟の歴史的な住民勝訴から四十年。あの経験は、生きているのか。原発事故は防げなかったか。四日市は再び語り始めた。


 半世紀前、日本は敗戦の傷をいやそうと、上り坂を無我夢中で駆けていた。そのエネルギー源が石炭に代わる石油であった。


 三重県四日市市南部の近鉄塩浜駅から伊勢湾へ。トラックが行き交う塩浜街道を横切ると、第一コンビナートの敷地が海まで続く。


 紅白に塗られた巨大な煙突の先から白い煙が立ち上り、銀色の管が無数に走るプラントが今もひしめき合っている。かつては黒煙が市内を覆い、煙突からは二十メートルもの火柱が上がった場所である。


 一九五五年、旧海軍燃料廠(しょう)、軍の石油精製施設跡地の払い下げを受け、三菱グループを中心に、石油化学コンビナートの建設が始まった。高度経済成長の夜明け、石油時代の幕開けだった。


 その四年後、日本初の本格的な石油化学コンビナートは稼働した。「結合」を意味する耳なれないロシア語に、地元だけでなく、日本中が夢を見た。近くの小学校の校歌には「コンビナートは希望の光」というくだりがあった。


 さらに四年後、異変が明るみに出始めた。伊勢湾で捕れた魚の異臭騒ぎに始まって、重いぜんそくの症状を訴える患者が多発した。煙の中に含まれる亜硫酸ガス(二酸化硫黄)が原因だった。


 六七年、隣接する磯津地区の患者九人が、第一コンビナートの六社を相手取り、慰謝料などの支払いを求めて提訴した。日本初の大気汚染公害訴訟である。五年に及ぶ審理を経て、津地裁四日市支部は六社の共同不法行為を認め、総額八千八百万円余の支払いを命じた。六社は控訴しなかった。


 その日から間もなく四十年。原告の生き残りは野田之一さん(80)一人になった。市の観光協会は、コンビナートの夜景クルーズで人を呼ぶ。


 四日市公害とは、いったい何だったのだろうか。四大公害のうち、富山のイタイイタイ病、新潟水俣病、そして熊本の水俣病も、事件の発端は戦前にある。


 四日市公害は明らかに、高度経済成長という強過ぎる光の影である。日本列島の真ん中で、日本経済の中枢を担う企業が「結合」し、石油時代への舵(かじ)を切り、エネルギー多消費、大量生産のものづくりでこの国のかたちを変えた国策そのものの影だった。

◆工場よりも命が大事


 「人の生命・身体に危険のあることを知りうる汚染物質の排出については、企業は、経済性を度外視して、世界最高の技術・知識を動員して防止措置を講ずべきである」。予防原則にまで踏み込んだ判決は画期的だった。産業や経済より人間の命の方が大事だと、司法は強く訴えたのだ。私たちはあの時、ゆったり歩く、もう一つの道を選ぶこともできたのだろう。


 四日市では「スモッグの中のビフテキよりも、青空の下の梅干しおにぎり」というスローガンが叫ばれた。工場には脱硫装置がついて黒い煙は白くなった。大気汚染防止法が改正され、環境庁が発足した。それでも私たちは、青空の下のおにぎりを選ばずに、成長の影を引きずった。


 弁護団事務局長の野呂汎さん(81)は「この国では、エネルギー政策の変わり目に歴史的事件が起きる」としみじみ語る。


 四日市市は二十九日、節目の記念式典を市としては初めて開く。福島の事故に、歴史を伝え残す責任をかき立てられたかのように。


 大量の電力を安価で効率的に産業界へ送り込む。これが原発が選ばれる最大の理由であった。そのために、命や健康への影響が軽視され、施設の老朽化や自然災害の危険を顧みなかった。廃炉や廃棄物処理などの費用をみれば、割安でも効率的でもないのだが、その結果が福島原発事故である。

◆私たちみんなで選ぶ


 市内の水処理会社に勤める榊枝正史さん(27)は、今年から「語り部」を名乗り始めた。「公害とは関係なく生きてきた世代にも、未来を考えてもらいたいから」と、昔語りではなく五感に訴える連続講座を開いている。


 例えば磯津でとれた魚を実際に食べてもらう、というような。


 四十年前と同じ岐路に立ち、四日市は再び語り始めた。だが、石油時代の次の針路は結局、私たちみんなで選ぶのだ。それもあの時と同じである。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

会社法改正にも注目。日本企業のガバンナンス力向上に向け、社外取締役義務付けは是非義務化を。

2012-07-19 15:54:10 | 国政レベルでなすべきこと
 このたびの会社法改正もまた、日本の経済活動の根幹をなす日本の企業のありかたに大きく影響を与えます。

 日本の企業、これからは、きちんとしたガバナンスを行わねば、世界の競争にはついていけないのではないでしょうか。
 変わらねばなりません。

 しかし、たいへん残念ながら、社外取締役義務付けは、見送られそうです。
 
 株式をお持ちの皆様はじめ、ひとりひとりに関わる重要なテーマだと思っています。
 会社のどのようなガバナンスがよいか、そのための法改正はどうあるべきか、声を上げていかねばならないと思うところです。


 会社法改正にも注目していきたいものです。

****日経新聞(2012/07/19)******
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDC1800J_Y2A710C1EA2000/

経営監視実効性が課題に 会社法改正の原案
2012/7/19 0:53

 法制審議会(法相の諮問機関)の会社法制部会は18日の会合で、会社法改正の要綱原案を示した。上場企業などに外部からのチェック機能を強めるための社外取締役設置の義務付けは見送る一方で、置かない場合は理由を開示するよう求めた。親会社の株主が子会社の経営陣の責任を追及できる制度の導入も盛り込んだ。

 会社法制部会は企業統治のあり方について2010年に議論を始めた。今回の原案をもとに今年8月中に最終案をまとめる。法制審は9月に法相に答申する予定だ。法務省は秋に想定される臨時国会に会社法の改正案を提出したい考えだ。

 焦点だった社外取締役の義務付けは見送られたが、企業統治の改善や経営の透明性を求める投資家や株主の視線は厳しい。企業は経営の実態に合った実効性のある仕組みづくりが引き続き求められる。

 社外取締役については、昨年12月の中間試案で「監査役会設置会社で会社法上の大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)」か「有価証券報告書の提出義務のある企業」に、設置を義務付ける案を出していた。これに対し経済界は、人材確保が難しいうえ「一律に義務付けても企業統治の改善効果があるかわからない」(経団連)と強く反発してきた。

 18日の部会では、義務付けの見送りで経済界に配慮する一方、有価証券報告書を提出する会社に対して、社外取締役を置かない理由を株主総会の事業報告に載せる妥協案を提示。証券取引所が社外取締役を1人以上確保する上場ルールを導入する可能性に触れ、法律外での緩やかな規制に委ねる考えを示した。経済界の委員は社外取締役を置かない理由の開示に同意せず、結論は持ち越した。

 原案は、会社の形態として社外取締役が過半数を占める「監査・監督委員会」を選べる制度の導入も明記した。経営と監督を分け、企業が一般的に導入している監査役会に代わって経営監視を強める仕組みだ。ただ、社外取締役の設置義務付けが見送られたことで、「監査・監督委員会」の制度を利用する企業は少ないとの指摘も出ている。

 親会社の株主が子会社の取締役の責任を追及できるようにする「多重代表訴訟制度」の導入も提示した。親会社の株主が財務状況のわかりにくい子会社の不正を監視する狙いがあるが、制度の乱用を懸念する経済界には反対論が強い。

 このため、訴えを起こせるのは「親会社の発行済み株式を1%以上持つ」大株主に限定。訴える相手先も「親会社の総資産額の5分の1超を持つ子会社の役員」に制限した。

 日本商工会議所の岡村正会頭(東芝相談役)は18日、社外取締役の義務付け見送りについて、現状の委員会設置会社や監査役設置会社はなんらかの形で社外役員を導入している場合が多いと指摘。「義務化は不要だ」と語った。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

印刷会社従業員らの胆管がんの問題。喚気と防毒マスクなど作業環境の改善をまず。労働安全衛生法

2012-07-19 10:30:01 | 医療
 印刷会社従業員らの胆管がんの問題。

 特定まで、時間かかるということ。

 換気や防毒マスクなど労働環境が改善されることがまず、実施されることが必要です。


******産経新聞(2012/07/19)*******
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120719/bdy12071908580002-n1.htm

【胆管がん】
劣悪環境、発症の引き金か、調査対象物質6万種、長期化必至
2012.7.19 08:56

 大阪市の校正印刷会社に端を発した胆管がん問題は、別の健康被害とも因果関係がある疑いが強まった。被害を引き起こす原因物質の特定には至っていないが、厚生労働省は同社の劣悪な作業環境が発症の引き金になった可能性が高いとみている。同省は近く疫学的調査チームを編成し、実態解明を目指す方針だが、調査対象の化学物質は約6万種に達し、原因特定には難航が予想される。


密閉された作業場


 「十分な換気をしなかったことが発症に影響した可能性がある」。元従業員らの胆管がんが続出した同社について、厚労省労働基準局安全衛生部計画課の高崎真一課長は、業務と発症の因果関係が強く疑われるとの見解を示している。

 同省はこれまで、同社の校正部門に所属する42人のうち18人から聞き取り調査を実施。胆管がんを発症した元従業員ら13人のほか、胃がんや直腸腫瘤(しゅりゅう)、劇症肝炎などの症例がみられた6人についても業務との関連を調べる方針で、一連の問題は胆管がん以外の症例にも広がる様相を呈する。

 同社の地下作業場は、湿気で紙が膨張しないよう閉め切られた状態だった。元従業員らの証言によると、作業場内には労働安全衛生法の規則で一部の有機溶剤を使用する際に設置が義務づけられる「局所排気装置」がなく、防毒マスクの着用も徹底されていなかったという。

「換気を何とかしてほしいと訴えても、社長は聞き入れてくれなかった」と振り返る元従業員の一人は、かつて社長が豪語した言葉を今でも覚えている。

 「うちの換気設備は西日本一や」


見えぬ因果関係


 同社で使われた洗浄剤には、発がん性が疑われる化学物質「1、2ジクロロプロパン」と「ジクロロメタン」が含まれており、厚労省は「原因として有力な候補の一つ」とみている。

 2種類の化学物質は、米政府機関によるマウスでの動物実験で肝臓がんが増えることが知られていたが、人体への発がん性の疫学調査は少なく、米サウスカロライナ州の化学繊維工場で高濃度のジクロロメタンにさらされた従業員3人が胆道(胆のう・胆管)がん、1人が肝臓がんで死亡したことが1990年に論文で発表された程度だった。

 国際がん研究機関によるヒトの発がん性評価は、1、2ジクロロプロパンについては「(リスクを)分類できない」とし、ジクロロメタンは「発がん性の可能性がある」としているが、人体への影響はまだはっきりしていない。



分析に数年


 厚労省は一連の問題を受け、印刷会社などで規制されずに使われている6万種の化学物質の中から、胆管がんの原因物質の特定や、その他の発がん性などを調べる方針だ。しかし、膨大な数の分析結果を出すまでには「数年はかかる」(担当者)といい、長期化は避けて通れない。

 同省の疫学調査では、印刷会社以外の胆管がんの発症例についても調査し、原因物質が特定できれば「使用の規制強化も検討する」としている。ただ、化学物質をめぐっては企業などが新たな種類を使用するたびに国が規制をかける「いたちごっこ」の状態が続いており、抜本的な解決に向けた対策が求められる。


http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120719/dst12071911220002-n1.htm
時効の遺族4人が労災申請 受理見通し
2012.7.19 11:21

 大阪市の校正印刷会社の元従業員らに胆管がんが多発している問題で、死後5年とされる遺族給付の時効を過ぎた元従業員4人の遺族が19日、大阪中央労働基準監督署に労災申請した。同社関連の労災申請者は11人となった。一連の問題で厚生労働省は、時効が過ぎても申請を受け付けるよう全国の労働局に指示しており、受理される見通し。

 産経新聞の調べでは、元従業員ら13人が胆管がんを発症。それ以外にも業務との関連が疑われる健康障害を少なくとも6人が発症しており、この印刷会社での発症者は計19人、うち8人の死亡が明らかになっている。

 民間支援団体「関西労働者安全センター」によると、4人はいずれも印刷見本を刷る校正部門に所属し、1年以上の勤務歴があった。発症期間は平成8年~16年で、12~18年に亡くなった。

 日本人の胆管がんの発症は50歳以上の高齢者が多いとされるが、死亡時の年齢は27~41歳で、このうち27歳と37歳の男性2人は在職中に死亡した。

 労災保険法では、労災申請の時効について、労働者が死亡した場合の遺族給付は5年としている。通常は死亡翌日から起算して運用されるが、厚労省は今後、時効の凍結を検討し、給付の是非を慎重に判断するとみられる。

 厚労省が561の印刷事業所を対象に実施した全国調査では、大阪のほか、宮城、東京、石川、静岡の5都府県で発症者が見つかっている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

企業不祥事防止の有効な手段のひとつ:「社外取締役の義務化」を見送り 会社法改正案で法務省

2012-07-18 11:29:29 | 国政レベルでなすべきこと
 オリンパスによる損失隠し事件や大王製紙元会長による巨額借り入れ事件を、他にどのように防ぎえたのか。

 「社外取締役の義務化」は、企業の不祥事を防止するには、ひとつの有効な手段であったのではないかと思います。

 今までと同じことを繰り返していれば、日本の発展は望めません。


*****産経新聞(2012/07/18)******
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120718/biz12071810550005-n1.htm

社外取締役の義務化を見送り 会社法改正案で法務省
2012.7.18 10:53
 法務省が会社法見直しの一環で検討してきた社外取締役選任の義務づけを見送る方針を固めたことが18日、分かった。同日開かれる法制審議会(法相の諮問機関)の会社法制部会で方針を示す。経済界の反発などを配慮した。

 オリンパスによる損失隠し事件や大王製紙元会長による巨額借り入れ事件など企業不祥事が相次いだことを受け、政府・民主党が法改正の検討を行ってきた。昨年12月に法制審がまとめた会社法改正中間試案では企業統治強化のため、独立した立場で経営を監視する社外取締役の設置を義務づける案を盛り込んでいた。

 ただ、経済界は「経営の自由を制約する」など義務づけに反発。民主党が4月にまとめた中間提言でも社外取締役の設置の義務化は、「法律ではなく上場規則などでカバーすべきだ」としていた。こうした意見を踏まえ、法務省は義務化を見送った。

 法制審は8月中にも最終案を決定。法務省は早ければ今秋に見込まれる臨時国会に会社法改正案を提出。平成25年中の施行を目指す。


******東京新聞 夕刊(2012/07/18)*****
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2012071802000234.html


社外取締役義務化せず 法制審 経済界反発で見送り

2012年7月18日 夕刊

 法務省の法制審議会(法相の諮問機関)の会社法制部会は、取締役会の監督機能を拡充するため検討していた社外取締役の選任の義務化を見送る方針を固めた。十八日午後の部会で方針を示す。昨年十二月にまとめた会社法改正の中間試案では、株式を公開している大企業に一人以上の社外取締役の選任を義務付ける内容だったが、経済界の「一律の対応はなじまない」との反発に配慮した。


 会社法改正はオリンパスや大王製紙など大企業の不祥事が相次ぐ中、企業統治を強化し経営の健全性を高めるのが狙い。社外取締役の義務化見送りに批判が出る可能性もある。


 十八日までにまとめた要綱原案では、親会社の株主が子会社役員の責任を追及できる「多重代表訴訟制度」創設は盛り込まれた。


 十八日午後の部会で要綱原案を提示し、八月中に要綱案を決定する予定。法務省は法制審の答申を受け、今秋に予定される臨時国会に改正法案提出を目指す。

 多重代表訴訟制度については、訴えを起こせる対象者を「親会社の発行済み株式を1%以上持つ株主」と規定。訴える相手についても「親会社の総資産の五分の一以上を持つ子会社」の役員に限定した。制度の乱用を防ぐ狙いだが、大株主しか提訴できない形となった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

健康な妊娠・出産のために注意したい感染症について(横浜市衛生研究所)

2012-07-17 23:00:00 | 小児医療
 以下、横浜市衛生研究所が、わかりやすくまとめられていました。
 (情報提供は、聖路加看護大学 堀先生に感謝。)


************************************
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/ninshin1.html


健康な妊娠・出産のために注意したい感染症について


妊娠・出産と感染症

 私たちの周囲には、目には見えませんが、細菌やウイルスといった微生物が無数に存在します。人に感染症を引き起こす微生物である病原体も存在します。これらの病原体の中には、妊娠中の女性が感染すると、妊娠の経過やおなかの赤ちゃんに悪い影響を与える病原体もあることが知られています。ここでは、健康な妊娠・出産のために、そのような病原体に対する対策を考えて見ましょう。


食品からの病原体

 リステリアは、ある種のチーズや、滅菌消毒されていない乳製品の中に見出されることがある細菌です。また、ニワトリ・アヒル・ガチョウ・七面鳥などの肉にも見られることがあります。妊娠中にこのリステリアに感染した場合、新生児に命にかかわる敗血症や髄膜炎を起こすことがあります。

 トキソプラズマは、加熱不十分な肉や、洗っていない果実や野菜で見出されることがある原虫です。妊娠中にこのトキソプラズマに感染した場合、生まれてくる赤ちゃんが目や耳が不自由になったり、精神的発達の遅れが見られたりすることがあります。生まれた直後は問題がないように見えても、後になってこどもに目や脳の問題が出現してくることがあります。

 妊娠中は、食品からのリステリアやトキソプラズマの感染を防ぐために、食品について、以下のことに注意しましょう。

 食べる前に、肉などの食品を十分に加熱すること。

 食べる前に、果実や野菜の皮をむいたり、水で十分に徹底的に洗うこと。

 生の肉や、果実・野菜に触れた手や台所用品、まな板や流しなどを、洗剤と水とで十分に洗うこと。

 フェタチーズ、ブリーチーズ、カマンベールチーズ、ロクフォーチーズは、食べるのを控えましょう。

 滅菌消毒していない生のミルクや、その生のミルクから作ったソフトチーズのような食物を飲食するのは、控えましょう。

 さらに詳しくは、当・横浜市衛生研究所ホームページの「感染症情報」の中の「リステリア症について」および「トキソプラズマ症について」をご覧ください(下線部をクリックして下さい)。



ペットからの病原体

 トキソプラズマに感染したネコがトイレにしている場所との接触によって、私たちはトキソプラズマに感染する可能性があります。ネコは、トキソプラズマに感染した小動物や生肉を食べることにより感染することがあります。トキソプラズマに感染してもネコは無症状のこともあり、そのような場合には、ネコがトキソプラズマに感染しているかどうか、外見からは知ることができません。妊娠中にこのトキソプラズマに感染した場合、生まれてくる赤ちゃんが目や耳が不自由になったり、精神的発達の遅れが見られたりすることがあります。生まれた直後は問題がないように見えても、後になってこどもに目や脳の問題が出現してくることがあります。

 妊娠中は、ネコからのトキソプラズマの感染を防ぐために、ネコについて、以下のことに注意しましょう。

 ネコとの接触はできるだけ避けましょう。

 ネコの排泄物が混入している可能性がある土や砂には触れないようにしましょう。土や砂に触れるときは手袋などをして、直接触れないようにして、触れた後ですぐに手をよく洗いましょう。

 ネコのトイレは、毎日、他の人に掃除してもらいましょう。

 ネコは屋内で飼いましょう。

 屋外にいたり、生の肉を食べていたようなネコを、新しく家の中で飼うのは止めましょう。

 加熱が不十分な肉や生の肉は、生きている病原体(トキソプラズマのシスト)を含んでいる可能性があります。十分に加熱して病原体を殺すことが大切です。ネコに与える場合でも、人が食べる場合でも、肉は十分に加熱しましょう。また、缶詰や箱詰めのキャットフードをネコのエサにしましょう。

 さらに詳しくは、当・横浜市衛生研究所ホームページの「感染症情報」の中の「トキソプラズマ症について」をご覧ください(下線部をクリックして下さい)。

 また、オウム・インコなど私たちの身の回りにいる鳥などが、一見健康に見えても、オウム病に感染していることがあります。オウム病に感染している鳥などとの接触によって私たちはオウム病に感染することがあります。妊婦が感染して、早産・流産・死産になるような場合もあります。オウム病が心配されるような鳥などが身近にいる場合には、獣医に相談しましょう。

 さらに詳しくは、当・横浜市衛生研究所ホームページの「感染症情報」の中の「オウム病について」をご覧ください(下線部をクリックして下さい)。



こどもたちからの病原体

 こどもたちは、いろいろな感染症に感染しますが、軽い症状のものが多いです。しかし、それらの感染症の中には、妊娠中に感染すると、おなかの中のこどもが悪影響を受ける場合があるものも知られています。妊娠中には、学校・幼稚園・保育園・託児所・小児科医療機関等のようなこどもたちとの接触が多い職場に勤めているような場合、あるいは家族に小さなこどもがいるような場合には、こどもたちからそのような感染症の病原体を受け取って感染してしまうようなことは、避けるように注意する必要があります。

 風疹(三日はしか)や水痘(みずぼうそう)に対しての免疫のない人が、妊娠中に風疹や水痘にかかったりすると、おなかの中のこどもの、目や耳が不自由になったり、精神的発達に遅れが出たり、流産・早産になったりすることがあります。また、妊娠中に、伝染性紅斑(リンゴ病)にかかった場合には、流産・早産・死産になることがあります。また、妊娠中にサイトメガロウイルス(CMV)に感染すると、誕生後にこどもに学習面での問題が生じることがあります。

 妊娠中に母親が麻疹(はしか)にかかると、早産、自然流産、低体重児出産の確率を高めます。但し、麻疹が原因の先天奇形はまれとされています。

 妊娠中のムンプス(流行性耳下腺炎、おたふくかぜ)の罹患は、先天性奇形と関係ないとされています。しかし、妊娠初期の場合には、流産の確率が高まります。

 妊娠中のエンテロウイルスの感染は、流産、死産や先天性奇形と関係ないとされています。しかし、出産の直前の時期に妊婦が感染すると、新生児がエンテロウイルスに感染する恐れがあります。感染した新生児は、通常は軽い症状を起こすだけですが、まれに、肝臓・心臓を含む多くの臓器に感染を起こし死亡する場合もあります。

 妊娠中には、風疹、水痘、麻疹(はしか)、ムンプス(流行性耳下腺炎、おたふくかぜ)、サイトメガロウイルス感染症、エンテロウイルス感染症のこどもたちあるいは伝染性紅斑に感染の疑いのこどもたちとは、できるだけ接触しないようにしましょう。接触があったときには、すぐに医師に相談しましょう。

 サイトメガロウイルス(CMV)に感染していても、無症状のこどももいます。無症状でもつばや尿の中にサイトメガロウイルス(CMV)が出て来るので、こどもたちのオシメを替えたようなときは、すぐによく手を洗いましょう。

 風疹、水痘、麻疹(はしか)とムンプス(流行性耳下腺炎、おたふくかぜ)には予防接種(ワクチン)があります。将来の妊娠を考えている女性は、早めに血液検査(風疹、水痘、麻疹とムンプスに対する抗体検査)を受けて風疹、水痘、麻疹とムンプスに対する免疫の有無を確認し、免疫がない場合には、早めに予防接種(ワクチン)を受けましょう。風疹、水痘、麻疹とムンプスの予防接種(ワクチン)については、妊娠中は接種することができませんし、接種後3ヶ月間は妊娠するのを避ける必要があります。

 さらに詳しくは、当・横浜市衛生研究所ホームページの「感染症情報」の中の「風疹について」、「水痘について」、「麻疹(はしか)について」、「ムンプス(流行性耳下腺炎、おたふくかぜ)について」、「伝染性紅斑について」、「サイトメガロウイルス感染症について」、「エンテロウイルスについて」をご覧ください(下線部をクリックして下さい)。



性交渉からの病原体

 多くの病気が性交渉によって広がります。性交渉によって広がることのある感染症をまとめて、性感染症(STD)ということがあります。性感染症(STD)としては、クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、淋菌感染症(淋病)、梅毒、トリコモナス感染症、B型肝炎、HIV感染症などがあります。妊娠中に性感染症(STD)に感染すると、そのままではおなかの中のこどもが悪影響を受ける場合があります。性感染症(STD)に感染していても、母親が無症状の場合もあるので、まだ生まれて来ないこどものために、性感染症(STD)の検査を妊娠中の母親が受けることもあります。

 コンドームは、妊娠を防ぐ目的もありますが、性感染症(STD)を防ぐ目的もあります。性交渉時は、毎回、最初から最後までコンドームを使用しましょう。

 さらに詳しくは、当・横浜市衛生研究所ホームページの「感染症情報」の中の「性器クラミジア感染症」、「淋菌感染症(淋病)について」、「性器ヘルペス感染症について」、「梅毒について」、「トリコモナス感染症について」および「HIV感染症について」をご覧ください(下線部をクリックして下さい)。



その他の病原体

 B群連鎖球菌(GBS)は、妊娠女性の5人に1人の割合で、腸や陰部に認められる細菌です。B群連鎖球菌(GBS)が認められても、通常、B群連鎖球菌(GBS)を持っている女性は無症状のことが多いです。しかし、生まれてくるこどもでは、血液・髄液・肺などで重症の感染症を起こすことがあります。B群連鎖球菌(GBS)の検査では、膣や直腸をこすって検体を採取します。妊娠35-37週で検査が行われます。この検査でB群連鎖球菌(GBS)を母親が持っていることが確認されたり、陣痛・分娩時の発熱などの場合に、このB群連鎖球菌(GBS)に赤ちゃんが感染しないように、ペニシリンのような抗生物質が母親に点滴投与されることがあります。

 さらに詳しくは、当・横浜市衛生研究所ホームページの「感染症情報」の中の「B群連鎖球菌(GBS)感染症について」をご覧ください(下線部をクリックして下さい)。


2001年4月5日初掲載
2002年1月25日増補
2008年9月2日増補
2009年2月20日増補
2012年5月1日増補

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

市管理の土地に放置された可燃性廃棄物に放火され隣接建物に延焼 国家賠償法法1条1項の注意義務違反

2012-07-16 23:00:00 | シチズンシップ教育
 公の施設土地の管理のありかたについて争われた事案です。

 以下、八尾市の注意義務違反があったとして、一部原告が勝訴しました。


***************************
  主   文

 1 原告の主位的請求をいずれも棄却する。
 2 被告八尾市は,原告に対し,2110万9466円及びこれに対する平成19年10月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 3 原告のその余の予備的請求を棄却する。
 4 訴訟費用は,原告に生じた費用の5分の2と被告八尾市に生じた費用の5分の4を被告八尾市の負担とし,その余はすべて原告の負担とする。
 5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。



事案の概要
  Y1大阪府Y1が所有し、八尾市Y2が管理する土地に隣接する工場内でプラスチック加工業を営んでいたXが,当該土地に放置された可燃性廃棄物に何者かが放火してXの工場に延焼し工作機械の焼損等の被害を受けたところ,当該火災の原因はYらが当該土地の適切な管理を怠ったことにあるとして,主位的にはYらに対し国家賠償法(以下「法」という。)2条1項及び法3条1項に基づき連帯して,予備的にはY2八尾市に対し民法717条又は法1条1項に基づき,工作機械の代替品又は修理代等の損害,慰謝料及び弁護士費用の合計2696万4596円及びこれに対する不法行為の日である平成19年10月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求した事案である。

 Xは,別紙物件目録1記載の土地上にある別紙物件目録2記載の建物(以下「本件建物」という。)の2階の一部分を間借りし,同所においてAの屋号でプラスチック加工業を営む者である(甲1~3,7,丙2の1・2)。

 Y1大阪府は,別紙物件目録3記載の土地(以下「本件土地」という。)を所有し,都市計画道路東大阪中央線整備予定地としている(甲4)。

 Y2八尾市は,Y1大阪府からの委託に基づき,本件土地の管理をしている(乙1)。
  (2) 本件建物と本件土地は,本件建物の南西部分と本件土地の北東部分の一部(別紙地図の赤色部分付近)において隣接しており,その位置関係は別紙地図のとおりである(甲5)。
  (3) 平成19年10月29日午前1時55分ころ,何者かが放火して,本件土地のうち別紙地図の赤色部分で火災が発生し(以下「本件火災」という。),本件建物に燃え移り,Xが間借りしていた部分にも延焼した。


****関連法令******

国家賠償法
(昭和二十二年十月二十七日法律第百二十五号)



第一条  国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
○2  前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

第二条  道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
○2  前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。

第三条  前二条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。
○2  前項の場合において、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有する。

第四条  国又は公共団体の損害賠償の責任については、前三条の規定によるの外、民法の規定による。

第五条  国又は公共団体の損害賠償の責任について民法以外の他の法律に別段の定があるときは、その定めるところによる。

第六条  この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する。

   附 則 抄


○1  この法律は、公布の日から、これを施行する。
○6  この法律施行前の行為に基づく損害については、なお従前の例による。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

築地市場移転候補地 豊洲の土壌汚染対策 法令違反の疑いが濃厚。都はそれでも移転を進めるか。

2012-07-15 23:00:00 | 築地を守る、築地市場現在地再整備

 築地市場移転候補地、豊洲6丁目東京ガス工場跡地の土壌汚染対策は、法令違反の疑いが濃厚です。

 築地市場移転関連裁判における重大争点のひとつです。
 裁判という公開の場で、法令違反の真偽も含め明らかにしていきたいところです。

 ちなみに、次回、築地市場移転関連裁判の日程は、

*豊洲汚染土壌コアサンプル廃棄差止請求訴訟 控訴審
 平成24年7月26日(木) 14時~ 東京地方裁判所 822号法廷

*豊洲移転公金支出金返還訴訟 
 平成24年9月5日(水) 14時~ 東京地方裁判所 522号法廷


 法令違反に関して、市場関係団体からも指摘がなされ、業界新聞に、以下、関連記事が出されていました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

7/15日曜日13時~20時半、月島草市最終日!3番街ヨーヨー釣りとバンバンボールやってます。

2012-07-14 23:00:00 | NPO・地域力

 7/15日曜日、月島草市二日目というか最終日!

 
 商店街若手起業家仲間 盛月会で、出し物  ヨーヨー釣りとバンバンボールやってます。

 場所は、三番街 月島のお風呂屋さんがあるエリア。

 ヨーヨー釣り 一回150円、釣れなくても一個ついてきて、何個釣ってもよし。
 五個釣ったら、隣で売っているバンバンボールと交換可能。

 バンバンボールは、300円で売っています。
 早い段階で、売り切れたら御免なさい。

 いらっしゃいませ。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

憲法学で最も難しい部分「適用違憲」をわかりやすく解説『適用違憲における三類型説の再検討』福井康佐氏

2012-07-13 17:31:27 | シチズンシップ教育

 「適用違憲」は、憲法で、最も難しいところのひとつ。

 以下、福井康佐氏の論文が、そのあたりをわかりやすく解説されている。

 ご参考までに。

http://www.omiyalaw.ac.jp/library/lawreview/No.7/No.7-fukui.pdf#search='福井康佐'



適用違憲における三類型説の再検討
福井康佐

はじめに· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 52
I 適用違憲の意義· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 52
II 適用違憲における三類型説の再検討· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 57
III 適用違憲の類型化の意味と類型選択に係る問題· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 75

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

いよいよ、月島も夏本番の始まり。7/14-15 13時~20時半 月島草市 よいこのみんな待っています。

2012-07-13 16:43:41 | NPO・地域力

 いよいよ、月島も夏本番を迎えます。

 明日、あさって7/14-15、月島西仲通り商店街、月島もんじゃストリートで草市が開催。


 これで夏が始まる感じを例年受けています。
 そして最高潮が、中央区主催の東京湾大華火祭。
 大江戸盆踊りで締めくくり。

 わんぱくキッズと、もらい湯キャンプなんかが最中に入り、
 それと今年は大事な、住吉神社のおみこしがある年。



 さて、草市。
 商店街起業家仲間 盛月会で、草市にいつもの出し物をします。
 
 今年は、ヨーヨー釣りとバンバンボール。

 よいこのみんな待っています。
 病気のお子さんも早く治してくださいね。

 LSの期末試験に追われる中、祭りやおみこし。
 大丈夫か・・・と個人的には、頭の切り替えが大変。

出番をまつヨーヨー

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

胆管がん、労災時効(従業員死亡翌日から5年)の不受理ないよう6月下旬指示…厚労省→全国労働局

2012-07-13 11:26:06 | 医療

 印刷会社元従業員の胆管がんの話は、国が防ぐ手立てをしていたか重要な問題です。

 自分のメモの意味もあり、記事を見ておきます。


*****読売新聞(2012/07/13)*****
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120713-OYT1T00503.htm

胆管がん、労災時効不受理ないよう指示…厚労省


 印刷会社の元従業員らが胆管がんを相次いで発症した問題を受け、厚生労働省が従業員の遺族らから労災の申請があった場合、時効を理由に受理を拒むことがないように、全国の労働局に指示していたことがわかった。

 胆管がんの発症原因ははっきりしておらず、原則、死後5年とされる遺族補償給付の時効などを適用すると受給できないケースが出ることに配慮した。

 6月下旬に同省担当者が全国の労働局にメールで連絡した。以前から時効を理由に労災申請の受け付けを拒むことはないが、改めて徹底したという。

 労災保険法では、従業員の遺族が申請する遺族補償給付の時効は通常、従業員の死亡の翌日から5年が経過すれば受給する権利を失うと定めている。

(2012年7月13日11時09分 読売新聞)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

その首都高速道延伸(豊洲~晴海1.2km)は、今この時期に必要ですか?239億円

2012-07-12 16:20:25 | 街づくり
 まちづくり協議会が、晴海地区、勝どき豊海地区、そして月島地区と開催されました。

 なんども、なんども言っていますが、開催の通知が、区民になされることなく開催されています。
 中央区は、この姿勢を改める必要があります。
 区報に載せるだけでいいのです。ホームページに掲載するだけでいいのです。まずは。
 なぜ、それだけのことさえ、できないのでしょうか?

 それは、それとして、このたびのまちづくり協議会の重要なテーマのひとつは、首都高速晴海線の延伸の問題。

 以下、概要が説明され、その後意見交換がなされました。


 本当に必要な延伸なのか、十分に考える必要があります。
 例えば、それだけのお金があるならば、まずは、復興に生かすべきなのではないでしょうか。
 あれだけの大震災に見舞われておきながら、何事もなかったように既存の計画ありきで進める姿勢には、疑問を感じざるを得ません。

 





月島地区まちづくり協議会
                            平成24年7月11日



議題1:首都高速晴海線(晴海~東雲JCT)


整備目的
晴海線及び周辺街路の交通量の増加
築地市場移転に伴う周辺地域の物流道路ネットワークの重要性

整備内容
事業位置 ・・晴海2丁目~江東区有明2丁目(延長2.7Km)
 今回整備範囲 晴海~豊洲1.2Km
道路の区分・・第2種第2級
設計速度 ・・60km/h
構造   ・・高架構造
車線数  ・・往復2車線(暫定)
予測交通量 ・・晴海出入口 8千台

首都高速晴海線(晴海~東雲JCT)
事業位置づけ
・臨海部開発事業における交通基盤の一部
・月島・晴海区等、周辺の交通状況の改選
・臨海部の開発に対応した湾岸線との連絡強化および物流の効率化

整備概要
延長 晴海~豊洲 1.2km
幅員 14.2m
料金所 豊洲料金所に併設
事業年度 26年度(27年度に延伸手続き中)
事業費 239億

地区開発
・首都高速晴海線沿岸では、ウオーターフロントの特性を活かした複合市街地の形成が図られている
・晴海・勝どき・月島において、開発による将来的な需要増加が見込まれ、マンションの建設が急ピッチで進行している。
・首都高速晴海線については、地区開発状況に合わせて、湾岸線へのスムーズなアクセスを可能とすることを目的とし整備を行う。



議題2:月島一丁目地域密着特別養護ホームの整備

施設名 月島一丁目地域密着型特別養護老人ホーム
場所 月島一丁目三,四,五番地区
建物規模 鉄筋コンクリート
     再開発事業A棟中層部(地上11階・地下2階建)の3・4階部
専有延床面積  約1,571㎡
施設内容 地域密着型特別養護老人ホーム(定員29名)
     短期入所生活介護(ショートスティ)(定員6名)
     本体施設から概ね20分以内で移動でき、本体施設と密接な連携を図ることができるサテライト型施設として整備
     全個室のユニットケア(1ユニット9~10人:少人数で入所者の状況を把握しやすく、各ユニットごとに家庭的な雰囲気で介護を行う)
運営業者 社会福祉法人 長岡福祉協会
     本体施設 特別養護老人ホーム 新橋さくら園


【質疑応答】
住民S氏:
地元の気持ちを反映していないではないか。
平成22年 中央区議会の意見書
オリンピックはいつくるか知っているのか。
選手村になる可能性がある。
くる可能性があるのに再開発されていなければどうにもならない。
我々の立場で考えてくれ。地下なら話は別。地上で車込んで困るのは勝どき、月島、晴海
の住民だ。やっと晴海通りに環2ができる。晴海通りの車を減らす建前で造った。
それにあたり都と代替の交渉をやっている。
250億も使うなら日本橋の橋をすこしでも無くしてほしい。
検討して、区に根回ししてお願いするならわかる。いきなりではないか。
区が可哀そうだ。考えてくれ。
市場の移転に反対だったが泣く泣く賛成した。都がよこした土地は場外は晴海の高速路線
のうえに建つ。そんなめちゃくちゃな行政があるのか。
銀座から晴海でなくお台場まで電車をひかせたいと条件を出している。江東区と話合いし
ていると思う。行政に感情がないのなら
環状2号線はストップさせる。猪瀬のところに行く。東京都はうそつきだと新聞社にいう。
中央区に迷惑はかけたくないから黙っていた。今日は、説明会でない。話だ。
晴海・月島・勝どきは一緒だ。今度の時は一緒にやってほしい。
今の状況でたくさんだ。高速線はいらない。空いた土地は他で活用してもらう。
今まで散々、混雑する交通状況で我慢してきたのに市場ができるからと今頃高速をつなげ
ようとしている。中央区をなめている。
ここまで月島・晴海・勝どきを栄えさせてくれたのは、中央区であり都ではない。
区の行政の指導でここまできた。人口が増えたのも区のお陰だ。絶対通させない。

区:
この意見書は、方針は変わっていない。晴海に事業認可がでている。
苦渋でこの場を設定した。

今やることへの説明不足
そもそも必要なのか
交通渋滞の悪化懸念

今までの話を、大きく3点の課題となるのではないか。

高速道株式会社:
皆さんの意見を御受けしている。
もともと開発の為に、晴海から汐留までの事業化が認められている。

区:→高速道株式会社
もう少し詳細に一度持ち帰って頂き、必要性の説明をしていただけますか。

高速道株式会社:
私どももこの場をもって工事に着手するということではない。
何度も打ち合わせ、話合いをさせて頂きたい。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

 「国民の生活が第一」所属議員と役職一覧

2012-07-12 12:28:57 | 国政レベルでなすべきこと
 「国民の生活が第一」という政党名がいかがなものかという話題が、ネット上で散見されます。

 政党名も大事かもしれませんが、どのような政策をもった政党であるかを、どの政党についてもそうであるように、分析し判断をしていくべきところです。


 
 所属議員、役職一覧を掲載します。


*****読売新聞(2012/07/12)********
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120712-OYT1T00364.htm

 「国民の生活が第一」所属議員と役職一覧


 (丸かっこ内は選挙区。役員の数字は衆院当選回数、参院は《》。敬称略)

 ◆役員
【代表】小沢一郎〈14〉(岩手4)※兼選対委員長
【代表代行】山岡賢次〈5〉(栃木4)
【幹事長】東祥三〈5〉(東京15)
【幹事長代行(政策担当)】牧義夫〈4〉(愛知4)
【幹事長代理(国会担当)】樋高剛〈3〉(神奈川18)
【国会対策委員長】鈴木克昌〈3〉(愛知14)
【財務委員長】佐藤公治《1》(広島)
【総務委員長】岡島一正〈2〉(千葉3)
【広報委員長】青木愛〈2〉(東京12)
【組織・団体委員長】小宮山泰子〈3〉(埼玉7)
【衆院議員会長】熊谷貞俊〈1〉(比例近畿)
【参院議員会長】広野允士《2》(比例)※兼副代表
【参院幹事長】森裕子《2》(新潟)※兼幹事長代行
【参院国対委員長】主浜了《2》(岩手)
【参院政審会長】中村哲治《1》(奈良)

 ◆その他の議員(五十音順)

 【衆院・当選2回】太田和美(福島2)、古賀敬章(福岡4)、松崎哲久(埼玉10)、横山北斗(青森1)

 【衆院・当選1回】相原史乃(比例南関東)、石井章(比例北関東)、石原洋三郎(福島1)、大谷啓(大阪15)、大山昌宏(比例東海)、岡本英子(神奈川3)、笠原多見子(比例東海)、加藤学(長野5)、金子健一(比例南関東)、川島智太郎(比例東京)、菊池長右ェ門(比例東北)、木村剛司(東京14)、京野公子(秋田3)、黒田雄(千葉2)、菅川洋(比例中国)、高松和夫(比例東北)、玉城デニー(沖縄3)、中野渡詔子(比例東北)、萩原仁(大阪2)、畑浩治(岩手2)、福嶋健一郎(熊本2)、三宅雪子(比例北関東)、村上史好(大阪6)

 【参院・当選1回】谷亮子(比例)、友近聡朗(愛媛)、外山斎(宮崎)、はたともこ(比例)、姫井由美子(岡山)、平山幸司(青森)、藤原良信(比例)

(2012年7月12日10時14分 読売新聞)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

健康を必ず守る、医療と法の密接な連携が欠かせぬ場面。有害化学物質による労働者・住民の健康被害

2012-07-11 11:17:32 | 医療
 医療と法が密接な連携をもって、健康を守っていかねばならない場面が多々あることを感じています。

 法を学ぶひとつのインセンティブになっているところです。


 アスベストによるその製造加工工場で働く労働者の被害、その工場の周辺住民の健康被害が問題になったケースがありました。
 『大阪泉南アスベスト国家賠償請求事件』

 大阪地裁判決 平成22.5.19では、原告側が勝訴。

 大阪高等裁判所判決 平成23.8.25では、国側が勝訴。

 現在、最高裁で争われています。


 私は、第一審の考え方に近く考えます。

 労働環境安全確保には、その時々の科学技術水準に適法した規制が求められるところです。

 よってこの事案では、昭和47年段階で規制ができてることをもちだすだけではなく、国は、昭和35年段階で適切な規制を課し、労働者の身体生命をアスベストから守るべきだったと考えます。

 第一審では、この点の指摘がありましたが、控訴審では、昭和47年段階の規制が用い国の違法はないと主張されました。


 先日のニュース、印刷会社の胆管癌も注目していかねばなりません。
 

<第1審である大阪地裁での争点>
争点1.労働関係法における労働大臣の省令制定権限の不行使

争点2.環境関係法における厚生大臣の立法の不作為と規制権限の不行使

争点3.毒物及び劇物取締法における厚生大臣の規制監督権限の不行使

争点4.憲法、労働省設置法、厚生省設置法に基づく情報提供義務違反

争点5.被告の責任の範囲、因果関係

争点6.損害の範囲、損害額の算定


<第一審 勝訴のポイント、国の違法部分>
争点1において
*第7章第二節第三
S35旧じん肺法制定時点 
発生源対策・飛散対策は緊急の重要課題
局所排気装置はS32には実現可能で技術的基盤があり、石綿粉じん抑制措置を指導にとどめず義務付けていれば危険回避できた。
→省令制定不作為は違法

*第7章第二節第四
S47労働安全衛生法→改正特化側36条制定時点
屋内作業粉じん濃度の測定義務付けたが、結果報告義務付け・基準を超えるときの改善措置義務付けていれば改善命令出せた。
→省令制定不作為は違法

<第一審 第二節第四 引用>
第4 昭和47年の時点における被告の省令制定権限不行使の違法性の有無
   1 昭和47年までに新たに獲得された医学的又は疫学的及び工学的知見をまとめると以下のとおりである。
    (1) 前記第2のとおり,石綿粉じんばく露と肺がん及び中皮腫の発症との間に関連性があるという医学的又は疫学的知見(ただし,中皮腫が低濃度ばく露によっても発症するとする点は除く。)は,昭和47年におおむね集積されたということができる。
    (2) 粉じん測定機器については,デジタル粉じん計及びろ過材をグラスファイバーとするろ過捕集法のほか,メンブランフィルター法も実用化されており,研究者ないし測定の専門家により用いられる場合だけでなく,一般の事業場において日常的に用いられる場合においても,粉じん全体から石綿粉じんのみの濃度を計測できるだけの知見が成立していた。
    (3) 粉じん測定方法について,昭和40年に個人用のサンプラーが開発されて,ばく露濃度の測定についての知見が確立し,昭和46年の旧特化則の制定時において,環境濃度の測定方法についての知見も得られていた。
    (4) 粉じん濃度の評価指標について,昭和40年に日本産業衛生協会が定めた,じん肺(石綿肺)を対象とする許容濃度は,1立方メートル当たり2mgとされており,また,昭和43年のBOHSの勧告を受けた,英国のアスベスト産業規則は,クロシドライト以外の石綿粉じんの規制値を1立方センチメートル当たり2繊維又は1立方メートル当たり0.1mgとし,クロシドライトの規制値を1立方センチメートル当たり0.2繊維又は1立方メートル当たり0.01mgとしていた。

   2 このような状況のもとで,昭和46年5月1日に旧特化則が施行された。旧特化則は,肺がんや中皮腫の危険に着目したもので,石綿粉じんが発散する屋内作業場における当該発散源への局所排気装置の設置を義務付け(4条),またその性能要件として抑制濃度(1立方メートル当たり2mg)を採用するなど,具体的な規制措置を定めたものである。また,昭和47年10月1日に安衛法,安衛則及び特化則が施行され,上記の規定はおおむね引き継がれるとともに,定期自主検査や健康管理手帳制度の創設等新たな措置を定めた。

   3 原告らは,昭和47年の時点において省令制定権限を行使すべきであるのにしなかった点を以下のとおり列挙するので,逐次,検討する。
    (1) 石綿製品の禁止
      昭和47年の時点において,被告(労働大臣)が,石綿製品の使用又は製造を禁止することを正当化するに足りる医学的又は疫学的知見があったことを認めるに足りる証拠はなく,同時点において,被告が石綿製品の使用又は製造を禁止しなかったとしても,許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠いたものということはできない。
    (2) 局所排気装置の設置にかかる,密閉・機械化
      原告らは,工程ごとに,可能な限り機械化を進め,これを密閉した上,密閉が極めて困難な部位に局所排気装置のフードを設置するという方法をとるよう義務付けるべきであったと主張する。
      確かに,前記(第3,5)のとおり,昭和35年の時点で局所排気装置の代替措置として発散源の密閉化をも使用者に義務付けるべきであったというべきである。そして,原告らが指摘するように,可能な限り機械化してこれを密閉することが労働者の石綿粉じんばく露を回避できる効果的な措置であるということはできる。
      しかし,機械化や密閉を優先的かつ一律に事業者に義務付けることは現実的ではない(だからこそ原告らも「可能な限り」と主張している。)。したがって,「事業者は(中略)粉じんを発散する屋内作業場においては(中略)発散源を密閉する設備,局所排気装置又は全体換気装置を設ける等必要な措置を講じなければならない」(安衛則577条)という規定の仕方による義務付け以上の規定を設けることは困難であったというべきである。したがって,原告らの主張するような措置を義務付ける省令を制定しなかったことが許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠いたものとまではいえない。
    (3) 全体換気装置への除じん装置の設置
      全体換気装置への除じん装置の設置は,作業場外の一般環境への石綿粉じんの排出を防止する措置であり,これは,近隣住民の石綿粉じんばく露を避けるために必要な措置であることはいうまでもない(労働省も,旧特化則施行に当たり,通達〔昭和46年5月24日付け〕において,有害物質含じん気体の大気中への放出が公害をもたらす危険性があることに言及している。)。しかし,これは,労働者の健康,風紀及び生命の保持を行うことを目的とする安衛法に基づく省令制定権限の問題そのものではなく,この関係で違法性を論ずるのは適切ではない。
    (4) 防じんマスクの備え付け
      前記(第3,5(2)ウ)のとおり,防じんマスクは,粉じんばく露防止措置としては,補助的な手段に位置づけられるものである上,被告は,安衛則(593条,596条)及び特化則(43条,45条)において,呼吸用保護具等の保護具の備付けを義務付けているのであり,被告に省令制定権限の不行使があったとはいえない。
    (5) 保護作業着保管
      前記(第3,5(2)オ)のとおり,保護作業着の保管は,職業性ばく露の問題そのものとはいえないし,労働者の作業場外における石綿粉じんばく露の防止という観点においても,これを省令において義務付けることの必要性やその効果が明確とはいえないというべきであるから,これを省令で義務付けなかったことが違法となるとはいえない。
    (6) 基準値の法定と定期測定の結果報告
     ア 旧特化則においては,じん肺(石綿肺)を対象とする抑制濃度を,1立方メートル当たり2mgとしたが,この値は,前記1(4)の英国のアスベスト産業規則(クロシドライト以外の石綿粉じんの規制値を1立方センチメートル当たり2繊維又は1立方メートル当たり0.1mgとし,クロシドライトの規制値を1立方センチメートル当たり0.2繊維又は1立方メートル当たり0.01mgとする)と比較して大幅に高い。しかも,石綿粉じんへのばく露による肺がん及び中皮腫の発症に関する医学的又は疫学的知見が集積されており,特に中皮腫については,低濃度の石綿粉じんばく露によっても罹患するおそれのあることが指摘されていたのであるから,なおさら適切さを欠いたといわざるを得ない。しかし,従来より,このような基準値は,省令により定められてきたわけではなく,労働省の告示や通達によるものである。また,告示ないし通達による内容の違法性を検討するとしても,肺がんや中皮腫についての個人のばく露限界については統一的な基準や知見があるわけではないから,その数値の設定が他国の基準よりも緩和されていたとしても直ちに違法であると評価を下すことはできない。したがって,基準値を更に厳格に改定(法定)しなかったことが違法であったということはできない。
     イ 一方,特化則においては,石綿を製造し,又は取り扱う屋内作業場について,6か月以内ごとに1回,定期に,石綿粉じん濃度を測定し,記録を保存することが義務付けられたが(36条1項),その測定結果の報告は義務付けられなかった。しかし,石綿粉じん濃度を測定して労働環境のモニタリングをすることは,石綿粉じん被害を予防するための前提として,また,その後の労働安全行政に活用するために極めて重要であるから,そのような意義を有する測定が実行されることを担保する措置を講ずることもまた極めて重要である。そして,測定結果が抑制濃度を超える場合にはその改善を義務付ける措置を講ずることもまた重要である。前記のとおり,石綿粉じんばく露によって肺がんや中皮腫に罹患することが医学的又は疫学的に明らかになった時期であったから,なおさらである。したがって,測定結果の報告及び改善措置を義務付けることは測定を義務付けることとともに必要であり,また,そのような報告義務,改善義務を課することにさほどの障害があったとは認めがたいところである。そうすると,これらの措置を義務付けなかったことは,許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くものであったというべきである。
    (7) 特別教育の実施
      前記(第3,5(2)キ)のとおり,特別教育は,粉じんばく露防止措置としては,補助的な手段に位置づけられるものであり,これを義務付ける省令を制定しなかったことが,許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くものとはいえない。
    (8) その他,原告らは,粉じん測定法を定めなかったこと,石綿の危険性の表示及び危険性情報の開示を義務付けなかったこと,小規模零細事業への考慮を欠いていること等を理由として省令制定権限不行使の違法を主張するが,いずれも,その義務付けを省令において規定すべきであった根拠が明らかではなく,採用の限りではない。

   4 まとめ
     昭和47年において,前記3(6)イのとおり,屋内作業場の石綿粉じん濃度の測定結果の報告及び抑制濃度を超える場合の改善を義務付けなかったことは,石綿粉じんによる被害が石綿肺に止まらず,肺がんや中皮腫にも及ぶことが明らかになった段階にあっては,著しく合理性を欠いたもので違法であったというべきである



*********************************

<控訴審である大阪高等裁判所での争点>

 (1) アスベスト工場において発生及び排出される石綿粉じんのばく露によって生じる健康被害を防止又は抑制するための規制権限の行使として,労働関係法の主務大臣である労働大臣が,旧労基法及び旧安衛則が制定された昭和22年から遅くとも局所排気装置に関する労働衛生試験研究が終了した翌年の昭和32年までに,局所排気装置の設置を義務付ける旨の省令の制定ないし改定を行わなかったことは違法であるか【争点1】

 (2) アスベスト工場において発生及び排出される石綿粉じんのばく露によって生じる健康被害を防止又は抑制するための規制権限の行使として,労働関係法の主務大臣である労働大臣が,
   ア 昭和47年に制定した特化則において,アスベスト工場に設置すべき局所排気装置の性能要件として設定した抑制濃度及びその数値は,規制基準として著しく不合理なものとして違法であるか【争点2-1】
   イ 昭和47年に制定した特化則において,事業者である使用者に対し,石綿の粉じん濃度の測定及びその結果の保存を義務付けるにとどまり,当該測定結果の報告及び当該作業環境の改善措置をいずれも義務付けなかったことは違法であるか【争点2-2】

  (3) アスベスト工場において発生及び排出される石綿粉じんのばく露によって生じる健康被害を防止又は抑制するための規制権限の行使として,労働関係法の主務大臣である労働大臣が,労働関係法の委任に基づく省令である旧安衛則等を改定したり,あるいは,新たな省令を制定するなどして,下記のような義務付けを行わなかったことは違法であるか【争点3】
   ア 石綿製品の製造,加工等の作業工程を密閉,機械化し,工程間分離するように使用者に義務付けなかったこと
   イ 石綿製品の製造,加工等の各種作業に従事する労働者に防じんマスクを着用させることを使用者に義務付けなかったこと
   ウ 法令上,石綿製品の製造,加工等の各種作業に従事する労働者の作業時間を特に制限する旨の規制をしなかったこと
   エ 法令上,石綿製品の製造,加工等の各種作業に従事する労働者が着用した作業衣を当該作業場の外に持ち出さないように規制しなかったこと

  (4) アスベスト工場において発生及び排出される石綿粉じんのばく露によって生じる健康被害を防止又は抑制するための規制権限の行使として,労働関係法の主務大臣である労働大臣が,石綿製品の製造,加工等の各種作業に従事する労働者その他国民一般に対し,石綿の有害性及びその粉じんばく露によって重い健康被害を受けることの危険性情報を提供するとともに,事業者である使用者に対し,上記労働者に対して石綿粉じんのばく露を防止するための特別な安全教育を実施するように義務付けなかったことは違法であるか【争点4】

  (5) アスベスト工場において発生及び排出される石綿粉じんのばく露によって生じる健康被害を防止又は抑制するための規制権限の行使として,①環境関係法の主務大臣である厚生大臣等が,昭和45年に改正された大気汚染防止法2条5項に基づき,アスベスト工場を「粉じん発生施設」に指定せず,石綿粉じんの排出規制をしなかったこと,②労働関係法の主務大臣である労働大臣が,アスベスト工場の換気設備に除じん装置を設置するように義務付けなかったことは,それぞれ違法であるか【争点5】

  (6) アスベスト工場において発生及び排出される石綿粉じんのばく露によって生じる健康被害を防止又は抑制するための規制権限の行使として,毒物及び劇物取締法(以下「毒劇法」という。)の主務大臣である厚生大臣が,石綿を同法所定の劇物と定めてその使用を規制しなかったことは違法であるか【争点6】

  (7) 第1審原告■■■■及び亡■■■はいずれも石綿粉じんのばく露によって石綿関連疾患を発症したものであるか【争点7】

  (8) 第1審原告らが損害賠償として支払いを受けるべき慰謝料の額【争点8】


<控訴審 棄却の理由 判決の総括である判決文第三を引用>
第三 三総括

  (1) これまでの認定説示を総合すると,国は,石綿製品の製造,加工等の各種作業において発生する石綿粉じんを吸入することによって重篤な肺疾患(石綿肺)の生じる危険性があるという認識の下で,そのような健康被害を防止又は抑制すべく,昭和22年に制定された旧労基法及び旧安衛則により,石綿粉じんを除外することなく,事業者に対しては,作業場内の粉じん濃度が有害な程度にならないように局所における吸引排出その他換気等の適切な措置を講じること(旧安衛則173条),作業場には呼吸用保護具を備え付けることなどを義務付けるとともに(旧安衛則181条),労働者に対してはそれを使用すべき義務があること(旧安衛則185条)などを定め,国家検定による防じんマスクの規格化及び普及を図る一方で,鉱物性粉じんの局所排気を効果的に行うには,粉じんの種類,発生態様の特徴等をもとに個々の作業ごとに異なる局所排気装置の設計及び製作を要するものであることを踏まえ,労働衛生試験研究による昭和31年資料,昭和41年資料(基本編),昭和47年資料(応用編),昭和52年資料(石綿編)の作成を重ね,海外の症例報告及び日本国内の医学的見解の動向等による医学的知見の進展状況を踏まえた高性能の防じんマスクの着用及び局所排気装置の原則的かつ積極的な設置を指導する旨の通達(昭和33年通達[乙13],昭和37年通達[乙305],昭和43年通達[乙21],昭和46年通達[乙167]等)を発出し,併せて,労働基準監督署(粉じん対策指導官,粉じん対策指導委員を含む。)によっても,作業従事中における防じんマスクの着用,局所排気装置の普及と構造上不備のある局所排気装置の改善等に関する指導を継続的に行っていたところ,大阪労働基準局管内においては,昭和42年の時点では設置率(但し,1台でも設置している作業場)が約47%であった局所排気装置が昭和46年11月の時点では約8割の作業場において設置されるようになり,防じんマスクの備付け割合も約5割から9割以上になったというのであるから,このような国の対応が,石綿粉じんの有害性についての認識を怠り,石綿の工業的有用性を重視するあまりに労働者の健康被害を軽視した法整備ないし施策態度に終始していたものであったとは到底認められない。
    これに対し,第1審原告らは,昭和22年から遅くとも昭和32年ころの時点において,局所排気装置に関する工学的知見が明らかになっていたとして,局所排気装置の設置を義務付けることに特段の障害がなかったにもかかわらず,国が昭和47年に特化則を制定するまでそれを義務付けようとしなかったことの違法を主張するが,昭和22年に制定された旧労基法及び旧安衛則の上記各規定においては,有害な粉じんとして石綿粉じんが除外されていたものではなく,局所排気装置の設置についても粉じん対策の一つ(局所における吸引排出)として列挙され,選択的ないし他の手段と重畳的に行うよう定められていたことからも明らかなように,国は,粉じんの種類を限定することなく,石綿粉じんによっても健康被害の生じる危険性があることを前提に,それを防止するための適切な措置を講じる必要のあることを法令上定めていたのであるから,第1審原告らの上記主張はその前提を欠くものとして失当というほかない。
    そもそも,労働環境における衛生管理及び健康被害その他労働災害の防止にあっては,各事業者が,それぞれの作業現場に応じた対策を具体的に講じるべき第一次的な義務を負っているのであるから,仮に,第1審原告らが主張するように,昭和22年から昭和32年の時点においてすでに石綿製品の製造,加工等の各種作業に適合した局所排気装置を設置するのに必要となる実用的な工学的知見が明らかになっていたとして,そのような局所排気装置を設置するのに特段の障害はなかったというのであれば,事業者としては,旧労基法及び旧安衛則の上記各規定に従い,他に効果的な粉じん対策を講じるのでない限り,上記のような局所排気装置を設置すべき法令上の義務があったものと解するのが相当である。そして,旧労基法及び旧安衛則の上記各規定が,石綿製品の製造,加工等の作業場においては他の粉じん作業とは異なって局所排気装置を設置する必要がないとか,設置対象から除外されているなどといった誤解を生じさせるような条項文言とはなっていないことを併せ考えると,国が,上記各規定とは別に局所排気装置を原則的な義務として明記した省令の制定ないし改定等をしなければ,各事業者がそれぞれの作業場において局所排気装置を設置することが不可能ないし著しく困難であったとはいえず,そのような措置を講じることが期待できないものであったとも認められない。そうすると,第1審原告らの主張を前提としても,各事業者が,上記各規定及び行政指導等の下で局所排気装置を設置しなかったのは,当該事業者の自主的判断に基づく結果であって,国の規制不備に起因するものではないというべきである。
    もっとも,実際には,第1審原告らの主張とは異なり,昭和22年から昭和32年までの当時は,石綿製品の製造,加工等の各種作業に適合した局所排気装置の設置に必要となる実用的な工学的知見についてはいまだ確立されていない時期にあったところ,その原因ないし理由としては,前記認定事実のとおり,特に,石綿製品の製造,加工等の作業工程は他の粉じん作業とは異なって特徴的な作業用機械が複雑に組み合わさったものであり,それぞれの作業に適合した局所排気装置を設置するには経験的な技術及び様々な設置例の集積並びに有効に機能しない場合の性能改善等を重ねていくことが必要であったことに加え,局所排気装置の設置に要する初期投資費用及びランニングコストの高さ等もあって事業者がその導入に積極的ではなかったという事情があったことが認められる。これらの事情を総合すれば,局所排気装置に関する工学的知見の進展に合わせてその設置が相当程度普及するのに昭和40年代半ばころまでの期間を要したこともやむを得なかったものというべきであり,国の規制態度が著しく緩慢であったことにその主な原因があったということはできない(証人■■■■■[原審]・45頁)。

  (2) 石綿については,その有害性に関する医学的知見(石綿のがん原性,石綿肺の不可逆性,進行性等)の進展に合わせて石綿に対する規制の強化を重ねながらも,結局,最終的には全世界的に使用が禁止されるに至ったものであるところ,現在,過去に受けた石綿粉じんのばく露による深刻な健康被害が現実化していることを考えれば,戦後の復興期から高度経済成長期にあったとはいえ,石綿粉じんのばく露がもたらす健康被害について,将来的な危機管理として必ずしも十分ではない部分があったことは否定できず,そのような視点に基づく検証は,今後のあらゆる行政上の課題というべきである。
    しかしながら,これまで認定説示してきたとおり,国が,粉じん作業上の安全衛生の確保及び健康被害の防止に関する施策として,昭和22年以降に行ってきた一連の法整備及び行政指導等は,石綿粉じんを他の粉じんと区別することなく,その時々の医学的知見の進展状況(労働衛生試験研究の結果,海外からの被害報告,国内の被害発生状況等を含む。)を踏まえたものであったほか,高性能化がいち早く進んだ防じんマスクの適切な使用と局所排気装置の設置に関する実用的な工学的知見の確立及びその普及を目指したものとして一定の効果を上げたのも事実であり,また,効果的に石綿粉じんを捕集する性能を有した局所排気装置の普及があまり進んでいない時期にあっても,各作業場において,少なくとも国家検定に合格した防じんマスクが適切に使用されていたとすれば,石綿粉じんの吸入をかなりの割合で防止することができ,現在発生している石綿粉じんによる健康被害についても相当程度減少させることができたものということができる。そうすると,戦後の復興期から高度経済成長期ころにかけての石綿粉じんばく露による健康被害に関する医学的知見及びそれを防止するための技術的対策に関する工学的知見の進展状況,その当時における石綿製品に対する社会的必要性及び工業的有用性についての評価等に基づく限り,国が行ってきた上記各措置は,その目的及び手段において一応の合理性を有するものと認めるのが相当である。
    これに対し,第1審原告らは,事業者及び労働者に対する石綿の危険性情報の提供がなされず,労働者に対する安全衛生教育の義務付けも法令上不備であったことを主な理由として,労働者は防じんマスクの使用等による防衛的な粉じん対策を実行することができなかったなどと主張するが,前記認定事実のとおり,戦前においてすでに,石綿を原因とする労働災害として,じん肺の一種である石綿肺という呼吸困難等の健康被害を生じる危険性のあることは認識されていたところ,昭和22年に制定された旧労基法及び昭和35年に制定されたじん肺法においても,労働者に対する安全衛生教育の実施は義務付けられていたものである。そして,社会的にも,昭和30年代前半には石綿肺の症状及びその進行的特徴に加えて発症者数が増加傾向にあること等が特集記事として新聞報道されたり,泉南地域の業界団体であるアスベスト振興会によっても石綿肺の防止の必要性が訴えられ,局所排気装置による粉じん対策の実行及び労働者に対する防じんマスクの着用指導についての申し合わせがなされるなどしていたほか,労働者に対する定期的な健康診断や各作業場に対する行政指導等が繰り返されていたことを併せ考えるならば,個々の労働者及びその使用者である事業者が,石綿粉じんのばく露についての警戒心あるいは危機感を具体的にどの程度抱いていたかどうかは別として,石綿粉じんの有害性に関する情報及び長年にわたって石綿関連作業に従事したことで重篤な石綿肺を発症した労働者が現実に存在するという客観的事実についての認識が全くなかったものとは到底考えられないところであり,国がこれまでに実行してきた石綿粉じんを含む粉じん対策に関する法整備及び施策の経過等を振り返ってみても,国が上記のような事実等を隠ぺいしたり,ことさら過小評価したような情報しか公表しないという態度であったものとは認められない。その他本件全証拠を検討しても,国による安全衛生教育に関する法整備ないし施策がなされなかったことによって,使用者が本来であれば労働者に対して行うことができたはずの必要かつ適切な安全衛生教育を実施することが困難な(あるいは,期待できない)状況にあったものと認めるべき具体的事情は見当たらない。
    したがって,国において,国家賠償法1条1項の適用上違法となるような安全衛生教育に関する法令ないし施策の不備があったものということはできない。

  (3) また,第1審原告らは,それぞれに石綿粉じんばく露による健康被害が生じたのは,国が規制権限を適切に行使しなかったことに基づくものであるとして,上記以外にも様々な主張(昭和47年に制定された特化則において定められた抑制濃度の基準数値が著しく不合理であったことの違法,同規則において粉じん濃度の測定及びその結果の保存を義務付けるだけではなく,その報告義務を定めなかったことの違法,石綿製品の製造,加工等の作業工程を密閉,機械化し,工程間分離するように使用者に義務付けなかったことの違法,それらの作業に従事する労働者に防じんマスクを着用させることを使用者に義務付けなかったことの違法,労働者の作業従事時間を短時間に規制しなかったことの違法,作業衣を作業場外に持ち出すことを規制しなかったことの違法,昭和45年に改正された大気汚染防止法においてアスベスト工場を「特定粉じん施設」と定めなかったこと及び作業場の換気設備に除じん装置を設置するように義務付けなかったことの違法,石綿を毒劇法上の「劇物」に指定しなかったことの違法に関する主張等)をするが,いずれも失当として採用することができないことについては,前記認定説示のとおりである。

  (4) ところで,一般に,有害な化学物質等による重大な健康被害の対象が広く国民に及ぶ恐れのある事案については,その被害の大きさ,深刻さを考えれば,例えば,国が,①重大な健康被害が現実に生じている(生じる危険性が高い)ことを認識しながら,合理的な理由もなく当該化学物質等を規制の対象から除外した場合,②発生の危険が予想される健康被害については,医学的ないし工学的な知見に裏付けられた効果的で実用可能な防止手段が存在するにもかかわらず,それを実行させるような法整備ないし施策を具体的に講じなかった場合,逆に,③上記のような効果的な防止手段が物理的に存在せず,仮に存在するとしてもその実行が事実上不可能ないし著しく困難であるなどの事情により,健康被害の発生を防止するには,国が当該化学物質等の使用及び排出を即時ないし一律に禁止するか,極めて厳格に制限する以外に方法はないにもかかわらず,そのような法整備ないし施策を合理的な期間内に講じなかったことによって健康被害が拡大した(あるいは深刻化した)ような場合には,国が行政権に基づいて上記のような規制権限を行使しなかったことが,その根拠となる法の趣旨,目的に照らして著しく合理性を欠くものとして,国家賠償法1条1項の適用上違法と判断される余地があるようにも思われる。
    しかしながら,本件事案では,昭和22年に制定された旧労基法及び旧安衛則においても,石綿は事業者が講じるべき粉じん対策の対象から除外されることなく規制の対象とされていたこと(同法50条,同規則173条,181条,185条等),その後も国は石綿粉じんを含めて粉じん作業上の安全衛生の確保及び健康被害の防止に関する施策としてその時々の医学的知見の進展や工学的知見の普及に合わせた法整備や行政指導等を順次行ってきたこと,石綿製品の製造,加工等の各種作業に適合する局所排気装置を設置するにあたって実務的な工学的知見が普及するまでに相当の時間を要したことについてはやむを得ない事情があったこと,局所排気装置の普及があまり進んでいない時期にあっても,防じんマスクの適切な使用により石綿粉じんの吸入をかなりの割合で防止することが可能であったこと,優れた工業的有用性と生物学的有害性という両面を併せ持つ石綿については海外諸国においても長らく使用禁止とまではされず,日本が石綿を使用禁止した時期についても海外諸国と比較して特に遅れたものではなかったことなどの事実が認められるのであって,上記①~③のような場合に該当するものとはいえない。
    したがって,本件が,結果的に,石綿という有害な化学物質によって石綿取扱作業に従事した労働者及びその周辺関係者等に重大な健康被害が生じた事案であることを考慮したとしても,これまでの認定判断の結果を左右することはできない。

  (5) 以上の次第で,国が,昭和22年以降,石綿粉じんのばく露によって健康被害が生じる危険性のあることを踏まえて継続的に行ってきた法整備及び行政指導等を含む諸施策に基づく一連の措置は,労働関係法上の趣旨,目的及び主務大臣に付与された権限の性質等に照らし,その許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くものであったとは認められず,第1審原告らが国に対して責任原因として主張する様々な事実等は,いずれも国家賠償法1条1項の適用上違法となるような規制権限の不行使に該当するものではない。これに反する第1審原告らの主張は,すべて採用することができない。
    したがって,その余について判断するまでもなく,第1審原告らの請求はいずれも理由がない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

国際私法:外国会社との契約において、どの国の法律を準拠法とするか。その選定は重要!(通則法7-9条)

2012-07-10 23:00:00 | シチズンシップ教育
(例題)

会社X社(A国法に準拠して設立、かつ、A国内に主たる営業所有り)

会社Y社(日本法に準拠して設立、かつ、日本国内に主たる営業所有り)


Y社の製造した製品をY社がX社に販売する旨の契約を締結。

この契約の締結に至るまでの交渉、契約書の起案、締結の署名などはすべて、Y社の日本国内の営業所において行われた。

この契約には、「契約の成立に係る紛争については、A国法による」との条項が存在しており、この条項の規定について、X社とY社との間で争いはない。


X社は、この契約の本旨に従った履行がなされなかったと主張して、Y社を相手として、日本の裁判所に損害賠償請求訴訟を提起した。

なお、A国は、いわゆる「ウイーン売買条約」の締結国でない。

*設問の各問は、独立したものである。


設問1.X社は、本件請求について適用すべき法はA国法である、と主張している。

(1)Y社は、その適用すべき法は日本法である、と考えているが、この考えを、どのように主張することができるか。

(2)裁判所は、本件請求について適用すべき法に関する争いに対して、どのように処理すべきであるか。


(1)回答:
 本件の請求の法律関係の性質は、契約の「効力」に係る事項である。

 X社の主張は、契約の「成立」について適用すべき法が、「準拠法単一の原則」に従って、契約の「効力」についても適用すべき法である、という考え方に基づくものである。

 これに対して、Y社としては、契約の「効力」について適用すべき法が契約において明示に指定されていないから、その点についての黙示の意思を探求すべきであると考えられる。

 この契約の締結に至るまでの交渉、契約書の起案、締結の署名などはすべて、Y社の日本国内の営業所において行われた客観的な事実から、日本法に準拠する黙示の意思があったと考えられ、本件の契約の「効力」について適用すべき法は日本法であると、主張することができる。


(2)回答(の方向性):
 「準拠法単一の原則」にそうべきか、契約の準拠法の「分割指定」を肯定するかを、その是非を判断したうえで、いずれが妥当であるかを示し、それを本件に当てはめて回答する。


設問2.X社は、「A国法による」との規定を撤回するとの意思を表示し、Y社は、これを承諾した。そして、X社は、日本法を新たな準拠法として指定する意思を表示し、Y社は、これを承諾した。

(1)この撤回の合意に錯誤があった場合に、裁判所は、その合意の有効性を何国法によって判断すべきであるか。

(2)この新たな準拠法の指定の合意に錯誤があった場合に、裁判所は、その合意の有効性を何国法によって判断すべきであるか。


(1)回答:
 撤回についての合意に錯誤があったのであるから、準拠法の選択(という行為)それ自体の有効性が問題となる。

 この問題は、抵触法において独自に判断すべきとの見解によると、日本の民法上の基準を考えることになるであろうが、実質法と抵触法とでは適用の次元が異なり、基準としてはあいまいであるから、契約の基準法であって変更前のものによるのが妥当であろう。

 それは、本件では、準拠法の分割指定を否定する場合には、A国法によることとなるが、それを肯定する場合には、日本法によることととなる。


(2)回答:
 新たな準拠法の指定についての合意に錯誤があったのであるから、準拠法の選択それ自体の有効性が問題となる。この点は、新たな準拠法の指定であるから、成立と効力との準拠法の分割指定について論ずる必要はなく、仮に準拠法の事後的変更が有効であった場合には、準拠法として指定されることととなるべき、その法によるのが妥当であろう。
 それは、本件では、日本法である。



************
判断において関連する法:

法の適用に関する通則法
平成十八年六月二十一日法律第七十八号

(当事者による準拠法の選択)
第七条  法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。

(当事者による準拠法の選択がない場合)
第八条  前条の規定による選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による。
2  前項の場合において、法律行為において特徴的な給付を当事者の一方のみが行うものであるときは、その給付を行う当事者の常居所地法(その当事者が当該法律行為に関係する事業所を有する場合にあっては当該事業所の所在地の法、その当事者が当該法律行為に関係する二以上の事業所で法を異にする地に所在するものを有する場合にあってはその主たる事業所の所在地の法)を当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。
3  第一項の場合において、不動産を目的物とする法律行為については、前項の規定にかかわらず、その不動産の所在地法を当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。

(当事者による準拠法の変更)
第九条  当事者は、法律行為の成立及び効力について適用すべき法を変更することができる。ただし、第三者の権利を害することとなるときは、その変更をその第三者に対抗することができない。


 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする