よく見かけていると思うのだが名前を知らない植物だった。
ダンプカーが走り去る風圧で、横並びにぶら下がった小さな白い羽のようなものが軽く揺れた。
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この白いものは〈小穂(しょうすい)〉と呼ぶとあとで知ったが、形が珍しく、一見するに愛らしくもあって、顔を近づけてみた。
どうなっているのか。種がはじけたあとなのか、中は空っぽで、乾いていた。中心から黒くて細いものが1本、伸びて残るものもある。
「カラスムギ」だった。
イネ科の、カラスが食べる麦だから、この名がついたらしい。白い穂は芸術的な形状にも見えるが、もとをただせば、ひいき目に見てもただの草(? いや、れっきとした麦?)。
繁殖力旺盛で、その除去となるとかなりやっかい者らしかった。
佐伯一麦氏がカモガヤのことを書かれていたことを思いだしている。
広げた花序の枝先につく小さな穂が、4、5個の小花をまるで鳥の指のような形にひらくので「Cook’s-foot(おんどりの足)」の英名があり、それが鴨と間違えれてカモガヤ(鴨茅)の和名になった、ということだった。氏は喘息を患っておられ、花粉をとばすイネ科のカモガヤに対するアレルギー反応は激甚なのだそうだ。
この、小さな穂に小花を咲かせ…、という生育状況を、白くカサカサになるまでの穂に重ねてみたのだった。
気付かずに、そして名前を知らずにいれば、路傍の繁茂した草ぐさの中で埋もれてしまっている。けれど、一度注意して名前を覚え知ると、風景から浮かび上がって目に飛び込んでくるという体験は何度もしている。
ただ、「名前というものは五感を働かせて、具体的なものとして実際に自分の中を通して見なくては身につかない」と佐伯氏。
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「名前は個人所有、単品限りのブランドである」と榎さん(榎本勝起)が書いていた。
一つ、身近な小さな命の名前を知った。
名前を呼ぼう、カラスムギと。
目を凝らし耳を凝らして、次の新たな気付きはなんだろか…。
ダンプカーが走り去る風圧で、横並びにぶら下がった小さな白い羽のようなものが軽く揺れた。
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この白いものは〈小穂(しょうすい)〉と呼ぶとあとで知ったが、形が珍しく、一見するに愛らしくもあって、顔を近づけてみた。
どうなっているのか。種がはじけたあとなのか、中は空っぽで、乾いていた。中心から黒くて細いものが1本、伸びて残るものもある。
「カラスムギ」だった。
イネ科の、カラスが食べる麦だから、この名がついたらしい。白い穂は芸術的な形状にも見えるが、もとをただせば、ひいき目に見てもただの草(? いや、れっきとした麦?)。
繁殖力旺盛で、その除去となるとかなりやっかい者らしかった。
佐伯一麦氏がカモガヤのことを書かれていたことを思いだしている。
広げた花序の枝先につく小さな穂が、4、5個の小花をまるで鳥の指のような形にひらくので「Cook’s-foot(おんどりの足)」の英名があり、それが鴨と間違えれてカモガヤ(鴨茅)の和名になった、ということだった。氏は喘息を患っておられ、花粉をとばすイネ科のカモガヤに対するアレルギー反応は激甚なのだそうだ。
この、小さな穂に小花を咲かせ…、という生育状況を、白くカサカサになるまでの穂に重ねてみたのだった。
気付かずに、そして名前を知らずにいれば、路傍の繁茂した草ぐさの中で埋もれてしまっている。けれど、一度注意して名前を覚え知ると、風景から浮かび上がって目に飛び込んでくるという体験は何度もしている。
ただ、「名前というものは五感を働かせて、具体的なものとして実際に自分の中を通して見なくては身につかない」と佐伯氏。
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「名前は個人所有、単品限りのブランドである」と榎さん(榎本勝起)が書いていた。
一つ、身近な小さな命の名前を知った。
名前を呼ぼう、カラスムギと。
目を凝らし耳を凝らして、次の新たな気付きはなんだろか…。