京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

SONG OF EARTH

2024年09月24日 | 映画・観劇

どんな映画だろうか…という思いから事前にチェックしたが、〈ノルウェーの山岳地帯で大自然の中に生きる老夫婦を、その娘であるドキュメンタリー作家のマルグレート・オリンがとらえたドキュメンタリ―〉という案内を見て、出かけることにした。

「私は84歳になったらしいが…」、それが何だっていうんだ?といった調子で、杖(トレッキング用のポール?)を2本使って、ゆっくりだが確かな足取りで娘を案内して回る。
「ゆっくり歩くんだ。見えないからね」

美しい映像 ー 山頂からの眺め。深い谷を割って流れる川。滝。轟音、砕ける流れの美しさ。清流。フィヨルド。氷河の憤怒か、崩れ落ちる轟音。


氷の上をスケート靴で滑ったり、歩いて進んでいく。自然と一体化してその境目がわからない…。

美しい映像に次々と魅せられる。
その合間、自らの生い立ちや父、祖父のことなどが語られ、妻との時間を大切にし、共有し合うことに幸せを感じている心のうちが伝わる。
「見かけは老いたけれど、私たちは内面は健康だ」と静かに体を寄せ合う穏やかな時間。

荘厳な大自然は時として激しい怒りの姿を見せる。その一方では限りない優しさで包んでもくれる。
そこに、人間のちっぽけさが浮かび上がる。
祖先に見守られ、この大地の魂に深い安らぎを得て、生きるのであろう二人。

生きた自然を表現するのに「造化」という言葉がある。あらゆる生命を生む造物主、山河自然に対して、人間はもっともっと謙虚にならなければならないのだろう。
身辺の微かな自然の気配に耳を傾け、思いを深めながら生きていけたら、ひとは幸せなはず…。そんなことをしみじみ思う機会にもなった。
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