10月19日 続き
夕食を終えた午後7時20分、呼んであったタクシーに乗って「湯ノ本温泉まで」とお願いすると運転手さん、「えっ」と驚いた顔をする。
「かなり遠いですよ」と言うが「構いません」と走り出すと、通行する車もほとんどなく真っ暗な道をかなり飛ばしてもなかなか着かない。
やがてちょっと明るい集落が見えてきて、赤い提灯が道に並ぶ先にこの島一番の温泉地、湯ノ本温泉があるが、目的地はここからちょっと離れてまた周りが真っ暗な中にある「山口温泉」。
実は壱岐にわたる前、博多駅のみどりの窓口で九州八十八湯めぐりの御湯印帖なるものを100円で入手していた。
壱岐で該当するのはこちらの山口温泉だけ、パンフレットによれば最終受け付けは20時とある。
そこで広い駐車場で車を降り、周りに何棟もある建物のうち明かりの灯る受付に行くと窓口にいたおばあちゃん、「温泉は8時で終わりだよ」と無情のお言葉、奥に座っていたじいさんはさらに不機嫌な顔で「8時にはお湯を落とすから」とにべもない。
この時点で時刻は7時40分、しかしせっかくここまでタクシーを飛ばしてきたし、もう一度ここに来るとも思えない。
乗ってきた車の運転手さんは親切に「湯ノ本の他の旅館なら10時まで入れますからそちらに行きますか」と言ってくれるが、20分で出るからと入浴料400円を支払い、運転手さんには待っていていただいてお風呂場へ急ぐ。
受付から駐車場をはさんだ向かいにあるこちらの玄関から入ると
正面には休憩所の座敷があり、右手に浴場への入り口があって廊下の左右に男湯、女湯がある。
引き戸を開けると大きな岩の左右にいきなり棚があるだけの脱衣場、その先に仕切りもなく浴槽が2つ並んでいて、のれんなどが掛かっているわけではないので不用意に扉を開けたら入浴している人が見えそうなワイルドさ。
中に入ると女性が一人いたが、この人はお掃除をしていたらしく、こんな時間にやって来たこちらを不審な顔つきで見ていたがやがて出て行ったので広いお風呂を独り占め。
2つある浴槽には黄土色に濁ったお湯が張られ、お湯が少なくて濁りが強い方には「熱くて使用できません」との札。しかし触ってみれば45,6℃だろうか、入って入れないことはなさそうだがお湯も少ないのでもう一方の浴槽へ。
こちらは41,2℃の適温、色が薄いのは98℃という源泉にかなり加水しているのだろうが、見た目通り金氣臭がして塩辛い。
個性的なお湯が楽しくてもっと入っていたいが、壁の時計をにらみつつ8時ちょうどに上がって待っていてくれたタクシーでまた宿へ。
「ここのお湯はベタベタするので子供の頃は嫌いだったんですよねえ」と物好きな客に運転手さんの口も軽い。
そこで「壱岐と対馬って仲が悪いと本で読んだけど本当?」と聞きづらいことを聞いてしまうと「そんなことないですよ~」と言いながら爆笑していたから本当らしい。
なんでも両島の中間に良い漁場があって、それも関係がよくない一因らしく、「交流はないですね」と正直だ。
いろいろな話を聞きながら宿に戻ると往復のタクシー代は5340円。
それだけかけて400円の温泉に20分だけ入りに行ったとは、我ながらほんと物好き。
しかしおかげで無事八十八湯の最初のスタンプが入手できたし、入浴後は体がぽかぽか。
ちなみにタクシー代には地域共通クーポンを使わせてもらった。
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