コロナの感染拡大が止まらないのに相変わらず出歩いている人が多いな、とニュースを見ながらつぶやきつつ、映画を見に銀座に出かけた。言行不一致もいいところ。
まずはシネスイッチ銀座で
「ニューヨーク 親切なロシア料理店」 The Kindness of Strangers
亭主の家庭内暴力に怯える若い母親が男の子2人を連れてニューヨークに逃げてくる。
車はあるけれどクレジットカードも持たず、寝泊まりしていた車も駐車違反でレッカー移動されてしまって路頭に迷う。
普通だったら警察にでも保護を求めれば良さそうなところ、暴力亭主が警察官なのでそれができないのがつらく、この一見誠実そうな男前の亭主が恐ろしい。
食べるものに困るとデパートで万引きしたり、ホテルのバンケットに忍び込んで食べ物をくすねるお母さん、どんな育ち方をしてきたかがさりげなくわかる。
結局は教会ボランティアの救済所で着るものや食べ物をもらうことになるのだが、日本で同じような羽目に陥った場合、こんな救済所はあるのだろうか、と考えてしまった。
日本語タイトルから主人公はロシア料理店で働くことになるのかと思ったがそうではなく、英語タイトルの通り親切な人たちに助けられて逃げ込むのがその料理店。狂言回し的な場所で、そのオーナーを演じるのがビル・ナイ。
実はこの映画を見ようと思ったのは彼が出ているから。出演場面は多くないのだがつらい話の中のコメディリリーフ担当、とは言え北欧の監督らしく微妙なユーモア、それをビル・ナイはほんのわずかな表情で絶妙に演じて見せる。さすが。
地味なキャストながら他の出演者たちもうまく、ありがちなストーリーではあるが気持ちよく見られる。
もう一本はしごして、次はヒューマントラストシネマ有楽町で
「声優夫婦の甘くない生活」 Golden Voices
こちらはイスラエル映画なのだが主人公の初老夫婦は1990年にソ連から移住してきたという設定。なのでセリフはほとんどロシア語、ヘブライ語は語学教室の一場面で聞こえるだけ。
実際ゴルバチョフ政権末期のこの時期に大量のロシア人が移住したそうで、監督も主演の二人もソ連からの移住者。現在ではイスラエルの人口の20%がロシア語話者だそうで、だからタイトルの通りの声優や、奥さんが働くことになるロシア語のエロ電話サービスなんてものも成り立つわけだ。
この映画の監督はフェリーニがお好きらしく、夫婦の若い頃の写真にはフェリーニ監督の顔が入っているし、主人公夫婦もフェリーニ夫婦にちょっと似ている。
セリフにもちょこちょこ登場し、最後の重要な場面は映画館で「ボイス・オブ・ムーン」を上映中という設定なのだが、ほんの少し映るこの映画、もっと見たい!
映画自体はフェリーニというよりアキ・カウリスマキに雰囲気が似ているが、ストーリーはわかりやすく、特に独りよがりな旦那に黙ってついてきたが不満を募らせている奥さんを演じる女優さんがとてもうまい。
イスラエル映画と言えばちょうど1年前に「テルアビブ・オン・ファイア」を見た。
ニュースではイスラエル政府の強引さばかりが目立って好きになれないが、文化的には様々な所からの移民による多様性があるのだろう。映画は面白い。
と、2本のロシアがかった映画の合間にはロシア料理を食べた。
銀座メルサ7階にある老舗、「ロゴスキー」。
平日限定のランチをお願いすると
まずはカラフルなサラダが登場。
揚げたてパリパリのピロシキはひき肉とゆで卵入り、真っ赤なビーツ入りの田舎風ボルシチは野菜がたっぷりで、どれもとてもおいしい。
ここでロシアパンを買って帰ろうと思っていたのだが、レジのおじさん、「残念ながら今日はないんです」って、無念。
ところで「ロゴスキー」のあるメルサ7階、レストランが4店舗入っているはずなのにあとの1店は休業、2店は撤退で閉まっている。
映画館は平日昼間のせいではあろうが、どちらも20人ほどしかお客が入っていない。
出歩いても密じゃない、と喜んでばかりもいられない。
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