昨年末、「ミセス・ハリス」を見た時に予告編で知った映画を見にまた日比谷へ。
「モリコーネ 映画が恋した音楽家」 Ennio
言わずと知れたイタリア映画の巨匠音楽家エンニオ・モリコーネは2020年に91歳で亡くなったが、これは「ニューシネマパラダイス」で音楽を付けてもらったジュゼッペ・トルナトーレが生前の彼にロング・インタビューをし、それに他の音楽家、映画関係者など多数のインタビュー、そしてモリコーネが音楽を付けたたくさんの映画の場面をつないだドキュメンタリー映画。
音楽家ではあるけれどさすがイタリア人のモリコーネ氏、実に雄弁に自分の作品を語る。
映画は彼の人生を時系列に追っていて、トランぺッターだった父親に強制的に音楽学校に入れられ、やはりトランペットから入ったもののやがて作曲に興味を持ち、しっかりとアカデミックな音楽教育を受けたことが語られる。その流れで前衛音楽なども経験し、それらが彼の映画音楽を他とは違うレベルに引き上げたことが納得できる。
しかし音楽学校の生徒のほとんどは裕福な家の子弟、卒業後も純粋音楽を追求するのが高尚とされるなかで家族を支えるためにポップスの編曲を手掛け、やがて映画音楽も作曲するようになったモリコーネはずっと劣等感に苛まれていたようで、小学校の同級生(!)だったセルジオ・レオーネのマカロニウエスタンで有名になるものの、「ウエスタンの音楽は気に入っていない」と言うあたりが彼のプライドの高さをうかがわせる。
結局モリコーネ氏、500本以上の映画音楽を手掛けたそうで、次々に紹介される映画の断片を見ていると片っ端からまた見たくなってしまう。特にレオーネのマカロニウエスタン、そしてジャン・ギャバンの「シシリアン」とか、かっこいい!
公開初日の朝一に見に行ったら結構いい入りのお客さんの半分以上は中高年のおじさん、というかおじいさんたちだったが、この映画を楽しめるのは自分も含めてこういう古い映画を見ていた人たちだろう。
と言うのもこの作品、モリコーネの功績をわかりやすく紹介はしているものの、ドキュメンタリーとしてはあまり面白くない。たくさんのインタビューの中にはハンス・ジマーの「最初の音を聞いただけでモリコーネとわかる」なんて印象的な言葉もあるのだが、ほとんどは一方的な賛辞ばかり。音楽家の人生に波乱はないし、なかなか取れなかったアカデミー賞もイーストウッドから名誉賞を受け取り、その後で無事に音楽賞ももらうが、このくだりもそれほど盛り上がらない。
157分もある長い映画が数分の名画の断片とその音楽に全くかなわないのだ。
トルナトーレ監督の「ニューシネマパラダイス」はあざとくて好きになれず、音楽と最後のキスシーンのモンタージュだけがいいと思った。
この映画の中で新人だった自分の映画に音楽を提供してくれたモリコーネへの感謝を述べているが、その恩があるので甘くなってしまったか。
やっぱりトルナトーレとは相性が良くないようだ。
映画の後はすぐ近くにある鹿児島県のアンテナショップのレストランへ。
テーブルにお醤油が2つあるのは鹿児島の醤油がすごく甘いから。
黒豚ねぎしゃぶのスープもすごく甘くて、入っていると思ったおそばが入っていなかったのは残念だったが、たっぷりのネギでおいしかった。
日比谷からは六本木に移動。
すごく久しぶりにサントリー美術館に来てみると、こちらも中高年でいっぱいで入場には列ができていた。
見に来たのは「京都・智積院の名宝」。
秀吉が最初の子、鶴松の菩提を弔うために建てた祥雲禅寺の長谷川等伯による金碧障壁画が一度に見られるということでやって来たのだが、あまり広くない会場なので5枚の国宝が一目で見渡せるのが圧巻。
等伯の楓や松ももちろん素晴らしいのだけれど、それ以上に息子の久蔵の桜図がなんとも清楚でいいのだ。
等伯は跡取りとして期待していた久蔵が若くして亡くなってしまったのでとても気落ちしてしまったそうだが、さもありなん。
この一枚を見るだけでも来た甲斐があった。
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