去年「正倉院展」を見に行った時にチラシを見て、どこでやっているのだろうと聞いたら「まだやってません」と冷たくあしらわれた展覧会に閉会間際になって行ってきた。
「人、神、自然」 ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界
アール・サーニさんとはカタールの王族だそうで、この人の集めた主に中東、中央アジア出土の古代工芸品117点が東洋館で展示されている。
会場はふだん大谷探検隊が持ち帰ったシルクロードの出土品が飾られている所。なのでそれほど広くないスペースだが、展示品は小さいものが多いのでコンパクトにまとめられ、暗い会場内にスポットライトがうまく当てられてとても見やすい。
それぞれ小さいとは言え展示品はどれもすばらしいものばかり。
古いものは紀元前3000年から、新しくても5,6世紀のものまで、時代も場所も異なるものがテーマごとにまとめられているので比較ができてとても面白い。
以下は展覧会HPより
小さな女性像も、精巧な鹿の形をした酒の容器も、紀元前2000年、つまり今から4000年前に作られたとは信じられないほどの細工の美しさ。
権力の象徴であった金の装飾品は特に凝っていて
このブレスレットをはじめ、今使ってもまったく違和感がない、どころか現代のデザインよりもしゃれている。
しかし今回の展示で一番気に入ったのはこちら。
紀元前3000年ごろにアナトリア半島で作られたという大理石製の女性像。どのような目的で作られたのかは不明だそうだが、抽象化された頭に小さな耳が付いているのがかわいくて、これに「スターゲイザー」と名付けたセンスが素晴らしい。
コンパクトながら本当に質の高いものばかりで予想以上に楽しめたこの展示、博物館の通常の観覧料だけで見られるのもありがたい。入場無制限のメンバーズカードを持っているので追加料金なしで見られたのだ。
アール・サーニ・コレクションはこの春からはパリのコンコルド広場の特設会場で公開されるそうだが、今回展示されたもの以外にもいろいろあるのだろうか、気になるところ。
この日は東洋館の見学だけでサクッと切り上げ、お昼はなんとなく中華の気分だったので上野駅入谷口からすぐの晴々飯店へ。
この素敵すぎる店構え、上野の人気店だそうだが、このご時世なので空いているかと思いきや1時過ぎでも日本人のお客さんで満席。中国人らしき人は店員さんたち以外には見当たらず。
四川料理のこちらで「リアル回鍋肉定食」を頼むと、キャベツなし、たまねぎとインゲン、ねぎと豚肉がラー油と豆鼓で炒められていて、これがとてもおいしくてご飯がすすむ。
満足度が高くて、ここはトーハクから定番コースになりそう。
上野駅に向かうと大きなスーツケースを転がす団体、先頭の子供は青天白日旗を振りながら歩いていた。その気持ち、実によくわかる。
日本人も海外を歩くときは当分日の丸振りながら歩いた方がいいんじゃないだろうか。
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12月27日
本日はヤムの会のkimcafeさん、ヒョウちゃんと遠足の一日。
待ち合わせのバーン・ワーの駅までは延伸した地下鉄で1本なので楽チン。
無事に合流した後はkimcafeさんに付いて行くだけなのでさらに楽チン。
この駅前から最初の目的地、ワット・サムプランまでは84番のバスということでまずやって来たオレンジ色のバスに乗車。
すると行き先を聞いた車掌のお姉さん、大笑いして「これじゃ行かない、次のバス停から黄色い84番に乗って」とえらく楽しそう。物好きな外人が変な所へ行く、とおかしかったらしい。
運賃も取られずにすぐに降りて、黄色いバスが来るまでは10分ほど待っただろうか。目的地までは24バーツ。
このバスでちょうど1時間。
こちらの車掌さんにも愛想よく手を振って降ろされたのはこんな何もない所。
ではあるが、工事現場の入り口のような塀の向こうに竜が巻き付いた塔が見える。
これぞ目指すワット・サムプラン。
この塔に向かって入っていったが、その手前にも気になるものが見えたのでまずはそちらを見学しようと危なっかしい丸太橋を渡る。
その先にあるのは巨大な亀。
口の所から中に入ると同じお坊さんの写真が並べられていて
さらに進むと池の真ん中に仏足石があるが、ここにかかる橋も危なっかしく、水は汚くて怪しさいっぱい。
亀から出ると次は巨大な孔雀が見える。
その足の向こうにはコンクリート造りの建物の地下入り口があって、ちょうど通りがかった作務衣姿の尼さんが手招きしてくれたので入ってみる。
天井の低い広い空間はどうもこの施設の信者さんたちの売店のようで
タイでおなじみのお守りや、白い信者の服など売っているが販売人は不在の様子。
ここにもお坊さんの写真がいっぱい飾られて、この人が夢のお告げでこの施設を作ったのだそう。ただしこのお方、未成年者強姦の罪にも問われたと言う曰く付きの人物とか。その割にまわりには信者らしき人がたくさんいるのが不思議、それも年配の女性ばかり。
孔雀の足元から外に出ると今度は巨大な白い象がいて
その先がいよいよ竜の巻き付く赤い塔。
さあ、それでは入りましょう、とするとまた尼さんに呼び止められて赤いリボンに名前を書かされ、お供え用の花を渡された。お布施は任意。
これを持って靴を脱ぎ、赤い塔の中へ。
丸い塔の一階には仏像が並べられ、上に上がるには鬼(?)の口から竜の胴体の中に入る。この入り口の脇にはエレベーターがあるが使用禁止になっていて、どうも17階もあるというこの塔本体は使われていないようだ。
竜のお腹の中はすべてコンクリート造り、素足に床がザラザラするし窓もないが、傾斜はそれほどきつくないし、照明や所々に扇風機も置かれているので子供でも楽々。
出た所には仏様がいらっしゃるのでここで花を手向け
もう一段上がった竜の頭の下の手すりにリボンを結んだ。
ここからは周りの景色を360度見渡せる。この辺り、タイは平らな国だ。
真下には大きな仏様、ここは後で行こうとしたが入り口がわからず。
周りにはなぜかミャンマー人がいっぱい。他にも若いカップルや外国人の姿もちらほら見えて、この塔はなかなかの盛況。
鐘の模様一つでも突っ込みどころ満載のワット・サムプラン、kimcafeさんと一緒でなければまず行かなかっただろうが、面白かった!
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12月26日
本日はタイ人の友人と一日過ごすことになっている。
この友人と自分は外資系企業に勤めていた頃の同僚、今回日本から一緒に来ている友人は大学時代の同級生なのだが、この友人とタイ人はアメリカの大学で知り合いだったことがある時偶然に発覚し、3人の奇縁に驚愕した仲。
世界は広いようで狭いのだ。
どこで何をするか、友人に丸投げしたところ、ホテルからまず連れて行ってくれたのはジム・トンプソンの家。
この家の存在は知っていたが、来るのは初めて。
ジム・トンプソンと言えばタイ・シルクを世界に知らしめた人なので
入ってすぐの中庭では繭から糸を紡ぐ実演をしているし
もちろん大きな売店もある。
しかしお高いジム・トンプソンのシルク、最近は買う人も減ったよね。
ここは名前の通り、ジム・トンプソンが自宅としてタイの伝統家屋を移築改装した建物。
家の背後には狭い運河が通る敷地に何棟もの家がつなげられているが、アメリカ人のトンプソンは元々建築家だったそうで、この家も自身で設計したのだとか。
内部の見学はガイド付きのツアーに限られ、言語ごとに人数を集めて案内してもらう。
1階のオープンになったエリア以外、ガイド付きで回る内部の部屋は残念ながら撮影禁止だが、アンティークの飾られた客間、2階の小さなプライベート空間など趣味が良くてとても素敵だ。
かわいいお姉さんの説明を聞きながら各部屋を見学し、最後の部屋にやっと主の小さな写真が飾ってあった。
「ジム・トンプソンは1967年、マレーシアのキャメロン・ハイランドで散歩中に行方不明になり、以後の消息は全くの謎です」とお姉さんが言った途端にツアーに参加していた客の一人が声を上げた。
「君の情報は古いね。トンプソンはCIAのスパイだったので共産ゲリラに殺されたんだ。犯人の一人が最近告白して、マレーシアでは大きく報道されたよ。なんでそう言わないんだい」
お姉さん、かわいそうに困ってしまって「ここはアンティークでいっぱい、私も古いものの説明係なんです」と次のグループが来たのも幸い、何とか逃れたが、もちろんゲリラによる殺害説も証明されているわけではない。
お節介なマレーシア人の茶々も楽しんで、お昼はCentral Embassyという高級モールの中にある中華レストラン、Hong Baoへ。
飲茶を食べたいとリクエストして連れてきてもらったのだが
名物らしい中がトロトロのカスタード饅をはじめ、バンコクの飲茶はやっぱりおいしい。
しかし友人、がっつり頼みすぎだよ。
食事の後は友人の家をちょっと覗き、その近くのHealth Landで2時間タイ・マッサージ。
10数年前から行っているHealth Landもずいぶん支店が増えたようだ。
もみほぐされてリラックスしたら、次はSiam Niramitという劇場へ。
ここはタイの文化村のように作られ、タイを紹介するショーを見せると言う観光客向け施設だそうで、バンコクには何十回と来ているが、こんな劇場があるとは知らなかった。
同行の友人がタイは初めてなので、タイ人の旦那さんがチケットを手配してくれたらしい。
開場は18時だそうだが、我々はマッサージをしていたので19時ごろに到着。
すると中庭では地方の踊りが演じられていて、最後は見物人も誘って盆踊りのように輪になって踊るのはお約束。
奥には各地方の家を模した中で伝統工芸を見せたり、食事ができるエリアもあるらしいが、我々は19時半に劇場の扉が開いたところですぐ中へ。
劇場は大きくて座席数はなんと1700席以上あるそうだが、20時の開演の頃にはこれがほとんど埋まっていたから大したもの。
初めにはタイ国歌が流れて、これは外国人もみんな起立して聞かなければいけない。
タイの文化・芸術・歴史を紹介すると言う演目はいくつものパートに分かれ、それぞれの前に各国語の字幕が出てわかりやすい。
出演者も多いが舞台設備が大掛かりで、途中演者の一人が舞台の川に飛び込んだら体がすっぽり隠れるほど深くてびっくり。
最後の方では天女たちが空を舞うのだが、これもフワフワではなくビュービューすごいスピード、高さもかなりあるので見ているだけでも怖いほど。
退屈する間もなく、1時間でショーは終了。
外では演者たちと写真が撮れるが、あまり寄る人がいないのはお気の毒。
いかにも観光客向けとは言え、よく出来た舞台で予想以上に楽しめた。
この後はホテルに送ってもらったが、タイ人の友人はフルアテンド、しかも我々にビタ一文使わせない。
タイ人のホスピタリティ恐るべし。
次に日本に遊びに来たらお返しせねば。
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我が偏愛する映画監督の一人はテリー・ギリアム。
「未来世紀ブラジル」でぶっとばされ、「12モンキーズ」「フィッシャーキング」も大好き。
だからこの映画が完成したと聞けば見に行かないわけにはいかない。なにしろ何度も制作が中断して、構想から30年近くもかかってようやく完成したと言う因縁の映画なのだから。
「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」The man who killed Don Quixote
ギリアムの分身である映画監督を演じるのはアダム・ドライバーで、この人は土の中を転がったりロバから落ちたりめとちゃくちゃ大変そう。
その彼が若い時にドン・キホーテ役に選んだ靴職人がジョナサン・プライスで、「未来世紀ブラジル」ファンとしては感慨無量。過去にはジャン・ロシュフォールとジョン・ハートが予定されていながら二人とも病気で降板(その後死亡)してしまったこの役、プライスが年を取るのを待ってちょうどよかったのではないか、こちらもギリアムの分身で素晴らしい。
映画の初めの方はいささかノリが悪くて、これはテリー先生もさすがに年に勝てなかったかと不安に感じたが、プライス・キホーテが登場するあたりからエンジンがかかって、自虐ネタもまじえつつ、クライマックスの仮装パーティーシーンはお得意のイメージの氾濫。フェリーニ晩年の「カサノバ」をちょっと思い出した。
さすがに全盛期のような傑作とはいかないが、この前の「ゼロの未来」よりは面白かったし前向き。
テリー先生、もう一本ぐらいSFを撮ってくれないだろうか。
劇場までわざわざ足を運んだら2本立てがお約束なので、続いては今話題のこちら。
「パラサイト 半地下の家族」
努力しても這い上がれない貧乏な家族と、何でも手に入る金持ち家族の対比は韓流現代ドラマで定番の設定。この設定を見るたびに「そんなに金持ちがうらやましいか」とそのいじましさにうんざりすることが多いのだが、この映画の貧乏家族は全員めちゃくちゃ有能で、それだけに社会の不公平さ、閉塞感が伝わるようにできている。
この家族がちょっと卑怯な手も使いつつ金持ち家族の元に入り込むあたりはコメディー。なんで場内もっと笑いが起きないのかと不思議に思うほどおかしくて、特に北朝鮮のアナウンサーネタには爆笑。
後半はだんだん不穏な空気になって、クライマックスはこれも韓流らしいバイオレンスな展開になるのだが、この辺りはわりと予想の範囲内。
ストーリーは全く違うが、全体の構成はちょっと前に見たタランティーノの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」に似ている。
感心したのは貧乏家族のにおいの件。どんなに取り繕っても貧乏くささが匂ってしまうと金持ちのガキにまで指摘され、これに反応するお父さん役のソン・ガンホがさすがのうまさ。
豪雨の日に駆け降りる階段のシーンも絡み合う電線まで象徴的で印象に残る。
いろいろな意味で韓国らしさいっぱい、うまい映画だが、これがアメリカのアカデミー最優秀賞を取ったらびっくりかも。
それにしてもこの2本立て、自分の好みではあるが、続けてみると脳みそがウニになる。
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