蝶になりたい

いくつになっても、モラトリアム人生。
迷っているうちに、枯れる時期を過ぎてもまだ夢を見る・・・。

外国で行方不明に

2023-06-07 | 老い
昨日、帰路、駅のバス停で列に並んで待っていた。
すると、見知らぬ高齢女性が、わたしに「こんにちわ」と言った。
表現としては主観を入れず標準的に「高齢女性」と書いたが、わたしには「老婆」という2文字が浮かんだ。
なので、、、失礼かも知れないが、、、この人は認知症気味の人で、見知らぬわたしに声をかけているのだろう、と思い、首をほんの少し前に傾け、「どうも、、、」程度の無言の挨拶をした。
数秒?数十秒後に、ん?待てよ?ひょっとして知っている人かも?と思い、「こんにちは」と言って、顔をまじまじ見た。
昔、見たことがある顔の原型が、じわ〜っと目の前の顔から浮き出て来るような気がした。
じろじろ、じわじわ、誰?誰?この人、、、
目の色はお年寄り独特の薄いグレー(シベリアハスキーのような)、目の周りは少し赤みを帯び、ピンクとグレーに近い透明感のある顔の皮膚(肌)とのコントラストを成し、帽子からのぞく髪は白髪ボサボサ、、、
と、顔の一つ一つを深く読み込むように見ていると、、、自然にわたしの口から出た。

「○○さんですか?」
脳の奥深くで考えたわけではない。
一定の時間(数秒)で、目の前の顔、風体から、時間の経過の予想変化を割り引いて、すっと名前が出てきた。
たいしたものだ、わたし。(自画自賛)

うち(自宅)の斜め前(2軒隣り)のご近所さん。
あらどうもどうも、とおしゃべりがはじまった。
面白い話がいっぱい。
彼女は90歳、ご主人は93歳ぐらい?
わたしの母世代。
彼女の旦那さんが、認知症が始まって困っているらしい。
そもそも10年ぐらい前からその前兆はあったとのこと。
スイス旅行にきょうだい夫婦2組で行った時、一人で荷物を置いたまま、行方不明になって大変だったらしい。
現地の警察にも連絡し、家族は足止めになり、丸1日、同行したきょうだい夫婦は待機して自由行動ができなかったという、その時の不満が噴出する。
ご主人は一人で楽しく観光していたそうだ。
つい最近も娘さん家族の誕生日会を開いたのに、出席したご主人は、そんなことは知らぬ存ぜぬと言い張る。
で、その時の写真を見せても、知らないというスタンスは崩さない。
わたしの実母もそういうこと、あるある、だ。

いやはや、大変。
だが、この○○さんは面白い方。
話がきちんとしていて、わかりやすく知性もユーモアもたっぷりなので、聞いていて楽しい。
色んな最新エピソードを披露してくださる。
昔の知人がお互い老化して顔がわからなくなり、つい最近、待ち合わせ場所のホテルのフロントに聞き合わせに行ったところ、二人ともがわからず聞きに来た。
目は細くなり、あんなに美人だったのに片鱗がないと。
お互いがお互いを、変貌した姿を認識できないので、待ち合わせても、他人の力を借りないと出会えなかった、と笑顔で仰る。
いろんな、あるある話、話術に長けている。

難点はただ一つ。
聴く一方に徹しないといけない。
オーディエンス(観客・聴衆)となって、楽しいお話をゲラゲラ笑いながら聴く。
だからそれで結構なことなのだが、質問したり、話の流れを変えたり、こちらから何か言ったりしても、一向に耳にも頭にも入らない。
一方通行のラジオやテレビだと思えば良いわけで。
ただし、チャンネルを変えたり、消したりは出来ない。

いくつになってもユーモアは大事だと感じる。
お人柄が滲み出る。
ただ、歳を取ると、外見は確実に老いる。
肌の美しい、この方、依然、肌は美しいままだが、年齢は正直だ。
わたしの今いる実母と完全に重なる。
年老いた人々は次々に歳の順に他界し、実母はわたしの家族親戚(親世代)で生存している貴重な高齢者である。
そりゃそうだ。
わたし自身が高齢者なのだから。