雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

若くよろしき男

2014-12-30 11:00:55 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第五十四段  若くよろしき男

若く、よろしき男の、下種女の名、呼び馴れていひたるこそ、憎けれ。知りながらも、「なに」とかや、片文字はおぼえでいふは、をかし。

宮仕へ所の局によりて、夜などぞあしかるべけれど、主殿寮、さらぬただ所などは、侍などにあるものを具して来ても、呼ばせよかし。手づから、声もしるきに・・・。
はした者、童女などは、されどよし。


若くてまずまずの身分の男が、身分の低い女の名をなれなれしく呼んでいるのは、何とも感じがよろしくありません。
その名前を知っていても、「何だったか」とか、名字の半分くらいは思いだせないかのように呼ぶのが、奥ゆかしいのです。

下仕えの女官を呼ぶ時は、宮仕え所の女房の局に立ち寄って、夜などは具合が悪いでしょうが、宮中なら主殿寮、そうでない普通の所なら、侍所などにいる者を連れて行って、女を呼ばせるのがよろしい。
ご自分で呼ぶのでは、誰の声だかはっきり分かってしまうでしょうに・・・。
もっとも、まだ幼い下仕えの者や童女などは、まだ恋愛関係には無縁でしょうから、ご自分で呼ばれてもいいでしょうね。



男が女を呼ぶのは、なかなか難しいことのようです。
もっとも、この章段に書かれているのは単に少納言さまのお考えということではなく、当時の宮中などでは常識だったのでしょうね。
まあ、現代でも、いい歳した小父さんが、若い女子社員に「何々チャン」などと言っているのは、かなり気持ち悪いですよね。
コメント
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