雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

川は飛鳥川

2014-12-25 11:00:24 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第五十九段  川は飛鳥川

川は、
飛鳥川。「淵瀬もさだめなく、いかならむ」と、あはれなり。
大井川。
音無川。

七瀬川。
耳敏川。「またも、なに言をさくじりききけむ」と、をかし。
玉星川。

細谷川、
五貫川、
沢田川などは、催馬楽などの、思はするなるべし。

名取川。「いかなる名を取りたるならむ」と、きかまほし。
吉野川。
天の川原。「機織女に宿借らむ」と、業平がよみたるもをかし。


川は
飛鳥川。「水の流れが定まっておらず、行く先はどうなるのだろう」と、しみじみとした情緒が感じられます。
大井川。
音無川。

七瀬川。
みみとし川。「さて、何をそれほど詳しく聞き取ったのでしょう」と、おもしろい。
玉星川。

細谷川、いつぬき川、沢田川などは、催馬楽などを思い起こさせるものなのでしょう。

名取川。「どんな評判を取っているのですか」と聞きたいものです。
吉野川。
天の川原は、「機織女(タナバタツメ)に宿からむ」と、在原業平が詠んだというのも風情があります。



いずれも古歌や催馬楽などから引用したもののようです。
なお、名取川のところでは、当時には今で言う「名取制度」などなかったでしょうから、ここは「評判を取る」といった意味でしょう。

この川を紹介する章段も、三幅対(サンプクツイ)という形式が取られています。
それぞれに少納言さまお得意の幅広い引用がなされていますが、どうも、臨場感に乏しいような気もします。
もしかすると少納言さま、川にはあまり興味がなかったのかもしれない、とも思うのです。
コメント
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