雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

たとしへなきもの

2014-12-15 11:00:31 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第六十八段  たとしへなきもの

たとしへなきもの。
夏と冬と。
夜と昼と。
雨降る日と照る日と。
          (以下割愛)


比べようがないほど違っているもの。
夏と冬と。
夜と昼と。
雨が降る日と日が照る日と。

人が笑うのと腹を立てるのと。
年とっているのと若いのと。
白いのと黒いのと。
自分が愛する人と憎む人と。

同じ人でありながらも、自分に対しての愛情がある時と変わってしまった時とでは、本当に別人のように思われます。
火と水と。
太っている人と痩せている人。
髪が長い人と短い人と。

夜烏がたくさんとまっていて、真夜中頃にねぐらを争ってか騒いでいる。枝から落ちそうになってあわてふためき、枝から枝へ伝いながら寝ぼけ声で鳴いている様子は、昼間に見るのとはまるで違っていて、愛敬たっぷりでおかしい。



この段の内容も、とても分かりやすいものです。というより、本当に少納言さまの文章かと疑うほどで、小学校の、それも低学年の作文を見ているような気がします。

ただ、最後のカラスの部分は、昼間の精悍で賢そうなカラスに対して、夜中のとぼけた様子をおもしろがっているあたりは、少納言さまらしさを示してくれています。
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