『 千手観音を盗み出す ・ 今昔物語 ( 16 - 39 ) 』
今は昔、
奈良に招提寺(ショウダイジ・唐招提寺のこと)という寺がある。その寺に千手観音が安置されている。これは、化人(ケニン・仏や菩薩が人間に変身したもの。)が造り奉った観音である。
中比(ナカゴロ・昔と近頃の中間の頃)その国に盗人がいて、「この観音は、銅(アカガネ)を以て鋳造し奉っているので、これを盗み取って、溶解させて、それを売りながら暮らしていこう」と思いついて、ある夜、盗人はそっと隙を窺って、策をめぐらして堂に入り込み、この千手観音を盗み取って、背負って堂を出た。
そして、その寺から遙か先まで逃げていった。
やがて夜明けになったので、この盗人の [ 以下、すべてが欠文。]
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* 残念ながら、後半部分は欠文になっていますが、破損によるものらしいです。
今昔物語の中には、仏像が盗まれるという説話が幾つかありますが、「観音像が声をあげて拒んだ」ため、盗人が逃げ出したという形が多いようです。
本話も、唐招提寺の千手観音像は健在ですから、無事だったことになります。
もっとも、この像は丈六の大きなものですから、とても盗人一人が背負って逃げるのは無理なようにも思いますが。
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