著者は博士(文学)であり、建築的な観点よりも、「水族を見る、水族と人」の観点だ。なお、当方は海遊館の事業企画に関わったが、博士(工学)とMBAであり経験と視点が違う。
歴史の軸で分析しており、資料として価値がある。但し、近代のパヴィリオン型(ケンブリッジ・セブン(以下C7A)の設計作品など)は異論がある。パヴィリオン型とは一筆書動線で決まった通路を動く博覧会的シナリオ型だ、ディズニーはさらにライドで運ぶ。これをC7Aは大水槽とセットで売り物にしていた。
今回、C7A設計のアトランタのジョージア水族館( https://en.wikipedia.org/wiki/Georgia_Aquarium )がショッピング・モールのような「自由動線」というのに衝撃を受けた。一度、行ってみたいものだ。
知見として:
・動物と水族の「園館」の推進
・洞窟(グロッタ風:フィンガル洞窟、ガウディも影響された19世紀中頃の流行)とパノラマ(映像展示のはしり)
・興行(アメリカのパーカーなど):珍しいもの志向、都会へ
・世界の水族展示
・循環の水質管理設備
・技術:ガラスからアクリル、大水槽へ
・C7Aのボストン、ボルティモア、大阪(海遊館)のパヴィリオン型水族館の歴史
・ハイパー・リアリティ:本物より本物らしい展示→ディズニーランドとの比較が面白い、にせものの面白さだ、漫画や二次元マニアと同じかもしれない
最後の水族館は「本当の自然より自然らしい」というハイパー・リアリティの指摘は「そうだな」と思った。カイヨワの遊び( https://en.wikipedia.org/wiki/Man,_Play_and_Games )の中のIlinx( https://en.wikipedia.org/wiki/Ilinx )で別世界に飛んだという経験かもしれない。
文学の面から水族館をとらえ楽しめる著作だが、内容は重い