虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

『生きる力』のもとは真実の自分の言葉をはなすこと 人と出会うこと 2

2011-02-05 11:21:00 | 教育論 読者の方からのQ&A
明治生まれの大村はま先生の指摘は、
今もちっとも古くなっておらず、むしろこれから教育の場で非常に重要になってくるのかもしれないと感じました。

というのも、
ちょうどいただきものの雑誌類を整理していて、ついでにパラパラと拾い読みしていたら、こんな記事を見つけたのです。
記事で目にとまったのは、「物語る力」という言葉。

ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長の大前研一氏が、
アメリカ人ジャーナリストのダニエル・ピンクのこんな言葉を紹介していたのです。
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いまもっとも必要とされるのは「物語る力」だ。
「符牒的な答」など存在しない時代だから、自分の意見を物語として説明し、相手の「共感」を得る必要がある。
もちろん反論も出るだろう。それをくみ上げたうえで、両者が納得できる結論を生み出す。そうした「合成する力」こそ、21世紀のリーダーに求められるものだ。        
 (講談社MOOK セオリー より)
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「物語る力」といえば思い浮かぶのが、息子の学校のある先生です。
過去記事を紹介しますね。↓

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息子の通っている学校に、
『教えるのがとても上手な先生』という方がいらっしゃいます。

息子いわく、
学習内容への興味を掻き立ててくれるし、モチベーションが上るし、授業がわかりやすくてとても良い~とのこと。

その先生が、今の学校で教えるようになるまでの経緯を聞いて、
ちょっとびっくりしてしまいました。

何でも、旅行好きだった先生は、若い頃は、定職に就かずに、
世界中を貧乏旅行して渡り歩いていたそうです。
あるとき、塾の教師になろうと働き始めたとき、
その塾は、生徒たちに、
「授業のわかりやすさ」等で先生を評価するシステムをとっていたそうです。
すると、何と、結果は最下位だったのだとか。
その結果を前にして、
「絶対、だれよりも教えるのがうまい教師になってやろう!」と決意したそうです。


その後、その思いを強くして、教員を目指して勉強し始めたときは、
かなりの年齢になっていて、
いざ、教職に就こうと学校を打診しはじめたときは、
教員になる年齢制限の35歳くらい~を、過ぎていたのだとか。

そこで、この先生はどうしたかというと、
自分がどのような経緯で今にいたり、どんな人間か……等、自分の思いをつづった手紙を50通、さまざまな学校に送ったのだそうです。
すると、年齢制限の枠を超えているとはいえ、
5通の返事があったのだとか。

その後、その先生は、その5つの学校に
「自分はまだ教育実習を受けていないので、
働く際に、そこの学校で、まずそれを受けさせていただいてから、
働かせてください~」といった内容の手紙を送ると、

何と、良い返事が3つあったそうです。

そうして、今の学校で、授業の上手な先生として
働いておられます

この先生の情熱を受け取って、手紙を返したってところで、
うちの学校もなかなかやるじゃん~と思っているらしい息子。
確かに、先生もすごいし、学校も太っ腹ですね。

人間、なりたい夢がはっきりしていて、
思いが強ければ、どんなことでもなせばなるのもですね~
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息子はこの先生の
「人は会って話をすれば面白い人間かどうかわかる。そのために面接があるようなもんだ」という言葉が気にいっていて、
娘と将来について話すとき、よく話題にしています。

娘も、「音楽聞いたり、本物の芸術に触れたり、自分でいろんな体験をすると、それが全部自分の一部になるって読んだことある。
成績とか資格などとは別に、自分らしさを磨く体験をいろいろしておきたい」と言います。

大前研一氏は、次のようにもおっしゃっています。(簡単に要約しています)
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新しい時代において20世紀型の秀才はまったく役立たない。どんなに暗記が得意でも、正解そのものが存在しないからだ。

答えがないなら、自分の頭で考えるしかない。
そういう意味では、先生に言われたことを従順にこなす子どもより、
むしろ単純作業に嫌気がさして宿題をわざと忘れてくるような子どものほうに可能性がある。「なんでやらなきゃいけないのか?」と疑問に感じる心が大切なのである。

新しい時代に通用する人材を見抜くポイントは3つある。

まずは、前提条件を提示する能力。
知識自体は価値を持たない時代には「頭の構造」を調べる必要がある。
「そもそも」という発想ができない処理型人間ほど無用の存在はいない。

次に大切なのは環境の変化に合わせて自分を変えていく能力だ。
細かい兆しを見落とさず、一人で柔軟に対応するしか生き残る方法はない。

3つ目は、能動的な生き方をしてきたか。アメリカのヘッドハンターは、必ず過去の業績を見る。中学の頃に運動クラブを立ち上げて会計係をやったとか、高校のブラスバンドで老人施設を計画的に訪問していたとか、何でもいい。
イニシアチブをとる人間だったのか、それともフォロアー(その他大勢)だったのか、自然に見えてくる。

一方、日本の履歴書は箇条書きで、資格の欄に普通免許とか書き込むだけ。
国民皆免許の時代には何の意味もない。将来、花開くようなやつは、仲間を集めて近所の川掃除をしていたり、学生時代に冒険旅行に出たり、必ず何か語れるものをもっていた。
20世紀型の秀才たちは不思議と書くことがない。先生の言うとおり生きてきた人間は、朝起きました、歯を磨きましたという日記風にしか書けない。

エスカレーターに乗って受動的に生きてきた人間は、文章を書かせるだけでもはっきり見分けられる。
         (講談社MOOK セオリー より)
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これから「物語る力」が、どうしてこうも求められるのか?

それは、グローバル化が進んでいるからなのでしょう。
大前氏のインタビューから例を借りると、
日本の若者たちも日本の外に出て、
海外の工場が閉鎖するようなときに、
どうやって相手を納得させるかといった手腕が問われるようになってきたからなのでしょう。

新学習指導要領の『生きる力』でも、思考力・判断力・表現力等をはぐくむ観点から、言語活動の充実があげられています。

それはただ語彙をたくさん知っていて、
問われたらそれなりの答えが返せるということより、
大村はま先生のおっしゃるように、

『本気で考えて、本気のことを素直に言う』
『自分の心から湧き出てくる真実の言葉を言う』

ことが重要なのでしょうね。


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1 コメント

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非常に考えさせられる記事でした。 (がんも)
2011-02-07 11:01:30
今回の記事、とても深く考えさせられる記事でした。

うちの子ども達、本気の気持ちをしっかり言葉にしているかな?
それ以前に私自身が気持ちを受け止める時間を持っているか、どんなネガティブな無気力な気持ちでも受け入れるだけの器があるか・・・

上の子は知的障碍なのでつい「話のつじつま」「語彙」「言葉の使い方」が気になってしまうし、下の健常児は健常児で、親の理想とするような発言でないものが出るとつい構えて説教モードに突入してしまったり・・・

「本気の言葉で話す」ような子どもになるには、まずはどんな本心を言っても受け入れられる環境を作らないといけないなと思いました。



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