1~3歳までの子育て環境について、深刻な問題だと感じていることがあります。
それは、
★子どもが自分で考える
★自分の感情で感じる
という仕事をほとんど奪い取ってしまうものとなっていることです。
ちょうど3歳の子たちのブロック教室をしていると、3歳くらいの子というのは、すぐに物を奪い合うのですが、そのたびにたちまちお母さんが「貸してあげなさい」とか、「取ったらダメ!」とか指示を出しているのです。
子どもには現場ですぐ教えるのが大事というのはわかるのです。
でも、はやく決着させたい気持ちと、親同士の遠慮が、子どもから自分で考え判断する能力を奪った上、間違った教育をほどこしている場合がよくあるのです。
☆ちゃんが★ちゃんのおもちゃを奪おうとしたとき、こんなことがありました。
たちまち☆ちゃんのお母さんが、☆ちゃんに「ダメでしょ~!」
★ちゃんがすんなりおもちゃを☆ちゃんに渡してしまって、呆然とした顔をしていると、一同「えらい~!」と言いながらパチパチパチ~!!
☆ちゃんに「ありがとうは?」 で一件落着~
これで……いいのでしょうか???
まず、★ちゃんは、次にどうすればよいか学べてませんよね。
「ありがとう」と言えば、取ってしまってもいいのでしょうか?
また☆ちゃんは、何も考えずに、「手さえ離せば褒められる」「自分が我慢するのが正しい」という間違った対応を教えられてますから、今後、混乱して、自分で考えることを放棄してしまうかもしれません。
なら、こういう場面でどういう対応をすればいいでしょうか?
こういう場面って、その都度、状況によって変化します。
ちょうだい!っと欲しがってもOKな場もあれば、相手が赤ちゃんだから譲ってあげよう~という場合もあります。
まず、今の子どもの気持ちや欲求を言葉にしてはっきりさせる・認めてあげることがいりますよね。
奪おうとした子には、「●●のおもちゃが使いたいのよね、●●したいもんね」
奪われそうになって、おもちゃをにぎってる子には、「おもちゃ貸してほしいんだって。どうする?」
さらにぎゅっとおもちゃをにぎれば、「今、貸したくないんだね」
最初の子に「今、貸したくないんだって」
そういって、あとは渡してしまうなり、嫌がって渡さないなり、子どもの判断にまかせます。
客観的に見ての善悪は、子どもの心の中で熟成されて、ゆっくり良い判断がくだせるように、徐々に教えていけばいいのではないでしょうか。
1~3歳の子にとって、物の奪い合いは、頭をフルで働かせるチャンスです。
でも「考えなさい」と言うのは矛盾しているのです。
考える子にしようと思いながら、「考えなさい」という指示を与えて、すぐに答えを出させようとしているのですから……。
考えるという行為は、「考えなさい」と言われてするものではなくて、さまざまな場面にぶつかって、自分で解決したり、判断を下さなければならないとき、しはじめます。
「考えなさい」という指示で考えようとすれば、頭が空っぽになってしまいます。
それよりも子どものくだした結論がたとえ「ベスト」でなくても、今のその子にとっては、それが「ベスト」の答えなのですから、間違っていれば、間違いを学ぶ良いチャンスが与えられたのだし……といったんそれを認めることが大事なこともよくあります。
あとひとつ、「考える」ことの障害物となるものに「体験のともなわない知識」があります。
知的好奇心が強いことは良いことです。
でも、手で簡単なものを作るレベルに意識を目の前の現実に向けられない子が、大量の知識を持つことはとても危険なことでもあると感じています。
危険とまで書いたのは、私が軽度発達障がいの子らとたくさん接し、そうしたさまざまな情報に目を通すことがあるからです。
軽度発達障がいの子の特徴は「できることとできないことの差の開きが大きい」ということです。
「言葉は達者なのに極端に不器用、読書好きで図形はさっぱり」「すごく手先が器用なのに、言語面の発達がゆっくり」「すごい作品が作れるのに言葉の理解力が弱い」といった感じです。
脳のタイプが一般的な子と少し異なるため、そうなるのです。
でも、最近、親御さんが知識をインプットしようとする態度で子どもと接していたり、語りかけ育児を誤った方法でしていたりするため、発達障がいの子でないのに、「できることとできないことの差の開き」が大きな子が増えているように思います。
目安として、4歳半~の子で、「知識は豊富なのに、ゴム鉄砲や簡単なコマを回すこと(ひものものではありません)ができない」場合、子どもの生活を見直す必要があると思います。
こうした子は頭が働くし、さまざまなことに敏感に気づく力があるのに、実際には学校に入って、テキパキ動作することができなくて、自分に自信を失ってしまいます。
「記憶するけれど、思考しない」という態度にもつながります。
『思春期にがんばっている子』という本の中で明橋大二氏が、「大人が、もう一度遊び心をとりもどすこと。それがそのまま、子どものやる気を育てることになる」とおっしゃっています。
明橋氏はこんなこともおっしゃっています。
遊びに満ちていたはずの子どもの世界が、今は、指示され、命令され、強制され
る「仕事」ばかりになってはいないでしょうか。
それが子どもののやる気をそぎ、ひいては、学ぶこと、働くことに、苦痛しか感じられなくさせているように思います。
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