金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

11:絲山秋子 『袋小路の男』

2007-01-18 09:54:45 | 07 本の感想
絲山秋子『袋小路の男』(講談社)
★★★★☆

表題作とその続編である「小田切孝の言い分」、
「アーリオオーリオ」の三編を収録。

表題作は高校生の模試で使われているのを一部読んで
「あんまり好きじゃなさそうだなあ……」
と思っていたのだけど、なかなかおもしろかった。
高校時代の先輩である小田切を忘れられず、
指一本触れられないまま、彼に振り回されて
「都合のいい女」に徹している主人公。
この小田切って男が、過去の栄光にしがみついてるような
典型的なダメ男で、読んでいるこっちまで「やめておけ!」と
言いたくなる感じなのだけど、この「純愛」というには
執念深くてコワイ片想いがなにやら新鮮でもある。
そして女の一人称で書かれていた表題作に対し、
「小田切孝の言い分」は三人称を用いて
男と女、双方の視点を織り込んでいて、
女のほうもダメ女だということが発覚。

清掃工場につとめる男が中学生の姪と手紙のやり取りをする
「アーリオ オーリオ」がいちばん好きだった。
もの悲しく、淋しくて。
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10:酒見賢一 『陋巷に在り〈12〉』

2007-01-17 11:20:14 | 07 本の感想
酒見賢一『陋巷に在り〈12〉聖の巻』(新潮社)
★★★★★

悪悦との死闘の末、太長老は息絶え、長老たちも自刎した。
顔氏滅亡の場にかけつけた顔回は、子蓉への情熱を確認し、
尼丘の神への怒りを爆発させる。
一方、成城を包囲していた孔子は、悪悦の細工によって
尼丘攻撃を知らされ衝撃を受け、倒れてしまう。
子服景伯の捨て身の作戦によって、處父は敗北を知るが
自分を信じてついてきた者たちのため退くことができない。
孔子という求心力を欠いた魯軍は、成城毀壊を果たせないまま
軍を引き、孔子は自らの罪について煩悶する。


悪悦、なんで生きてるの!? とブルブル。
少正卯のもとへ運ばれた悪悦、最後の最後で
またなにかやらかすんでしょうか。
顔氏滅亡の話も悲しかったのだけれど、
孟孫家のため、互いに自らの信じる道をつきすすむ處父と景伯が
激突するところはやりきれない。

はあいかわらず存在感がない。
死の間際に愛を確認しあってる子蓉と顔回を見て、
なにか思うところあるだろうに……。
顔回はを選ぶという予言めいた会話は、今までに何度か
出てきたのだけど、そっちのほうは進展があるのかしらー。
そして、とにかく先生大好き!な子路がかわいい。
孔子と子路のやり取りはなぜかいつも笑える。
孔子は顔回を愛しているようにはちっとも見えず、
「最愛の弟子」ってむしろ子路のほうでは??

とうとう残りあと一巻を残すのみ。

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9:橋本治 『いま私たちが考えるべきこと』

2007-01-16 12:35:35 | 07 本の感想
橋本治『いま私たちが考えるべきこと』(新潮社)
★★★★☆

たしか、『三四郎はそれから門を出た』の中高生向きの書評の中で
挙げられていたもの。
現代社会の諸問題の根本にあると言える「私」と「社会」、
「私」と「私たち」の齟齬について、
「前近代」と「近代」の関係をからめながら考えるエッセイ。

高校生の女の子が教科書に載っていた橋本治の評論を
「なに言ってるかさっぱりわからない」
と言っていた。
思想的な問題だからだということもあるけれど、
わざとわからないようにわかりにくく書いている部分が
あるせいだと思うのは、わたしの気のせい?
この本も「言葉遊び」の部分で混乱させられそうになる。

時間をかけ、ゆっくり咀嚼しながらようやく読了。
わたしに論理的思考能力が欠けているせいもあったのだろうけど、
やっぱり思想に関する本は読む人を選ぶのだと思う。
たとえば「近代」と「前近代」という対立概念は、
ある程度ベースがないとなかなか理解できないと思うんだよね……。
しかし「『私たち』を考える」と「『個性』とは哀しいものである」
の章はとてもおもしろかった。
小説に限らず、橋本治の仕事はすごいと、
よく知らないながらもなんとなく思う。
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8:田中聡 『妖怪と怨霊の日本史』

2007-01-15 13:52:03 | 07 本の感想
田中聡『妖怪と怨霊の日本史』(集英社新書)
★★★☆☆

怨霊―それはわたしの心を大学時代に引き戻すミラクルワード!
(友だちが早良親王好きで、卒論もその関係だったから……)
かつてのオタクスピリットはどこへやら、
日本史関係の本を読まなくなって久しいけれど、
「ツチグモ」とか聞くと妙にそわそわしてしまうのであります。

説話や史料をもとに、神代から南北朝までの
怨霊や妖怪のかかわるできごとを紹介し、それについて考察を加えた一冊。
「ツチグモ虐殺と蛇神の威力」の章を目当てに借りてきたのだけど、
読みたかった「常陸国風土記」の記述は軽くスルーされていてがっかり。
しかし、染殿后と天狗、聖剣の変遷など、「史料」ではない
説話の世界は初めて知ったことも多くておもしろい。
卒論を書くときに使った史料や論文の作者名があちこちに出てきて
なにやらなつかしい感じも。
『太平記』の時代以降、妖怪たちが力を失っていく、など
「なにを根拠に言ってるんだ!!」と納得いかないことも多かったけど、
入門書というか、サワリとしては読みやすく、楽しめました。

前半で、少子部栖軽のエピソードのあらわす意味について、
結構なページ数を割いて解説しているので、
ディープな『白鳥異伝』(荻原規子)ファンも楽しめるはず。
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7:阿部和重 『グランド・フィナーレ』

2007-01-13 20:23:12 | 07 本の感想
阿部和重『グランド・フィナーレ』(講談社)
★★★☆☆

初めて読む作家さん……と思ったら、中に入っている
「馬小屋の乙女」を『文学〈2005〉』でそれと知らずに読んでいた。

表題作「グランド・フィナーレ」は芥川賞受賞作。
ロリコンであることが発覚して離婚、田舎に引きこもっていた男が
女子小学生たちの演技指導をすることに……
というあらすじを読んだときには大丈夫かしらと思ったけれど、
なんとか読めました。
わたし、「ロリコン」がなぜかものすごく怖いのです。
読んでいた小説、見ていた映画に幼女暴行のシーンが出てきて、
血の気を失って倒れたこと数回。
そんなわけでこの本、「ううっ」と思うところもあったのだけど、
一つの作品としてはおもしろかったんじゃないでしょうか。
突き放したラストも、結末を描かないのがよかったと思う。
個人的には、悲愴な結末を想像してしまうけれど。

「馬小屋の乙女」「新宿ヨドバシカメラ」「20世紀」は
なんだかよくわからない、というのが正直なところ。
コメント (3)
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6:穂村弘 『もうおうちへかえりましょう』

2007-01-12 11:55:07 | 07 本の感想
穂村弘 『もうおうちへかえりましょう』(小学館)
★★★★☆

購入。
小学館から出てるので『世界音痴』と同シリーズのエッセイ第2弾と
なるんでしょうか。
「たぶん野口英世ではないはずだ」と「対談」でバカ笑いしてしまった。
しかし、『世界音痴』に比べると笑いの要素は少なめで、
短歌に反映されている時代性の考察など文学的な話が多い。
古本の話ではあれもこれもと読んでみたい気持ちになる。

三四郎はそれから門を出た』の中で、三浦しをんが
『世界音痴』を挙げて、思春期というのは大人になっても続く、と
書いていたけれど、そりゃそうだ。
大人になったからといって自分の内面世界ががらりと変わるわけでもなし、
根本的な解決がなされない問題には、30代、40代になっても
きっと悩まされ続ける。
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5:酒見賢一 『泣き虫弱虫諸葛孔明』

2007-01-12 11:25:35 | 07 本の感想
酒見賢一『泣き虫弱虫諸葛孔明』(文藝春秋)

『陋巷に在り』の十二巻が貸し出し中だったので、
これでごまかそうと思って借りてきたのだけど……失敗。

張飛と関羽という二人の男(どっちかはチンピラ)が、
劉備玄徳のこと「アニキ!」って呼んでて、
劉備は三顧の礼をもって諸葛孔明を迎え入れました。
三つの国が戦っています。
なんか、曹操とかいう男もいた。

……以上がわたしの持っている三国志に関する知識のすべてです!
アニメも第1話で挫折、児童書も一巻の途中で挫折、
こんないいかげんな知識のままここまで来てしまいました。
そんなわけでこの本に関してはわたしのセレクトミス。
劉備との対面までの諸葛孔明の半生を、筆者のツッコミを交えながら
ギャグタッチで描いている。
すっごくおもしろく書いてあるんだろうなあと思うのだけど、
おそらくこれは既存のイメージとのギャップを楽しむものであって、
元ネタを知らないわたしにはおもしろさがよくわからないのでありました……。
しかし、孔明の嫁はすごい。
ロボット作ってたってホントなの??
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4:畠中恵 『ぬしさまへ』

2007-01-10 23:49:53 | 07 本の感想
畠中恵『ぬしさまへ』(新潮文庫)
★★★☆☆

しゃばけ』の続編。これも籐子ちゃんライブラリーから拝借。

二冊目からはずっと短編集なのかしら?
籐子ちゃんが言ってたように短編になると間延び間もなく
テンポよく読める。
少ない枚数で話を進めなければいけないせいか、
若だんなが妙にアクティブ。
いい性格になってきて、謎解きのところなんて、
「お前たちまだ、分かっていないのかい?」
などとホームズみたいなことを言い出す始末。

「仁吉の思い人」はタイトルページを見ただけで相手が
わかってしまい、やや残念。
「虹を見し事」ではなんだかんだ言って
甘えん坊な若だんながいい。
そして今回も、イラストの鳴家がいちいちかわいくて、
まじまじ見てしまう。
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3:金子由紀子 監修 『スッキリ朝とゆったり夜』

2007-01-08 13:50:13 | 07 本の感想
金子由紀子 監修『スッキリ朝とゆったり夜』(PHP研究所)
★★★★☆

こ、これを読んだら早起きできるんじゃないかと思っ、て……っ……!

本に頼ろうとしているところが大人として間違っていますね。
ちなみに今日の起床時間は午前11時です。
午前中! セーフ!

昨年何冊か読んだPHP研究所の生活シリーズ。
イラストは『はじめよう!気持ちのいいくらし』と同じく、ひらいみもさん。
絵本のような感覚で、朝と夜の過ごし方についての提案を読める
かわいい一冊。
ああ、こんな生活を実践できたら、わたしもかわいい女の人に
なれる気がするわ……!実践できたらね!
最終的にはやっぱり意志の問題なんだよね。
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2:畠中恵 『しゃばけ』

2007-01-08 13:33:11 | 07 本の感想
畠中恵『しゃばけ』(新潮文庫)
★★★☆☆

籐子ちゃんライブラリーより拝借。
日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。

病弱で甘やかされて育った大店の若だんな・一太郎は、
こっそり外出した先で殺人事件に巻き込まれる。
それ以来猟奇的殺人事件が連続して起き、
根本的な原因が自分に関係していると感じた一太郎は、
まわりの「妖」たちと解決に乗り出すことになる。

文芸誌に掲載されているのをちらっと見たことがあったのだけど、
こういうお話だったのね。
殺人事件の謎解きというミステリー要素をふくみながらも
ほのぼのしたやさしい雰囲気の物語。
やや間延びしてるかな?と感じるところもあったのだけど、
キャラクターは魅力的だし、おもしろく読めました。
章の最初にちいさく入っているイラストがとてもかわいくて、
胸キュン
コメント (4)
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