★★★★☆
【Amazonの内容紹介】
「武士の世をつくる」。
頼朝の悲願を背負い、妻として母として
時代の要となった政子。
頼朝晩年の謎をも大胆に描く傑作時代長編。
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前半は
「小説の体を借りた新書でも読まされてるのか?」
ってくらい、小説としての面白みがなかった。
何が退屈って、史実や逸話として残っているエピソードが
そのままにひたすら続くのだ。
歴史小説で読みたいのは、史実にからんだ、でもオリジナルの
味付けなんだよ!
前半はそれがほとんど感じられず、面白かったのは
頼朝一家のギスギスした親子関係だけ。
しかし後半は、俄然面白くなってくる。
「吾妻鏡空白の四年間に迫る」と帯にあるように
ここからオリジナルの要素が強く出てきた。
※以下ネタバレ注意
後半、頼朝が認知症になってしまうんである。
作中で皆が言うほど「頭脳明晰」な感じが前半にない
(いろいろ理由付けてるが、せこくて小心者のおっさんだ)ので
ギャップはそれほど感じなかったのだけども、
「娘の入内」に向かって動き出したあたりからおかしくて、
打つ手にキレがなくなってきただけでなく、
人の名前も忘れてしまい、次第に娘の死も理解できず、
妻のことも分からなくなってくる。
それでも将軍という地位に対する執着は強くあり
隠居も拒み、なのに決断もできないので仕事も滞る一方。
ボケ始めた頼朝を操ろうと比企&梶原、頼家、チーム北条の間で
駆け引きが……というのが後半の流れ。
「建久七年の政変」前後の鎌倉サイドによる
朝廷工作のグダグダ感や、頼朝の不審な死については、
全く違和感なく独自設定と折り合いをつけていて面白かった。
私の中の政子のイメージは、この小説のものに近いかも。
冷徹な策謀家ではなかったと思う。
頼朝の認知症や頼家の危険性に焦点を合わせるためも
あっただろうが、時政を悪く描いていなかったのは新鮮。
そして畠山重忠は、ここでも眩しいぐらいに清い。