昔から生活態度の宜しくない自分にとって、このように腰が低く謹厳実直なご夫婦をみるとこちらの背筋も伸びてしまうので不思議である。そしてこの開業医としてはごく平均的な早期の病院紹介をかくも過分に評価してくれて以来、どうやらこちらに信頼を寄せてくれているようなのである。まあ誤解で患者さんから恨まれるよりは誤解で信頼されているようなものであるのでいいとしようか? しかしながら「ちっ、違うんだ。僕はそんな大層なもんじゃないんだ」といいたい気持ちである。こうなると「この患者さんたちには精一杯の医療を提供してあげよう」という気持ちになってしまうので不思議である。たぶん今の自分はこの二人に「よく思われている」ので、このままよく思われ続けたいという深層心理がそうさせているのであろう。人間とはかくも単純なものか? いや、ただ自分が単純なだけなのだろう。