さてこれから入院・手術する患者さんに「手術して、しばらくの間入院だから頑張るんだよ」といったところ、「えっ?なんだい?先生が診てくれるんじゃないの?あっそう、まあいいけど、また家に帰ったら先生が私の最期を看るんだよ。いいね」と言われた。大昔自分が小学生の頃、この患者さんのご主人は自分の亡父によって最期が看取られた。確か大晦日で家族揃って温泉にいった時だった。父は危篤と連絡を受けて、我々をおいて東京まで一人で引き返したことがあった。時代は替わって今は平成である。今度はその奥方の最期を自分が看取る確約をずっと前からさせられている。こんな予約診療もあるんだなと思いつつ「なんだよ、そんなまだ40年以上も先のことわからないだろ。まだまだ先の心配よりも骨折の心配しなくちゃ」といったところ、「40年先? あたしゃ一体、幾つになるんだい?」といって笑われた。今の時代にはきっとそぐわないであろう、まさに昭和の時代のレトロな訪問診療である。