ICUで集中治療を続けていると1週間目以降は感染症、敗血症との戦いとなることが多かった。外傷を契機に起こる種々の感染症は、特に体力が低下した傷病者では多かれ少なかれ必発であった。そしてこの感染症は敗血症にすすみ、最後は多臓器不全になっていったのである。我々の「抵抗」もむなしく入院後数週してから亡くなることもままあった。交通事故で死亡した場合、必ず所轄の警察の担当者に連絡をして検死にきてもらうのが常であった。しかしこの24時間ルールをとうの昔にクリアしてしまったせいか、「えっ? 検死ですか?でも交通事故死亡じゃなくて『病死』ですよね? 検死は必要ないんじゃないですか?」とあからさまに断ろうとする警察官もいたのである。しかし警察での興味の対象である24時間ルールはクリアしても、死亡原因となった契機はまちがいなく交通事故なのである。「24時間を超えて死亡したものは交通事故者数にカウントされない」という単なる事務手続きが、現場の若い警察官に「24時間を超えて死亡したものは交通事故ではない」と誤解されていたようなのである。何でその説明を部外者である我々がしなければならないのか複雑であった。