三日、「愛知平和映画祭」へ行く。三作品上映だが、『紙屋悦子の青春』、『蟻の兵隊』はすでに観ているので、是枝裕和監督の『花よりもなほ』に焦点を絞る。
彼の作品については、これまで『DISTANCE』(2001)、『誰も知らない』(2004)を観ているが、この映画はまた、それらとはまったく違った時代劇。

会場となった名古屋市芸術創造センター

その前には緋寒桜が咲いていた
武士の本分や大義といった抑圧的な概念から解放されて行く1人の若者の物語だが、これが実に面白い。武士という名にがんじがらめの赤穂浪士との対比のストーリー展開も抜群だが、その舞台となったオンボロ長屋が素晴らしい。
要するに、彼が解き放たれて行くのも、こうした番外地のような空間、あらゆる法や掟の外部であるような場所においてであって、ときとして、この長屋そのものが主人公ではと思わせるものがある。
古典落語の長屋をも上回るそのパワー、その住人たちのかもし出す風情と台詞、しばしば会場は笑いに包まれる。
群像劇のようなところがあり、その交通整理に幾分不十分なところがあるといえ、是枝監督の多彩な才能が遺憾なく発揮された映画であった。

会場前の緋寒桜を接近して撮る
映画に先立って、広島大学の講師で、1971年の名古屋を舞台にした「ピンポン外交」の記録映画を観て、日本への印象を改めたという袁 葉(えんよう)さんという女性の「銀幕が結ぶ日本と中国」というテーマの講演を聴いた。
彼女自身の映画体験を踏まえたそれはとても面白かった。
表面、似ている東洋の二つの国だが、例えばそこにある死生観、ないしは生死観(中国では後者、ATOKでは前者はそのまま出てくるが、後者は分解してでなければ出てこない)などでかなりの相違があること、しかしそれらの違いが映画などの評価のやりとりの中で、相互理解に至ることを述べていて興味深かった。
彼女が題材として取り上げた『山の郵便配達』(当初は日本での方が評価が高かった)は、二度観ていたので、いちいち頷けるところがあって一層共感できた。
休憩時間に外に出てみると、会場から東へ延びる並木はコブシのそれで、もうすっかり咲きそろっていた。

以下は、そのコブシの狂想曲。



<今週の川柳もどき> 07.3.4
臭いものにはまず蓋し予算案
(政治とカネ問題は門前払いで強行採決)
拉致追求で慰安婦は頬被り
盟友のアメリカからも叱られる
(認めるべきは認め追求すべきは追求)
地下鉄の闇に談合とぐろ巻く
(名古屋、ほとんどの地下鉄で)
戦場へ狩り出し後は知らんぷり
負傷兵を自己責任と放り出す
(扱い不適切で米陸軍長官更迭)
まだまだとブッシュが積んだ死屍の山
(イラクで連日)
子らの尻淋しげ滑り台がない
(金属盗、滑り台まで)
大リーグの後に報ずるプロ野球
(完全逆転、日本はマイナーリーグ?)
彼の作品については、これまで『DISTANCE』(2001)、『誰も知らない』(2004)を観ているが、この映画はまた、それらとはまったく違った時代劇。

会場となった名古屋市芸術創造センター

その前には緋寒桜が咲いていた
武士の本分や大義といった抑圧的な概念から解放されて行く1人の若者の物語だが、これが実に面白い。武士という名にがんじがらめの赤穂浪士との対比のストーリー展開も抜群だが、その舞台となったオンボロ長屋が素晴らしい。
要するに、彼が解き放たれて行くのも、こうした番外地のような空間、あらゆる法や掟の外部であるような場所においてであって、ときとして、この長屋そのものが主人公ではと思わせるものがある。
古典落語の長屋をも上回るそのパワー、その住人たちのかもし出す風情と台詞、しばしば会場は笑いに包まれる。
群像劇のようなところがあり、その交通整理に幾分不十分なところがあるといえ、是枝監督の多彩な才能が遺憾なく発揮された映画であった。

会場前の緋寒桜を接近して撮る
映画に先立って、広島大学の講師で、1971年の名古屋を舞台にした「ピンポン外交」の記録映画を観て、日本への印象を改めたという袁 葉(えんよう)さんという女性の「銀幕が結ぶ日本と中国」というテーマの講演を聴いた。
彼女自身の映画体験を踏まえたそれはとても面白かった。
表面、似ている東洋の二つの国だが、例えばそこにある死生観、ないしは生死観(中国では後者、ATOKでは前者はそのまま出てくるが、後者は分解してでなければ出てこない)などでかなりの相違があること、しかしそれらの違いが映画などの評価のやりとりの中で、相互理解に至ることを述べていて興味深かった。
彼女が題材として取り上げた『山の郵便配達』(当初は日本での方が評価が高かった)は、二度観ていたので、いちいち頷けるところがあって一層共感できた。
休憩時間に外に出てみると、会場から東へ延びる並木はコブシのそれで、もうすっかり咲きそろっていた。

以下は、そのコブシの狂想曲。



<今週の川柳もどき> 07.3.4
臭いものにはまず蓋し予算案
(政治とカネ問題は門前払いで強行採決)
拉致追求で慰安婦は頬被り
盟友のアメリカからも叱られる
(認めるべきは認め追求すべきは追求)
地下鉄の闇に談合とぐろ巻く
(名古屋、ほとんどの地下鉄で)
戦場へ狩り出し後は知らんぷり
負傷兵を自己責任と放り出す
(扱い不適切で米陸軍長官更迭)
まだまだとブッシュが積んだ死屍の山
(イラクで連日)
子らの尻淋しげ滑り台がない
(金属盗、滑り台まで)
大リーグの後に報ずるプロ野球
(完全逆転、日本はマイナーリーグ?)