赤提灯はとりわけ秋に似つかわしいと思うのは私だけだろうか。
何となく、いっそう懐かしげに人を招くのだ。
写真のものは浅草の観音様のそれほどではないにしても、とても大きく、路面に届くほどである。
この店、実は一度取材を試みて断られた店なのである。
その理由というのが、「うちは常連さんで持っている店なので、一時的に人に来られても、常連さんが入れなくなってかえって困るのだ」ということだった。
この「一時的に来られても」というのが真実をついている。
私自身、このての取材をすでにかなり手がけているが、そしてまた、世の中には飲食関係の情報誌がごまんとあるが、それらを見てやってくる客はまた、新しい情報によって渡り歩くことが多いのである。
むろんそうでなくそこが気に入って固定客となる人もいるが、その割合は知れている。
だから、さして大きくなくて、しかも常連によって安定しているこの店のような場合は、情報誌に載ることに意味が見いだせないのだ。
その後、その店を客として訪れたことがある。
カウンターを占める客はその全部が常連と見え、客どうし、あるいは店主と和気あいあいに談笑している。
それでいて決して閉鎖的ではない。片隅で黙って呑んでいる私に、少し離れた席から「お兄さんどこからや」と気さくに声がかかったりし、私もいつの間にかその談笑のうちにあった。
近くに座っていた人は、偶然にも、若くしてこの世を去った私の同級生の知り合いで、彼と一緒にここへもよく来たとのことだった。
店主はもちろん、私のことを覚えていて、「その節はどうも」と声をかけてくれた。
店を出て、赤提灯を振り返りながら、「断られて正解だった」としみじみ思ったものである。
<今週の川柳もどき> 07.10.7
これからは談合だよと永田町
密室やお座敷でなく議事堂で
(与野党話し合いの声しきり)
選対になって分祀を口にする
(遺族会長古賀氏自民選対長に
なりA級戦犯分祀を語る)
余録だと九百億をかすめ取る
(生保の不払い)
百人に一人は食ってゆけぬ国
(生活保護過去最多に)
四十九手目にくり出す尻尾切り*
血塗られた土俵はそれで済まされぬ
(力士虐殺)
頭越し米朝間のハーモニー
(ニューヨークフィル平壌公演へ)
秋涼に少し頂く白いもの*
(富士山うっすら初冠雪)
*印は、今週の自選句
何となく、いっそう懐かしげに人を招くのだ。
写真のものは浅草の観音様のそれほどではないにしても、とても大きく、路面に届くほどである。
この店、実は一度取材を試みて断られた店なのである。
その理由というのが、「うちは常連さんで持っている店なので、一時的に人に来られても、常連さんが入れなくなってかえって困るのだ」ということだった。
この「一時的に来られても」というのが真実をついている。
私自身、このての取材をすでにかなり手がけているが、そしてまた、世の中には飲食関係の情報誌がごまんとあるが、それらを見てやってくる客はまた、新しい情報によって渡り歩くことが多いのである。
むろんそうでなくそこが気に入って固定客となる人もいるが、その割合は知れている。
だから、さして大きくなくて、しかも常連によって安定しているこの店のような場合は、情報誌に載ることに意味が見いだせないのだ。
その後、その店を客として訪れたことがある。
カウンターを占める客はその全部が常連と見え、客どうし、あるいは店主と和気あいあいに談笑している。
それでいて決して閉鎖的ではない。片隅で黙って呑んでいる私に、少し離れた席から「お兄さんどこからや」と気さくに声がかかったりし、私もいつの間にかその談笑のうちにあった。
近くに座っていた人は、偶然にも、若くしてこの世を去った私の同級生の知り合いで、彼と一緒にここへもよく来たとのことだった。
店主はもちろん、私のことを覚えていて、「その節はどうも」と声をかけてくれた。
店を出て、赤提灯を振り返りながら、「断られて正解だった」としみじみ思ったものである。
<今週の川柳もどき> 07.10.7
これからは談合だよと永田町
密室やお座敷でなく議事堂で
(与野党話し合いの声しきり)
選対になって分祀を口にする
(遺族会長古賀氏自民選対長に
なりA級戦犯分祀を語る)
余録だと九百億をかすめ取る
(生保の不払い)
百人に一人は食ってゆけぬ国
(生活保護過去最多に)
四十九手目にくり出す尻尾切り*
血塗られた土俵はそれで済まされぬ
(力士虐殺)
頭越し米朝間のハーモニー
(ニューヨークフィル平壌公演へ)
秋涼に少し頂く白いもの*
(富士山うっすら初冠雪)
*印は、今週の自選句