左側のくしゃくしゃはむいた皮
これは何でしょう?
そうです、蕗ですね、といいたいところですが違います。
サツマイモの茎、正確には葉柄にあたる部分です。
農協の野菜売り場にありました。
ひと束100円で、二束あったので、そのうちのひとつを買おうと思ったら、もうこれでお仕舞いだからと残りのひと束もサ-ビスしてくれました。
この前も、ぬき菜を同じ様にサービスしてもらいました。
だから対面販売って好きなんだなぁ。
で、このサツマイモの茎、実は戦中戦後の食糧難の中で、よく食べられたものでした。サツマイモそのものが貴重品でしたが、その茎も食べたのです。
この皮、意外と簡単にむけます。コツは末尾に
とにかく食べるものがありませんでしたから、口に入るものは何でも食べました。
動物には、食用になるものとそうでないものが本能的に分かるようですが、人間はそうではありません。試行錯誤の連続でした。
スギナ(ツクシの本体、細い葉の植物です)をヒジキの代用にといって食べたこともありましたが、パサパサして不味かったのを覚えています。
私は食べませんでしたが、毒性があるといわれる彼岸花の球根を、水にさらせば食べられるといって食べた人たちもいたようです。
そうした、普段、食用にしないものを食用にするのを代用食といいました。
このサツマイモの茎も、そうした代用食の一種でした。
しかし、数ある代用食の中でも、私にとっては不味かった印象はなく、むしろ好感が持てるものでした。
ですから、今でも、こうして機会に恵まれると求めて調理します。
今回は二束もあったので、二通りに分けて食しました。
まず皮をむき、3~4センチに切りそろえたあと、少し塩を入れサッと湯がきアクを取りました。ほとんどアクはありませんが、後述するように、炒める場合には湯がいておいた方がいいと思います。
上の左側は、それをキャラブキ風に煮しめたものです。
そして右側は、薄い塩こしょうでさっと油で炒め、仕上げに鍋肌に醤油と少量のごま油でコクを出したものです。
結論としてはそれぞれおいしくいただけました。
面白いのは、炒めたものより煮しめたものの方が、サツマイモの味がするのです。初めての人に食べさせたら、炒めた方の素材はまず分からないでしょうが、煮たものの方は味覚と勘の鋭い人には分かるかも知れません。
この地方では今が芋掘りの最中のようです。かといってスーパーには出ませんから、やはり農協などの販売所にしかないかも知れません。
もし見かけたら、一度チャレンジしてみてください。
代用食ではなく、堂々たる一品になりますよ。
かつて、空襲におびえたり、戦後の混乱や不安の中で食した代用食を、グルメとして味わえるこの時代をも噛みしめながらいただきました。
かくしてこの味は、少し大げさに言えば、六十数年間にわたって私が胸中に抱き続けてきたものなのです。
*皮むきのコツ
一見面倒そうですが、根元の方からではなく先端の細い方から、爪を少し大胆に食い込ませ、す~っと引いてくると、一度でむいてしまうことができます。
二、三本やってみると、コツがつかめるはずです。