大阪在住のM氏とはMixi 全盛の時代にSNSで知り合った仲だから、かれこれ20年以上のお付き合いになる。その間、ご出張の折など2回ほどリアルに岐阜でお目にかかっている。
私より遥かに多方面で活動的な方で、話していても、もって回った言い方のないさっぱりした方で、私の知らない世界の話が多くて面白い方だ。
そのM氏から、素敵なご恵贈があった。それについては後述するが、実はそれを受け取るまでに一波乱があった。
この3日、クロネコからメールがあり、M氏からの荷物が4日の午前8時から12時の間に届くという。4日は折からの日曜日、朝寝坊の私が早起きをし、その到来に備えた。
しかし来ない。まあ時間が遅れることはありうるだろうとず~っと待っても来ない。
夕刻になっても来ないので、M氏のご厚意が無になってはとクロネコに電話した。かつてと違って、オペレーターは出てこず、自動音声なのでこちらの意志が伝えにくい。
「荷物が未着」をクリックし、送り状番号を入力したら、「その件は調査に時間がかかりますから」で電話は終わってしまった。
オイ、オイと思うのだが、次に打つ手はない。
翌5日、朝から待機したがやはり荷物は届かない。午後になって昨日同様、クロネコに電話したが、やはり自動音声で、結果は昨日と同じ。
こうなったら、M 氏のご厚意が無駄にならないことを願うばかりだ。一度などは、もし届かなかっても、さも届いたかのようにM氏にお礼状を出そうかとも考えた。
結論を言おう。夕方近くになって荷物は届いた。ドライバーのクロネコの女性は、ひたすら「スミマセン、スミマセン」と詫びるばかり。
それに対して私。
「あなたの責任ではないことはわかっていますから、あなたを責めません。ただし、これは上部に確実に伝えてください。着くか着かぬかわからない情報を送るのは止めてください。受け取った側は大変迷惑を蒙ります。私の場合、昨日、今日と家を空けられませんでした」
彼女はそれでも、「スミマセン、スミマセン」を繰り返して帰っていった。
で、M氏のプレゼントであるが、そうしたクロネコとのアクシデントがプレミアになって、私のうちではいや増しに尊いものになった。
届いたのは、手造りの「粒うに」である。この美味しさはよく知っている。もう随分前だが、長崎県の壱岐島出身の人が帰郷の土産にそれをくれて、世の中にこんなうまいものがあるかと思ったのだ。
何個ものうにを使って集約されたそれは、生うにの味をも凌駕する豊かさで、口腔に広がる味覚の世界は、すべての海の幸を凝縮したかのようである。
それを食した折の魅力に惹かれて、近くのスーパーやショップで求めても、その味はまったく違う。酒粕やその他の食材で薄められたものだからだ。
今回頂いたものは、表示によれば、90%の濃度である。この一瓶の中に何個のうにが詰まっているのだろう。その期待値が嫌が上にも増してくる。
しかしだ、しかし、すぐに開けて食することはしない。賞味期限を確認したら来年3月までとある。ならば慌てて開栓することはない。
そう正月だ。正月の美酒の肴にしようと思いを定めた。いいもの、新しいものは正月に下ろすというのは私のような昔人間の習わしだ。少年時代の大晦日の晩、正月に下ろす足袋や下駄を枕元に置いて寝たこともある。
艶笑落語にもあるではないか。ある男が、すこぶる魅力的な女性と結婚したがいっさい手を触れようとしない。困惑した女性が仲人に相談する。仲人は男を問い詰めて、あの女性が嫌なのかと問う。
男いわく。「とんでもありません。あまり素晴らしいので正月までとっておこうと思いやして・・・・」
おあとがよろしいようで。
はなしが逸れてしまったが、なにはともあれ、M氏に満腔の謝意を。ありがとうございました!
*この落語が最近演じられないのは、ジェンダー関係で不都合があるからかもしれない。