イチローと松井秀喜が対照的な性格だということは誰しも認めるところであり、私も前に書いたことがあります(「好きな野球選手 その3」)。基本的には、その二人の生き様の違いを中心に書いてありますが、2006年の第一回WBC出場についての二人の対応の違いを巡って、二人の仲は、決定的に相容れぬものになったと書いてありました。
イチローがWBC出場に関して、辞退した松井を意識したような発言を繰り返したのは事実でしょうし、自分のコントロールできることに集中する松井といえども人間であり、王監督に断りの電話を入れ手紙を出したほど散々思い悩んだ末の決断なのに、裏切り者のように言われて、平静でいられなかったのも事実でしょうね。
愛工大名電で甲子園1回戦敗退、ドラフト4位でオリックス入団、西海岸の弱小球団マリナーズと王道ではない道(著者は覇道と言っています)を歩み、自らが高みを目指すイチローと、星陵で5打席連続敬遠という伝説を作り、4球団競合を長嶋監督が引き当てて常勝を義務付けられた巨人に1位入団、メジャーでも巨人以上に勝利を求められ、マスコミ・ファンともに全米一厳しいヤンキースと、王道を歩み、常にチームの勝利を目指す松井秀喜。
野球だけでなく、朝カレーなど食事までもルーチンを大切にし、いつもの習慣を決して変えない野球の頑固職人のようなイチローと、遅刻の常習者で、おおらかで細かいことを気にしない松井秀喜。
野球に対する自分自身のストイックな姿勢・厳しさを記者にも求め、難解で気難しい受け答えをして、くだらない質問には答えもしないイチローと、自分のすべきことに集中し、自分のコントロールできないことは意に介さず受け流し、記者ともフランクに接し、食事に招待したりする松井秀喜。
何から何まで対照的な二人ですが、おもしろいのは、松井秀喜の師匠長嶋茂雄、イチローとWBCを機に師弟関係を結んだ王貞治も、似ているところもあれば、対照的なところもあることです。野球の技を究めていくところでは、イチローと王さんは似ていますが、人への気配りや高校時代から野球の王道を歩んだ点では松井と王さんが似ています。また、陰と陽の違いはありますが、人からどう思われるか気にせず、我が道を行く点では、イチローと長嶋さんが似ています。似ていない二人の方が、引き寄せ合うものなのかもしれませんね。この著作では、歴史の本を開かせ、比較する相手すらいない記録を作り続ける、孤高の天才イチローの気持ちを真に理解できるのは、やはり並ぶ者のない記録を打ち立てた王貞治だけだからこそ、イチローは王さんに心酔したとありました。それも本当でしょうね。
どこまで行っても交わらない二本の線なのでしょうが、お互いにそれぞれの色の長くて、太くて、個性的な線を描いてほしいものです。
今日のジョグ
…は、少し遅くなったので中止。一応、昨日の転倒の影響はなさそうです。右肩は若干痛いですけど。