血圧のせいで余り気分良好とはいかないのだが、連日熊本市歴史文書資料室や熊本県立図書館に足を運んでいる。
あらかじめ見たい資料を書き出して出かけるのだが、的外れが多くてくさっている。必要な史料に出会えばデジカメ撮影する。最近はコピーをする元気がない故である。
本を借りるにも駐車場までの距離が結構あるので、最近は一二冊に留めているのだが昨日借りてきた本は「大当たり」だった。
1990年7月から二年ほど西日本新聞社の熊本総局長を勤めたという山本巌氏のブックレット「熊本・反乱の系譜」である。
著者・山本巌氏
1941年生まれとあるから私より一年先輩に当たられる。
「モッコスの住む街で」では22編のエッセイ風の短文がある。あとは「神風連--反近代の源流を見る」「殉死--浪漫主義者・蓮田善明の死」「告発--近代市民社会への叛逆」など、それぞれ30頁ほどを使って、熊本の近代を「反乱の系譜」という概念でとらえている。
読んでいて大変心地がよい。一つだけ取り上げるとすれば・・・・
「告発--近代市民社会への叛逆」に於いては、水俣病が公害として認められた(昭和43年10月)直後の44年4月17日、渡辺京二が石牟礼道生(道子の長男)など三人がチッソ水俣工場の正門前で座り込みを初めたことが冒頭に書かれている。ここで、長くいまだに解決されない水俣病問題が緒に就いた。そして石牟礼道子の「苦海浄土」が発刊された。私が渡辺氏を尊敬する所以は、口先ばかりのジャーナリストではない行動の人であったからである。以来現在にいたる渡辺氏と石牟礼氏の交友振りを紹介しながら水俣病問題に触れている。
これ等の事は著者・山本巌氏が熊本県人ではなく客観的自由な立場で書かれたことが、心を動かされる要因に成っているようにかんじられる。
「熊本の言論人も頑張ってほしいものだ」 と申上げておきたい。
(このブックレットを手元に置きたいと思い日本の古本屋で探してみたら一冊だけ確認できた。早速注文した)