私より六つばかり年上で62歳という若さで亡くなった、宮脇檀(まゆみ)という建築家がいた。彼が著した「「建築家の眼・檀流世界見聞録」という外国の多くの写真を配した一冊の本が本棚に残っている。目次の後に数葉の写真があり、その次のページにこんな言葉が記されている。
見ようという目を持って旅をすると、普段見えないものが見えてくる。
風景のうらにあるものを見つけだすには、ただ素直な好奇心さえあればよいのだ。
まったく歴史に興味がなかった私が、生業である建築の世界から少し離れて、現在のような次第に相成ったのはまさに「素直な好奇心」による。
古文書などを前にしても「これは難だ」ではなく、「これは何だ」という好奇心をもって一歩踏み出すことが必要だとしみじみ思う。
独学故障害が多すぎるが、沢山のものを見ることによって見えてくるものがあるという事は実感としてある。