今日も酒を呑んで夜中に起きてしまった。駄目だこりゃ。
いろいろな波が押し寄せてくるようで身動きが取れない今日この頃、三上寛がライヴのMCで深沢七郎のことを喋っていたのを思い出し、『言わなければよかったのに日記』(中公文庫、原著1958年)を読む。
深沢七郎は『楢山節考』しか読んでいなくて、その短編集のなかでも、「アッ今日は変事がある」などと妻の発狂を予感した作品(題名もその後の内容も忘れた)の奇妙な感覚に惹かれていたのだった。そんなわけで、この日記も同じような奇妙な感覚が充満していて少し嬉しい。ヒトトナリは知らないが、ただスットボけて自然体で生きた人ではなく、かなり苦しんだ人なのではないかと想像する。落とし噺のような「ポルカ」集の底知れない残酷さは、きっと自分にも向けられていた筈だ。
ついでに、編集者のSさんに頂いた『風流夢譚』(『中央公論』1960年12月号)を改めて読む。右翼の少年による殺傷事件を引き起こしてしまった作品である。革命や皇室に関する描写はともかく(凄まじいが)、宙ぶらりんであるからこそ恐ろしい夢との距離が素晴らしい。ちくま文庫で深沢七郎作品のアンソロジーが出ているが、きっとこれは収録されていないのだろうね。勿体ない。