キャノンボール・アダレイ『Somethin' Else』(Blue Note、1958年)は、ジャズ・ファンであれば誰もが知る「名盤」であり、マイルス・デイヴィスが実質的なリーダーであったことも「常識」となっている。勿論、どちらにも異を唱えるつもりは毛頭ない。
昨日呑みながら編集者のSさんとジャズ談義をしていて、この盤の話になった(酔っていたのでどんな話だったか忘れてしまった)。そんなわけで、もう棚にないし、時々は飛行機のオーディオプログラムでかかっていたりするし、久しぶりに聴きたいなあと思いながらブックオフに入ると、500円で売っていた。通して聴いたのは何年ぶりだろう。
それでも印象は変わらない。自分にとっての最大の魅力は、キャノンボールの笑うアルトサックスである。特にLPであればA面の2曲、「Autumn Leaves」と「Love for Sale」では、マイルスのかっちょ良い、痩せてスタイリッシュなミュートのソロなんかが示された後、バックのサム・ジョーンズ(ベース)もアート・ブレイキー(ドラムス)もそのつもりか、突然「笑い」にギアを切り替える。そしてキャノンボールの圧倒的な技術による腹の底から揺らすような笑いのサックスが来る。いやもう、最高である。同時期のマイルス・デイヴィス『Milestones』における「Straight, No Chaser」も同じようなノリで偏愛していたが、いまはやはり棚にない。
最終曲「Dancing in the Dark」だけ、マイルス抜きのワンホーンによる演奏だが、やはりこの冗談のような落差があってほしい。聴くのはもっぱら前半である。